儚くも永久のカナシ (中編)






 ……まさか、もう一度ここに逃げ込むことになろうとはね。
 かつて神尾観鈴の応急処置のために駆け込んだ診療所の中で、痛みに喘ぐ栞を見下ろしながら英二は苦笑する。
 しかもご丁寧に状況までそっくりと来ている。

 リサと別れた後氷川村を一直線に走っていた英二だったが、全く予想外の追っ手が来た。
 何の前触れもなく猛スピードで走ってきた車が栞もろとも英二を轢き殺そうとしたのだ。
 派手にエンジン音を吹かせていたお陰でいきなり轢き殺されるという最悪の事態だけは避け、
 その後も幾度となく迫る車を回避しながら何とか診療所へと避難してきたというわけだ。

 しかも車は執拗に狙いを変えず、診療所の周囲をぐるぐると周回している。
 中に誰がいるかは逃げるのに必死だったので分からなかったが、余程性質の悪い人間であることは間違いない。
 学校で襲ってきた少女といい、向坂弟といい、自分は凶悪な連中に付け狙われる星にでも生まれたのだろうか。
 やれやれと思う一方、嘆いている暇はないと状況を整理する。

 栞の怪我は命には別状はなさそうであるものの、依然として動けぬ状態であるのには変わりない。
 それにリサは正体不明の男と交戦中。今までのリサを見た限りでは負けそうだとは思わないが、
 すぐに救援に来れるという風情でもない。立て篭もって救助を待つというのはあまりにも愚かだ。
 最悪、この建物に車ごと突っ込んでくるという可能性もないではない。何せ木造の診療所だ、
 あっけなく倒壊しそうな気がする。

 そうなると……やはり以前の方法を用いるしかない。
 上手く敵を自分が引きつけるという陽動作戦。実際、あのロボ少女とでは成功に近い結果を出した。
 しかし、その後の結末はどうだ? 逃がすことに成功したはずの相沢祐一と神尾観鈴は死に、自分だけが生き残った。
 放送のときのショックが影を落とし、今の情けないままに生きてしまっている。

 ひょっとしたらまた同じ結果になってしまうのではないか。
 自分は誰も救えないのではないかという不安が鎌首をもたげ、行動に足踏みを起こさせている。
 己の行動は全て裏目に出てしまう。ならばいっそ逆に立て篭もり続けるのも一手ではないかとさえ考える。

「くそっ、優柔不断だな、僕は……」

 やり通すとリサに宣言しておいて、今はこのザマか。
 自分への情けなさが胸を潰し、やりきれない思いばかりが体を重くする。

「英二さん」

 静寂を破る声が聞こえ、英二が振り向く。その先では痛みに耐えながら、どうにか意識を保っている栞がいた。
 脂汗を浮かべながらも笑みを湛えた栞の表情は、英二にひとつの疑問を抱かせる。
 なぜ笑える? なぜこの状況で……それも、こんなに力強い微笑みを?
 呆然としたままの英二に、栞は言葉を重ねる。

「私を置いていってください。大丈夫です、後で合流します……そろそろ、痛みも引いてきましたから」

 そう言う栞だが、明らかに体は震え、顔色は冷めている。
 冗談じゃないと思った英二は、沸き上がった感情のままに反論してしまう。何年振りかも分からぬ感情を出して。

「見捨てろというのか。僕は君を死なせるために……」
「分かってます。私だって、死ぬためにそんなことを言ったんじゃないんです。陽動……それが最善の作戦ですよね?」
「!? 何故――」
「分かりますよ。だって、ずっと外を見ていましたから」

 また力強い笑みを浮かべた栞には諦めの感情は一切無かった。
 自分が生きられることを信じ、また自ずから道を切り拓きその一因となろうとする強靭な意思があった。
 眩しすぎると思う一方、それに惹かれている己を感じながら英二は拳を握る。

「私は、リサさんや、英二さん……いえ、みんなの力になりたい」

 脇腹から未だにあふれ出す血を手で押さえながら、栞はたどたどしくも必死に、しっかりとした意思を以って話す。

「だから、やってみせます。英二さんの陽動に合わせて、私もやり通します。降りかかる火の粉は払いますし、
 それでも来るなら……撃つかもしれません。でも、私は生きたいんです。私にも大切なひとができたから……
 忘れてはいけないことがいっぱいできたから。諦めたりなんて絶対にしない」

 絶対に諦めない。その言葉が重く圧し掛かり、栞は自分と正反対の存在であることを自覚させられる一方、
 だからこそ自分は栞のためにやり通す必要があるという使命も感じていた。
 そうだ。自分の命は最後まで他人のために使う。今までがどうだったとしても今回は間違えないかもしれない。
 ただ己の節を曲げないために最後までやり通す。そう決めたはずではなかったのか。

