診療所にて、煩悩と戦闘と策/壊れた歯車の国、暴虐の王




 向坂環が上手い具合に足止めしてくれているからなのか、相沢祐一、緒方英二、そして重傷を負っている神尾観鈴の三人は特に襲撃を受けることもなく診療所へと飛び込むことが出来た。

 万が一敵が潜んでいてもいいようにと英二がベレッタを構えながら進んでいったがどうやら誰もいないらしく、診療所に響き渡るのは英二と観鈴をおんぶしている祐一の足音だけであった。

「誰もいないようだが……一悶着あったみたいだな」
 とある一室で、英二が床についた血痕と壁を穿つ銃弾の跡を見ながら呟く。やはりここでも、自らの生のみを求めて諍いが発生していたのだ。英二が血に触れたが、どうやら固まっているようで手に張り付く、ということはなかった。指を擦りつつ、英二が観鈴を近くにあったベッドに寝かせるよう指示する。

「少年は外の様子を見張っててくれ。僕は出来る限り治療してみる」
 祐一が何かを言う前にベレッタを投げ渡す。それを受け取りながらも、祐一は尋ねる。
「英二さん、縫合とか出来るのか?」
 いや、と英二は首を振るが、「けど少なくとも少年よりは手先は器用だと思うけどね」と言って近くにあった救急箱の中身を見る。祐一は多少ムッとしながらも、確かに大人の方がそういうことは得意かもしれない、と思ったので「分かったよ、行って来る」と英二に背を向けて廊下の方へと歩き出した。

「気をつけてな」
「分かってるよ、とーちゃん」
 僕はそんなに年をとってないぞ、という風な視線が向けられたような気がしたが構わず祐一は扉を閉めた。今は、敵をここに近づけさせないことだ。

 廊下に出た祐一は、近くにあった窓から外の様子を窺ってみる。緑も豊かに茂る森の向こうに、その色と同じ色の髪の……狂った機械がいた。
(あいつっ……)
 HMX-12。マルチと呼ばれるメイドロボの光なき濁った光学樹脂の瞳が、診療所をまじまじと見つめていた。まるで、出てくるのを待っているように。
 いや、実際出てくるのを待っているのだろう。診療所の出入り口は窓でも使わない限り入ってきた一箇所だけ。その窓も鍵はちゃんとかけられており、入ろうと思うなら突き破るしかない。もちろんそうしてきたならばすぐにでもこのレミントンM700で吹っ飛ばしてやるが、それは相手も分かっているのか迂闊に侵入してくることもないようだった。
「持久戦になりそうだな……」

 少なくとも観鈴の治療が終わるまではなんとしても持ちこたえねばならない。環の安否も気にはなるが、そこは彼女を信じるしかない。
 再び祐一は視線をマルチに戻す。彼女は診療所の周りをぐるぐると回るようにしてこちらの動きを確認しているようだ。他の部屋からも様子を見てみるが、相変わらず行動は同じ。

 マルチの行動を観察している最中、祐一は彼女が手ぶらなことに気付いた。最初に持っていたフライパンがない。
「向坂が奪ったのか……?」
 隠していることも考えられるがわざわざそうする理由が分からない。恐らく環が奪ったという推理で間違いなかった。なら、今攻撃を仕掛けてもマルチを楽に倒せるのではないか?
 無論、祐一たちの目的は観鈴の治療であり戦闘をすることではない。しかし目の前の脅威を排除しておくに越したことはない。

 どうする。討って出るか。いくら相手がロボットだからと言って所詮はメイドロボ。身体能力はそんなに変わらないのではないか。増してやこちらはクリーンヒットさえすれば一撃で仕留められるレミントンM700がある。こちらが優位なのは明らかだ。
 それに万が一の話ではあるが環が敗北し、向坂雄二がマルチに合流するようなことがあればますます脱出は困難になるのではないか。敵が分散しているうちに各個撃破しておくのが最上の策ではないのか。

(どうする相沢祐一……決断するなら今だぞ)
 考えすぎて頭に血が上りかけている。当然だ、まさにこれは生か死かを分ける分岐点なのだから。自然と目が泳ぎ、レミントンの銃把を強く握り締める。
(落ち着け……)

