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「せや」 「?」 瑠璃の唐突な呟きで先刻までの重い空気は破られた。 「もう一つ大事な事があったんや。忘れるとこやった」 「忘れてなかったか?」 「やかまし。浩之、うちらの事信じとる?」 又も今更。当然だろう。 「あたりめーだろ?」 「ウチもや。浩之たちのことは信じとる。やけど、この先ずっと4人のままとはかぎらへんやん。誰かが来るかもしれんやろ?」 「まぁ、そうだな」 その可能性は往々にして在り得る。偶然がなければこうして姫百合姉妹と出会うこともなかった。 「でも、そいつが本当に信じられるかはわからへんやん。騙そうと思って近付いてきとるのかもしれん」 「まぁ、そうだ」 その可能性も十二分に考えられる。そしてこちらが油断した時に致命的な一撃を放つそう言う奴の方が始末に追えない。 「やから、ウチは絶対に信用できる奴以外は仲間に入れたくないんや」 「でもそれだと、本当に困ってる奴が助け求めてきたらどうすんだ?」 「見捨てる。と言いたいとこやけど、さんちゃんもみさきも反対するやろ。ウチかて本当はそんなんしたない。やから今の内に話しときたいねん。浩之。絶対に信用できる人間は誰がおる?」 「そーだな……あかり、雅史、……志保もまぁこんな馬鹿げたのにゃ乗らんだろ。後は来栖川センパイ、マルチ、理緒ちゃん辺りは何があっても平和主義者だろうぜ」 「ウチはイルファと貴明とさんちゃんだけやねん。でな、ウチは貴明は疑えへん。やから貴明が来たら浩之が警戒して。その代わり今浩之が言った人間はウチが警戒する」 「!!」 信頼してる人に対しては警戒が甘くなる。ましてこの状況。疑心暗鬼より拒絶するのでなければ、どうしても仲間は求めたくなる。そして、この状況で正常を保っている保障は誰にもないのだ。 「で、どちらでもない人間が来たら二人で警戒する。完全に信用できるまで。ウチにはこれくらいしか思いつかへんねん」 この目の前の少女はそこまで考えた。姉の為だけに。その事実に内心驚愕する。 「……や、頭悪いなんてとんでもねえな」 「? 何が?」 「いや別に。こっちの話。それでいいんじゃねえかな。ずっと4人でやってくんじゃなきゃどっかで妥協点は必要なんだし。まぁそれもなるべく信用できる人間ってのが最低条件だけどな」 「当たり前や」 そう言って笑いあう。緊張がほぐれていくのを何とはなしに感じる。 「瑠璃」 「なんや?」 「寝とけ」 「……任せるわ」 レーダーを渡し、瑠璃は床についた。 間をおかず、安らかな寝息が布団から聞こえてきた。 「……無理しすぎだっつの」 まぁ俺も言えたことじゃねえか、と自嘲しつつレーダーを見つめる。 守るべき重責が圧し掛かる。が、彼はそれを心地良く感じた。 「――かったりぃ」 封印したはずの日常が口を吐く。 しかしその口元は笑っていた。 【時間:二日目午前10:20頃】 【場所:I-5】 姫百合瑠璃 【持ち物:デイパック、水、食料、包丁、工具箱、携帯型レーザー式誘導装置 弾数3、缶詰など】 【状態:守る覚悟。浩之と共に民家を守る。睡眠中】 姫百合珊瑚 【持ち物:デイパック、水、食料】 【状態:瑠璃と行動を共に。ワーム作成中】 藤田浩之 【所持品:レーダー、包丁、フライパン、殺虫剤、布、空き瓶、灯油、その他缶詰など】 【状態:守る覚悟。瑠璃と共に民家を守る】 川名みさき 【所持品:缶詰など】 【状態:特になし】 - BACK