「そうだな」

 応じた英二が浮かべたものは不敵な笑みだった。栞が自分に生き様を晒せと言っている。ならば無様な生き様を、
 見事晒して見せてやろうではないか。そうすることでしか、自分は何かを伝える術を持たないのだから。
 英二の中の化学変化を感じたのか、栞もこくりと頷いた。

「行ってください。私はなんとか隠れきってみせます。その後は……挟み撃ちにしてあげましょう?」

 冗談交じりの口調ながら、真剣な顔つきで栞は言った。
 生きたいという意志と、命の受け止め方を知った者の言葉だった。英二は頷き、ベレッタM92を取り出した。
 スライドを引き、チェンバーに初弾を装填する。これが始まりのゴングだ。

 ゲームスタートだ、緒方英二。
 駆け引きを楽しむ『プロデューサー』の姿がここにあった。

     *     *     *

 今の己を支えているのは妄執、ただ一つ。或いは愚昧とも言える感情にのみ衝き動かされているのかもしれない。
 過去を清算するためだけに。人間であった部分を捨て去るためにどこまでも追い縋っている。
 車で轢き殺すということは英二の反応の良さと悪天候による路面の悪さによって失敗したが、追い込んだ。

 後はどう料理するかを考えればいい。そう断じて診療所を見渡せるポイントからじっと観察を続ける篠塚弥生に、
 神尾晴子が開け放った窓から周囲の様子を窺いつつも、新鮮な空気を求めて首を外に突き出していた。
 本人曰く、「急に猛スピード出してめちゃめちゃな運転するから酔った」とのこと。
 シートベルトもつけていなかったので体がブンブン振り回されていたから当然といえば当然だろう。
 文句の一つも飛んでこないのは余程参っているか、何か考えあってのことか分からないがうるさいよりはいい。

 ただ戦闘のときに使い物にならないのは困るので、こうして晴子の体調復帰を待ち、
 車ごと診療所に突っ込もうという算段を立てている。見たところ木造の家屋だ、
 最大速でぶつかればひとたまりもないはずだろう。あわよくばそのまま押し潰して殺せる。
 何よりもこんな大胆な戦術をとり、敵の裏をかけるというところにメリットがある。
 建物は決して避難場所ではない、時によっては墓場となり得るのだということを教えてやる。

「篠塚、ひとつ聞いてええか」

 聞き慣れない呼び名にぎょっとして振り向いた先では、相変わらず晴子が窓から顔を出している。
 この人が自分を名前で呼ぶのは初めてだ。不思議な感慨にとられながら「なんですか」と努めて冷静に返す。

「勝てるんやろな?」

 低く敵意を含んだ声が弥生の頭を叩く。晴子がそう思うのも無理はない。
 目の前で戦っていた男と女を無視して突っ切り、英二と怪我した女の方を執拗に狙っている。
 自身を見失っているのではと疑念を持たれているかもしれない。なら不安要素は取り除けばいいとして、
 弥生は「勝ちます」と力強く言い、彼女にしては珍しく自身のことをとつとつと話し始める。

「最初の二人を無視したのはあの常人離れした戦いを見て、とても割り込んで勝てるような相手ではない。
 ましてこの貧弱な武装では……そう言いましたね? もちろん嘘ではないのですが、理由はもう一つあります」
「ほう」
「私が追っている方の……男の名前は緒方英二と言います。私の知り合いでもあり、
 緒方プロダクションのプロデューサーでもある人です。有名なので名前くらいはご存知かと思いますが」
「聞いたことはあるなぁ。なんや、えらい大物と知り合いなんやな」
「仕事上の付き合いが大半でしたが。……そして、私の弱さの象徴でもある」

 ずきりと古傷が疼くのを感じる。英二に一蹴され、屈辱と共に穿たれた傷だ。
 君のやり方は間違っている。
 由綺を失った自分に対して、英二も理奈を失ったにも関わらず彼はそう言ってのけた。
 現実を受け止め、夢も見ることも妥協することも許さない対極の存在が一度己を打ちのめした。
 それが今でも尾を引き、殺戮遂行の機械となりきれないまま嫉妬心、羨望の感情を残している。

「なるほど、なんやよう分からへんけど復讐っちゅうわけや」
「復讐ではありません。全てに決着をつけるための清算です」
「は、うちにはどっちも同じやねん」

 目つきを険しくしかけた弥生に「怒るなや」と晴子が手をひらひらと振る。
 「気持ちは分からんでもないからな」と続けて、彼女はVP70をまじまじと見つめた。

「汚点は消したいもんや、そうやろ? うちにも決着つけとうてかなわんクソガキがいる。
 まあ一人は死んだらしいねんけどな。ざまあみろって感じや、はは」

 愉快そうに笑う晴子の顔からは微かな憎悪と狂気が見て取れる。
 汚点、という言葉の中身を確かめるように弥生は口中に呟いた。

 晴子にとってのそれは己に潜む憎悪なのかもしれない。これを消しさえすれば、常に目的へと向けて動ける、
 任務遂行の機械となれるのを彼女は知っている。弥生にとってのそれは緒方英二だった。
 立場を同じくする大人でありながら存在するだけで自分を否定する、まさしく汚点。
 英二さえいなくなれば自分は強くなれる、そう信じて疑わぬ存在だった。