 一度目を閉じて、深呼吸する。まずは冷静になるんだ。そう、クールだ、クールにならなければならない。もう一度落ち着いて考えろ。
 なぜマルチは手ぶらなのに武器を探そうともしない?
 向坂雄二の命令を絶対視しているのは分かる。何せ『雄二様』などと呼んでいたくらいだ。ならばこそ任務を確実に遂行するために武器が必要なのではないか? 棒切れでも何でもいい、取り合えず手ぶらなのは絶対にまずい、はずだ。

 祐一は考えた挙句、討って出るのは諦め窓から射撃を行ってみることにした。
 今確認するとこちらとマルチの距離はおよそ10メートルほど。十分に射程圏内にいる。
 レミントンからベレッタに持ち替え、射撃できそうなところまでマルチが来るのを待つ。

 すると一歩、二歩……マルチが祐一の視線上へと向かって歩き出す。
(いいぞ……そのままこっちまで歩いて来い)
 一度射線上へ来れば後は連射で当てることが出来るはずだ。いや、きっとそうしてみせる。
 ゆっくりとマルチが一分ほど歩き、診療所の中を窺うように窓へと向く。そしてその窓のすぐ傍には……祐一がいた。

(今だっ!)
 素早く反転すると、祐一は窓の外へとベレッタを構え――られなかった。
「なっ!?」
 祐一の姿を確認するや否や、まるで待っていたかのようにマルチがポケットから手のひらほどのサイズの小石を取り出し、まるでプロ野球選手か何かのようなスピードで小石を投擲してきたのだ!

「嘘だろっ!?」
 反射的に身をかがめとっさに小石を避ける祐一。当たることこそなかったものの、窓を直撃した小石がガラスを割り、破片が祐一へと降り注ぐ。一方投げられた小石はというと、まるでレーザービームのように一直線に廊下を通過していき、壁に当たったところでようやくころころとその動きを止めた。
 冷や汗が流れ落ちるのを、祐一は感じていた。もし不用意に外に討って出ていたら……想像しただけでも吐き出しそうだ。
 『メイド』とは言えロボットはロボット。人間とは比較にならないほどのパワーを有していることを、祐一は改めて思い知った。同時に、絶対に奴を中に入れてはならないことにも。

 祐一はまたレミントンに持ち替えると、立ち上がりざま連続してレミントンを窓の外へと向けて発砲する。そこにマルチがいるかどうかなど確認する間もなかったが、この期に乗じて内部へと侵入を試みる可能性は十分にあったからだ。
 果たして祐一の予想通り、こちらへと接近しようとしていたマルチは即座にバックステップしながらレミントンの散弾を回避していく。そしてお土産と言わんばかりに、マルチもポケットから再び小石を取り出して連続して投擲する。祐一は即座に反転し、壁に張り付く。その直後、今まで祐一のいた空間を小石が駆け抜けていく。最初の投擲同様、放物線を描くこともなく。

「どうした! 少年!」
 閉めた扉の向こうから英二が大声を出して祐一の安否を気遣うのが聞こえた。本来なら喋る余裕などないのだが、無理矢理声を絞り出して状況を伝える。
「ちょっとトラブりました! 敵を追っ払ってます!」
 また反転して外にいるマルチにレミントンの照準を向けようとしたが、マルチは既にレミントンの射程外まで退避し、しかしそれからまた診療所を窺うようにぐるぐると周りを歩き始めた。

(くそ、やっぱ持久戦に持っていくつもりか……)
 マルチの小石の射程は一直線上にいるならほぼ届くだろうし、小石なんてそこら中どこにでも転がっている。つまり弾数に関しては向こうの方が上だ。
 祐一はマルチの射程に入らないように身を屈めながら英二のいる部屋まで転がり込んだ。

     *     *     *

 祐一が出て行ってからすぐ、英二は観鈴の治療を行うべくまずは服を脱がすことにした。
 無論英二にやましい思いは何もないし、観鈴を助けたいという一心での行動なのだが……一応、断りを入れておくことにしておいた。
「あー、その……済まない。失礼」
 念のために数秒ほど間を置いてみるが、ベッドに横たわる観鈴からは苦しげな吐息が聞こえるばかりで英二の声が聞こえているかどうかさえ怪しいものだった。額からは脂汗も流れている。悠長に返事を待っている場合ではなさそうだった。