「ええわ、目先の利益に目ぇ奪われてんやないんやろ。ケリ、つけに行こうや」

 ニヤと口元を歪め、凶暴な雰囲気を晒し始めた晴子に「いいのですか」と弥生は尋ねる。
 見方を変えれば半分私怨で動いているとも取れる。
 晴子からすれば付き合う義理はないだろうに、と今更思いながら。

「篠塚が強うなればうちにとって利益にもなる。それに……勝てるんやろ?」

 信頼を含んだ強い口調で晴子は言い寄る。
 これは晴子にとってのテストなのかもしれない、と弥生は思った。
 パートナーとしての力を試すテストであり、晴子自身も汚点を消せるのかということを確かめるためのテスト。
 ハイリスクでハイリターンな計画だと考えながらも、こういう女だから仕方ないと内心に苦笑して言葉を返す。

「ええ、勝ちます」

 弥生の言葉に、満足そうに晴子が頷く。二人の間に改めて共闘宣言がもたれた、そのときだった。

「……あ! 男の方が出てきおったで」

 目ざとく気付いた晴子が窓から身を乗り出すようにして診療所方面のある一点を指す。
 確かにそこでは緒方英二が診療所から走り出していた。
 救援でも呼ぶつもりなのだろうか。それとも、怪我した女から目を逸らさせるための陽動か。

 後者だろうと弥生は当たりをつける。自分と正反対でしかない英二ならこうするはずという予感があった。
 乗ったところで特に問題はないと判断する。元々自分の狙いは英二一人なのだし、
 女の方も怪我の度合いを見る限りとてもじゃないが戦闘可能とは思えない。殺すなら、いつだって殺せる。

「神尾さん。作戦を伝えます。私の指示通りに行動してください」

     *     *     *

 今回は逃げるための戦いではない。犠牲になるための戦いでもない。生き延び、その先を切り拓くための戦いだ。
 最終的にはどうあれ、自分がその一員となっているのを実感しながら、英二は迫り来る車をちらりと見る。
 やはり悪天候のお陰で車内に誰がいるかは窺い知れようもない。いや、相手が誰であろうと関係ない。
 自分は自分のやるべきことをやり通す、それだけだ。強く意思した瞳を鋭く細め、英二は車を迎え撃つ。

 ベレッタを持ち上げ、撃つと同時に跳躍。まずフロントガラスを狙って視界を遮る作戦だった。
 地面に転がったと同時、速さと質量を兼ね備えた物体が英二の横を通過していく。
 掠ってさえひとたまりもないだろうなと思う。絶対に失敗が許されない、まさに背水の陣と言える。

 だが車だってそこまで運動性能が高いわけではない。引き返すときにUターンする瞬間、
 確実にその横腹を無防備に晒す。狙うのはそこだ。
 唸りと甲高い音を立てながら、車がこちらへと反転してこようとする。
 だが雨によってふんばりの利かない地面では、その挙動さえ時間がかかる。

「そこだっ!」

 続けて二発ベレッタを撃ち込むが、所詮は9mm弾でしかないからなのか強化ガラスなのか、
 さして大きな傷にもならず敵の視界を遮ることは不可能だった。構わず車は再突進してくる。
 ガラスを狙うのは無理だと英二は認識し、ならばタイヤを狙うかと一瞬考えてすぐにそれを打ち消す。
 銃の扱いに手馴れているならともかく両手でしっかり持ってでさえ大体の箇所しか狙えない自分が、
 器用に車のタイヤだけ撃ち抜けるものか。となれば、車から敵を追い出す作戦は一つだ。

 どこかの障害物に車をぶつけ、走行不能な状態に持ち込む……それしかない。
 問題はこの作戦を気付かれないように誘導しつつ障害物のある地点まで行けるかということだ。
 だが、やるしかない。車という鋼鉄の盾から追い出しさえすれば互角の戦いに持ち込める。
 栞からの援軍も期待できる。あわよくばリサの助けさえ見込めるかもしれない。

 自分次第ということか。今の僕になら相応しいと苦笑し、実行に移すため車から離れるようにして逃げる。
 当然のように車も追ってくる。そうだ、そのままついてこい。落とし穴に落としてやる。
 車は左右にくねりながら避けさせまいとしているかのようだったが、悪天候が味方してくれている。

 診療所から離れ、現在疾走している地点はアスファルト舗装もされていないむき出しの地面だ。
 そこに雨が降っていることにより若干ではあるが地面はぬかるみ、車の本来の最大速度を出させない。
 故に英二のような運動慣れしていない人間でもギリギリではあるが軌道を読み、避けることが出来る。

 また車はその性質上後ろをとられることにも弱い。完全に後ろを維持し続けることは難しいものの、
 側面や後方近くに回り、真正面にだけは出ない。
 こちらは小回りが最大に利くことを利用し、細かく回りながら移動し、スピードを出させない。

 直角に移動して突進させない、Uターンして車にも同じ行動を強要するなど、
 それなりに時間がかかりつつも、体力を消費しながらも器用に立ち回りながら、
 英二は氷川村の外れの雑木林近くまで車を誘導することに成功していた。

「く……っ、はっ、はっ……っ」

 息を激しく切らせ肺が必死に酸素を求めている。たかだか10分ほど運動しただけだというのに。
 やれやれ、帰ったら体力づくりに励まないとな。
 こんなときでも皮肉交じりの冗談を並べるのは自分のどうしようもない性であるらしい。
 本当に自分はどうしようもない。苦笑を浮かべ、英二は木を背にして目の前に立ちはだかる車を見据えた。

 ここが正念場、腹の決め所というやつだ。最後の突進を避けられるかどうかでこの戦闘は大きく変わる。
 もっとも、体力の切れかけた自分がこの先どうなるか……そう思いかけて栞の姿をふと思い浮かべた英二は、
 ああ、そうだなと諦めかけていた自分を叱咤する。
 諦めてたまるか。まだ自分は何もやりきってはいない。終わってもいいと思うのは為す事をやり通したときだけだ。

 澱んでいた血が今は正常に巡り、体の隅々にまで力を与えている。もう動けないと頭が思っても体が勝手に動く。
 ただの生存本能なのかもしれない。動物としての本能が死にたくないと勝手に動かしているだけなのかもしれない。
 だがそうだとしてもこの一歩一歩が確かに道を切り拓いていく実感がある。
 自分のものではなく他人のものであっても、雨が止んだ空のように晴れ渡っていく感覚がある。

 来い。胸中に絶叫したとき、車のタイヤが急回転してこちらに突っ込んでくる。
 ――その瞬間、緊迫した雰囲気に割り込んできた物音が英二の耳に入る。

「っ!?」

 遠くから数度聞こえたそれは、僅かに英二の意識を呆然とさせ、また隙を作り出すには十分過ぎる間があった。
 ハッとして意識を眼前に戻すと、そこには高速で突っ込んでくる巨大な車体が立ちはだかっていた。

「しまっ……!」

 全身を使って跳躍し逃れようとしたが遅かった。
 即死とまでには至らなかったもののボンネットからフロントガラスへ激しく体をぶつけ、
 そのまま勢いに飲まれごろごろと車上を転がった後トランクを伝い滑り落ちた。

 ごほっ、と激しく咳き込む。体を強く打ちつけた英二の体は思うように動かず、
 泥濘の地面を無様に転がることしかできない。一時的なものだろうがあまりにもショックが強すぎる。
 しかし自分に突っ込んだドライバーもただでは済んではいまい。思惑通り猛スピードで突っ込んだ車は、
 勢いを殺しきれぬまま木へと突っ込み見事にバンパーをへこませる形で走行不能状態に陥っていた。

 エアバッグが機能しているかは知らないが、状況的には相打ちといったところか。
 後は、少しでもここを離れないと……這いつくばるように移動しようとした英二だったが、
 車のドアがガチャリと開く音が背後から聞こえた。
 まさか、相手は無傷――!?

「くっ、冗談じゃない……!」

 寝転がったまま、痛みを押してベレッタを構えた英二の前に転がるようにして現れたのは。

「やってくれますね……緒方、英二」
「……弥生君かっ!?」

 よろよろと、英二と同じく地面に膝を付きながら、とても攻撃に移れる状態とは思えないのに。
 それでも銃をしっかりと掴んで放さない、篠塚弥生の姿がそこにあった。
 前々から冷然として感情を持たないはずの彼女の顔は、今は妄執と意地に取り付かれ般若のような形相になっている。
 以前逃がしたときとは似ても似つかぬ、落ちるところまで落ちてしまった女の姿だ。

「ですが、それもここまでです。貴方の死で、私はもう何も恐れることはなくなる」
「ぐっ……だが、この状況で君も、僕も撃てはしない。ここで死ぬ気がないならな」

 英二はベレッタを、弥生は機関銃らしきものを肩から吊り下げお互いがお互いへと向けている。
 弥生の願いは一度会って知っている。いやそうでなくとも十分に想像ならつく。
 どれだけ一緒にいたと思ってる。

 英二は吐き捨てつつ、ベレッタの銃口を弥生にポイントし続ける。
 由綺を生き返らせる。彼女をスターダムに押し上げる。どこまでも純真で愚直な弥生のただ一つの願い。
 そうすることでしか生きる術を持たない、哀れなほど小さく弱々しい弥生の願いだ。

 だがその願いを叶えるなら弥生は必ず生き延びて優勝しなければならない。
 今は二人で優勝できるだとか言っているが、コンビを組んだとして、片方だけ生き残っても由綺を生き返らせてくれ、
 などと言うはずがないと弥生は思っている。そういう人間なのだ、弥生は。
 だから彼女は絶対に死ねない。そうであるはずに違いなかった。

「そうでしょうか。私は、そうは思いません」
「なに……?」

 構えを崩さぬまま、弥生はニヤと口元を歪める。この状況こそが予定通り、そう語っているかのようであった。
 そう、英二は気付いていなかった。

 英二が動けぬ状況に仕立て上げることこそ弥生の思惑で……既に、英二にはチェックメイトがかかっていたのだと。

     *     *     *

 鎮静剤らしきものを見つけて、手探りのような感じで注射してみたものの痛みは僅かに引いただけで、
 全然効果らしいものはない。治療を施してもいない脇腹からは未だにだらだらと血が流れ続けている。
 現実ってやっぱり上手くいかないものですねと思いながらも、だからこそ抗いようがあると気合を入れ直す。

 英二が診療所から出ていって何分が経過しただろうか。外からは雨に混じってけたたましい爆音が聞こえてくる。
 向こうも必死に踏ん張っている。ここで寝ていては示しがつかない。
 美坂栞はよろよろと体を起き上がらせると、M4カービンを杖のように支えて立ち上がる。
 大丈夫。動ける。まだ動ける。何度も自身にそう言い聞かせ萎え切っている体を鞭打って動かす。

 まったく、本当に変わってしまったものだと苦笑する。ここまで自分が生きていることも奇跡なら、
 こうして体を動かせているのも奇跡。

 起こらないから、奇跡って言うんですよ。

 己を総括していたはずの言葉が今は馬鹿らしいものにしか思えない。ただ、奇跡の捉え方については変わった。
 奇跡は起こってなどはくれない。自分から何かをする意思がなければ奇跡は起こりようがない。
 ここに来る前の自分はただ望んでいただけだった。何もしようとせず、何も望まず、何も信じず、
 抜け殻のように過ごしていただけだ。それでは何も変わらない。奇跡だって起こせない。

 己が前に進もうとする意思。翳りのない未来を目指すのも、自己満足を成し遂げるだけでも、
 意思がなければ達成しようがないのだ。諦めだけに満たされていた自分に奇跡などあるはずがなかった。
 だから、今は自分自身で歩く。望んだ結末を目指すために、風の辿り着く場所へと行くために。
 ゆっくりと、しかし確実に歩みを進めて診療所から外への扉を開ける。

「ご苦労さん。ええ根性や。……が、ここまでやな」

 扉を開けた目の前。そこには銃を構えた傷だらけの女がいた。
 誰だ、という疑問が飛び出す前に銃の筒先が栞の体をポイントし、何の前触れもなく銃弾が栞を撃ち抜いた。
 すとんと体が崩れ落ち地面に突っ伏す。そこでようやく、栞は待ち伏せされていたのだと気付いた。

 恐らくは英二の言っていた追っ手。一人だけではなかったのだ。
 前のめりに倒れたせいかM4が身体の下敷きとなって、どうやら武器を奪おうとしたらしい敵はちっと舌打ちを漏らす。

「まあええわ……死体は動かへんしな。取り敢えずは邪魔な要素を排除できただけでよしとせな、な。
 後は篠塚が上手くやって、うちが男の方にトドメを刺す……か。ホンマいけ好かへんけど使えるわ」

 薄れてゆく意識の中、敵の立てた策にかかっていたのだと栞は自覚する。
 狙いは最初から各個撃破で、陽動を目論んでいることなど既にお見通しだったということか。
 元々ギリギリで動いていたところにさらに銃弾を撃ち込まれ、完全に力が抜け切っていた。
 視界も徐々に霞み、自分の命を支える砂時計が加速度的に落ちてゆく。

 ここまでか。もはやどうしようもない事態になっていて、自分ができることなどなくなってしまった。
 当然の帰結なのかもしれない。虚勢を張ったところで、訓練紛いのことをしたところで肉体的に弱いというのは変わらない。
 自分より強い存在に遭遇すれば為す術もない。現実はそんなものだ。

 ――だけど、このままでは皆が死ぬ。自分だけではなく、英二もリサも、皆死ぬ。それでいいのか?
 自分が死ぬからといって全てを諦め、投げ出してしまう程度の人間だったのか、自分は?
 嫌だという思いが衝動的に突き上げ、栞の指に力を入れさせる。

『ほら、しっかりしなさいよ。まったく、私がいないと全然ダメなんだから、栞は』

 ため息をつきながらもしっかりと栞の手を取り、銃に手を添えさせてくれる存在がいた。
 どこか冷めていて、でも頼りがいのある声は……自分の姉だ。

『いいか、思いっきりやれ。遠慮することはないんだ。雪合戦だ、やっちまえ』

 茶化すように煽りながらももう片方の手を添えさせてくれている存在がいた。
 ニヤリと不敵な笑いを浮かべている声は……相沢祐一だ。

『栞ちゃん、ファイトだよっ』

 羨ましすぎるくらいの元気さで両腕に力を入れさせてくれる存在がいた。
 かけがえのない友達で、自分にも元気をくれる声は……月宮あゆだ。
 それだけではない。たくさんの存在が自分に力を分け与えてくれている。

 気をつけて。ドジるなよ。しっかりやれ――砂時計の残りは僅かだったが、皆が踏ん張り、漏れ出すのを抑えている。
 後は自分だけだ。やるべきことをやり、為すべきことを為すために。
 血まみれの手でM4を握り、リサに叩き込まれたことを反芻する。

 頬と右肘でストックを固定する。右膝をついて、左足のつま先は目標に向ける。
 ライフルは右膝に対し約80〜90度開き、左肘は左膝の前方に出す。
 そして腿と左足のふくらはぎは出来るだけ密着させる事。体重は出来るだけ左足に多く掛け、
 左足は地面に平らにおき、前方から見て垂直になるようにする――

「まだ、勝負は、ついて……!」
「な……!?」

 栞の声を捉えた敵が驚愕に満ちた表情となって振り向く。死んだと思った相手が再び起き上がり、
 しかも銃を向けているのなら尚更だろう。必死に銃口を向け、こちらをポイントしているがもう遅い。
 敵が銃口を引いたのと同時に栞も最後の力を使ってM4の銃口を引き絞った。

     *     *     *

 けたたましい銃声と眩しいくらいの光が辺りを包む。
 晴子の放った銃弾は栞の胸部、心臓を撃ち抜き即死させていたが、
 栞がフルオートで放ったM4のライフル弾もまた晴子の肺や内臓をことごとく破壊し致命傷を与えた。
 かはっ、と血を吐きながら晴子はよろよろとよろめき、診療所の壁へと背中をもたれさせ、
 そのままズルズルと身体を落としていった。

 馬鹿なという驚きと信じられないという気持ちがない交ぜになり、晴子から闘志の全てを奪った。
 焦りすぎたのか。それとも弾丸を温存しておきたいという思考が仇となったのか。
 心臓を撃ち抜かれながらも満足げに微笑み、してやったという風情の顔になっている栞を見て、
 どちらでもないと晴子は確信した。

 執念が足りなかった。絶対に優勝してやろうと決意していたが、
 所詮夢物語だと冷めた目で見ている自分がいるのに気付けなかった。
 相手はそうではない。目前の敵を倒すためだけに全力を傾けていた。温存なぞ微塵も考えず、やるだけのことをやった。
 その結果が相打ちということか。そう結論した晴子はやはり弥生のようにはなりきれないと嘆息するしかなかった。

 そう、実際晴子には『まず重傷を負っている栞を殺せ。然る後に弥生の元へ駆けつけ、機を見計らって英二を殺せ』
 と言われて、栞を狙った時点である種の慢心があった。
 重傷だから拳銃一発で死ぬだろうという思い込み。
 また武器を温存しておきたいという思考がVP70を連発させなかった。
 そして何よりも、晴子が考えた通り、彼女には『現在』に対する執念が栞に劣っていた。

 観鈴を殺した連中への報復は考えていたもののそれは漠然とした参加者全体に対してでしかなかったし、
 また仮に優勝したとして本当にクローンとして再生できるのか。
 現実主義者の晴子にはここが疑念として残ってしまっていた。

 つまるところ、晴子は自棄にしかなっていなかったのだ。恨みと憎悪を撒き散らし、強い信念も持てず、
 子供のように暴れまわることしか出来なかった。
 弥生みたいになりきれないとはそういうことだった。くそっ、と吐き捨てた晴子はぼんやりとした意識のまま、
 娘の観鈴のことを思った。

 たとえ自棄になっていようが、晴子の母親としての気持ちは本物だった。ずっと一緒にいたかった。
 やり直して、二人で仲良く暮らしていきたかった。お祭りを一緒に楽しみたかった。花火を二人で見たかった。
 誕生日を祝ってやりたかった。髪を切ってやりたかった。抱きしめてやりたかった……

 もう叶わない。分かりきっていたことを今更思い知らされると同時に、
 やはり観鈴の死を受け止めている自分がいることにも気付く。
 晴子はどこまでも人間でしかいられなかったのだ。

 けれども、と晴子は思った。この部分だけはきっと娘も許してくれるはず。妄想や夢想でしか生きられず、
 そのために化け物に成り下がらなかったことだけは許してくれるだろう。……同じ天国に行けたらの話だが。

「は、はは……ああ、無理やな」

 天国など元より信じていない。仮にあったとしても地獄行きだろう。何せ人を殺している。
 それが母親をやってこなかった自分に対する罰なのだろうと断じて、晴子は目を閉じた。

 荒かった息が徐々に収まり、上下に揺れていた身体もゆっくりとその動きを止める。
 そして一滴、涙を雨に混じらせたのを最後に、神尾晴子はその生を閉じたのだった。

     *     *     *

 思い通りに行っていた。
 車で英二を追い回し、疲れたところで晴子が乱入し銃で射殺する。
 更にもう一人は自分が英二と戦っている間に殺すように言ったので援軍など在り得ない。

 戦いをわざと長引かせたのもそのため。晴子が十分に第一の使命を果たすための時間稼ぎをしていた。
 最後の最後、ブレーキをかけきれずに木に激突してしまい思わぬダメージを負ったのは計算外だったが、
 少し打ち身をしただけで重大な問題ではない。
 後はこうして互いに銃を向け合っているが、英二の身動きは封じたも同然。
 自分は晴子が撃ち殺しに来てくれるのを待てばいいだけだった。

 晴子はこの作戦を聞いた時「いいのか」と尋ねてきたが、誰が英二を殺したかに意味はない。
 英二が死ぬという事実のみが重要なのであって、自身で葬りたい気持ちはあったものの、
 敵討ち自体に執着はしない。自分が生き、英二は死んだ。そう認識出来さえすれば良かった。
 そう、睨み合うふりをしつつ待つだけで良い……そのはずだった。
 遅すぎる、と弥生は苛立つ。

 英二を殺してくれるはずの晴子がいつまで経っても到着する気配を見せない。
 どんなに周りを確認してみても静寂ばかりで、人影など微塵も見られないのだ。
 一体何をやっている? 片割れの殺しに手間取っているのか?

 だがそんなはずはないと弥生は考える。以前の戦い振りを見る限りではあっさりとやられるようなタマではないし、
 何より相手は重大な怪我を負っている。これだけ晴子に有利な状況で仕留め損ねるなど考えられない。
 では裏切ったのか? こうして自分と英二が共倒れになるのを待っているというのだろうか?
 いやそれもない、と即座に否定する。ここで自分を見殺しにしたとしてメリットがなさすぎる。

 まだまだ生き残りはいる。ここから先、怪我だらけの晴子一人で戦うにはあまりにも敵が多すぎる。
 武器を独り占めするという考えもないはずだ。そうして貴重な人的資源を失うデメリットは晴子だって知っている。
 自分と本質を同じくし、汚点を消すことに賛同してくれた晴子に裏切る要素などどこにもない。

 ではまさか、逆に殺されたとでもいうのだろうか。それこそお笑い話に過ぎない。
 戦闘になって苦戦するという想定以上に在り得ない話ではないか。
 ならば一体、何が起こっている、この状況で?

 弥生の構えるP−90が少しずつ揺れ、焦りが表面に出始めたときだ。
 己の瞳をずっと眺めていた英二が哀れむような、悲痛な表情を湛えながら、ぽつりと漏らした。

「無駄だ。もう君の援軍は来ない。どんなに待ったって、な」
「なっ」

 作戦を読まれたことに思わず声を上げてしまう。本当だとばらしてしまった事実に気付き、
 弥生は舌打ちをしたがすぐに平静を取り戻し「何故そう言い切れるのです」と注意を英二に向けた。

「……やはり、君には聞こえなかったみたいだな」
「……もったいぶらずに説明してくださるかしら」

 弥生の声に怒気が篭もり、スッと目が細められた。だが英二はそれに動じる風もなく、淡々と話し続ける。

「君が車で突っ込んできたとき、銃声が聞こえたんだ。それも複数の、何発もの銃声が」
「……」
「それで僕には分かってしまった。君の仲間と、栞君が相打ちになってしまったのだとね」
「あり得ません」

 ぴしゃりと撥ね付けるように弥生は否定する。弥生の想定では在り得ないはずなのだ。重傷者相手に、相打ちなど。
 英二はしかし「だがこの状況を説明するにはそれしかない」と続ける。

「君はまだここで死ぬわけにはいかない。二人で引き金を引いて心中、なんて結末にはしたくないはずだ。
 なのに君は交渉をするでもなく、打開策を練っているわけでもなく待ち続けている。どういうことか?
 簡単な話さ。君には援軍がいると分かりきっていた。だから待つだけで良かった。
 膠着状態にしさえすれば良かったのさ。僕を狙い撃ちにしにくる仲間へのお膳立てとして」
「下手な推理ですね」
「どれだけ君と付き合ってきたと思ってる」

 確信を含んだ英二の物言いに、弥生は歯を噛むしかなかった。この男は自分の全てを知りきっているとでもいうのか。
 鉄面皮で隠し、秘匿してきたはずの感情をも英二は読んでいるというのか。……在り得ない。
 だが最初もそうだった。結局はこちらの真意を読まれ、銃撃戦に敗北し、あまつさえ命を長らえさせる結果となった。
 今と同じ表情で、何もかもを見透かしているような透明な目つきで。

「……私が、貴方を殺したいと思っている。そうは考えたことはないのですか。
 貴方の推理では、私は他人に復讐の権利を譲ってしまったことになる」
「その質問が既に答えだ。君が拘るのは森川由綺、ただひとり……そうだろ?
 君はそうすることでしか生きる術を知らない、僕と同じ種類の人間だ。分かるんだよ、同種だからな」

 晴子と同じ言葉を英二は言ってのける。その瞬間、弥生の脳裏に形容しがたい悪寒が走った。
 この男が同種だというのか。由綺のために全てを投げ打てる自分が、妹の死さえ受け入れたこの男と同じだと?
 晴子はまだいい。自分の目的のためなら手段を選ばない強引さと合理性を併せ持ち、賢く生きているのだから。

 だが英二は違う。達成すべき目的も持たず、その場その場で方針を変え何が最初の目標だったかも忘れるような男だ。
 それゆえ英二は自分の汚点だ。相容れられず、さりとて下すことも出来ない存在だった。
 それが今、こうして、チェックをかけたはずなのに……また立ち塞がっている。

「……冗談ではない」

 耐え難い怒りが弥生の鉄面皮を破り、底暗い形となって滲み出した。
 この程度の存在が排除できず、優勝など狙えるものか。

 何が何でも由綺を生き返らせてみせる。今までレールの上を歩くようにして生きてこれなかった自分が、
 初めて持った目標。それをこんなところで邪魔されてたまるか。妄執が弥生の身体を衝き動かし、
 よろよろと、しかししっかりと二の足をつけて立ち上がらせる。
 打ち身も古傷の痛みももはや関係ない。ただ許しがたい想念だけが弥生の身体を動かしていた。

「貴方のような惰性で生きているような人が私と同種? そんなことがあるものですか。
 私は夢を諦めてはいない。絶対に諦めず、最後まで遂行し続けるだけです。一緒にしないで下さい」
「だがその夢はただの幻想だ」

 弥生に引っ張られるようにして同じく立ち上がった英二の口調も、聞き分けのない子供を叱る親のものへと変わっていた。
 全身を声にして、確かな感情をもって英二は否定の言葉を重ねる。

「何も変わらず、何も変えようとせず、それでいて自分の思い通りに事が進むと思い込んでいる。
 いや、思ってすらいない。一度思い通りにいかなかったからって思考停止して目を背けている愚か者だ!」
「私を同種と言うなら貴方だって同じだ! 本当に大切なものが何かを考えもしない癖に……!」
「そうだっ! だから『今』から考えようとしているんじゃないか!」
「御託は……もう聞き飽きた!」

 P−90の引き金を引き絞る。もう作戦などどうでもよかった。
 ただこの男が許せない。その一念に駆られて銃を乱射する。
 だが英二は飛び上がると、そのまま車のトランクの上をごろごろと転がり掃射を回避してみせた。

 ボロボロだったはずの英二にどこにそんな力が? 理解できない思いを無視して銃口を修正し、再発射しようとする。
 だが……銃口からは何も出なかった。
 弾切れ――そう認識した弥生の視線の向こうでは、英二が拳銃をしっかりとホールドしていた。

「……ゲームオーバーだ、弥生君」

 その表情はあまりにも辛そうで、苦しそうで。泣いているのではとさえ思ったが、
 雨に紛れているだけだと弥生は思い込むことにした。
 認めたくなかった。自分と同種であることも、涙を流しているかもしれないということも、勝てなかったということも。
 自分には運と実力が少し足りなかっただけのことだ。だから悲しんで貰おうだなんて思っていない。

 自分を悲しんでいいのは由綺だけだ。
 だからせいぜい苦しんでしまえばいい。自分を殺してしまった分、苦しみ抜けばいい。
 それが今の自分にできる最大限の反撃だろうから。

 ――でも、それじゃ寂しいですよ。

 いつか聞いた藤井冬弥の声がふと蘇り、ああ、そうかもしれませんねと弥生は苦笑した。
 それでも良かった。夢半ばで倒れる程度の人間にはそれで十分だった。

「寂しい、ですね……」

 そう呟いたのを最後に、篠塚弥生の意識は真っ白な雪に覆われてゆく――



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