「……脱がすぞ」
 意を決して観鈴の制服に手をかける。布を通してでも分かる観鈴の体温に、なおさら緊張感が高まる英二だったがいい加減恥や外聞を捨てなければならない。この非常事態なのだ、きっと観鈴も笑って許して……くれるだろうか?
 いやいかん迷っている場合じゃない、と英二は首を振り恐る恐る制服をずらして……いかん、こんなのんびりやってる時間はないぞ、と再度英二は大きくぶんぶんと首を振り、今度こそ意を決して観鈴の制服を勢いのままに完全に脱がす。

 瞬間、観鈴の可愛らしい下着が否が応にも目に入ってくるが英二は心の中で般若心経を唱えて何とかピンク色の思いを打ち消す。それよりも傷の治療だ。
 ブラとショーツを何とか視界に入れないようにしながら朝霧麻亜子が撃ち抜いた脇腹の部分……出血している箇所を確認する。
 まだ出血は続いており当然だが自然に止まる気配はこれっぽっちもない。早急に止血を行わねば命に関わるだろう。
 まずは血を拭き取ろうと偶然あった(恐らく前にここを使っていた人物が用意していたものだろう)濡れタオルを取ろうと視線を変えた瞬間。
(ピンク……)
 ぶんぶんぶんと髪が乱れるほど頭を振りまくり、再び般若心経を唱えて頭からピンク色を排除する。英二の脳はもうこれ以上ないほど疲弊していた。

 何とか心を落ち着かせ、下着が目に入らぬように細心の注意を払いながら優しく、しかし手早く血を拭き取っていく。傷口にタオルが触れた瞬間、観鈴が「う……」と苦しげな声を上げたが、今は我慢してもらうしかない。血はまだ後から後から出てきて、次は消毒して縫合しないといけない、のだが。
(僕に出来るのは消毒まで……縫合は出来ない)
 麻亜子の放った銃弾は比較的口径の小さなもので弾も貫通しているからちゃんと消毒を行えば感染症にかかることはないと英二は考えるが……傷口を塞ぐ縫合が出来ない以上止血は難しい。血が止まるかどうかは自然治癒に任せるしかないのだ。
(だがやれるまではやるさ……!)

 消毒液を取り出しガーゼに付けてから傷口の周りを拭いていく。その度に観鈴が苦しげに身体をうねらせ、その痛みのほどを訴える。
「あと少しだ。我慢してくれ」
 聞こえているのかいないのか、観鈴がこくこくと頷いたように見えた。英二が笑って「いい子だ」と頭を撫でながら包帯を取り出し、丹念に腰部に包帯を巻き付けていく。十数回巻いたところで治療が終わろうかという時、外から窓ガラスが割れるような音が聞こえ、続けて銃声が診療所に木霊した。

「なんだっ!?」
 英二は思わず観鈴から目を外し、扉の外へと向かって怒号を出す。
「どうした! 少年!」
「ちょっとトラブりました! 敵を追っ払ってます!」
 まさか、もう襲撃されているのか? まだ治療が終わっていないのに! 英二は舌打ちをしながら少しでも包帯を多く巻いていこうと手を動かす。

「英二さん!」
 慌てるようにして祐一が部屋の中に転がり込んでくる。銃声から数分と経っていないのに、祐一の肩は激しく上下しており僅かな時間の間、英二が包帯を十数度巻くまでの間に壮絶な戦いが繰り広げられていたことを意味していた。
 下着姿になっている観鈴について何か言われるだろうか、と英二は思ったが祐一はそれよりも扉の外……いや遭遇した敵の方へ意識を向けているからか特に言及してくることはなかった。祐一は英二の近くにあったデイパックの中からレミントンの12ケージショットシェル弾を取り出すと少々もたつきながらも弾を込めていく。

「誰が?」
「あのマルチとかいうロボットです」
 弾を込め終えると、祐一はベレッタを英二に投げ返す。いきなりのことだったので慌ててしまい上手くキャッチ出来ずに落としてしまったが観鈴の体にぶつけてしまうというヘマはしない。

 傷口にでも当てて起こしてしまうならまだしも傷を広げてしまっては目も当てられないからね。

「気をつけて下さい。あのロボット、凄いスピードで石を投げつけてきましたから」
「具体的には?」
「松坂渾身の一投」
「それは怖い」

 おどけたように英二は笑うが、しかしすぐに真剣な表情になって出していた荷物の整理を始める。
「ならここにとどまっておくより逃げた方が良さそう、だな」
 整理を終えると次に観鈴の体を持ち上げながら服を着せていく。本人に意識がないためスカートなどはかなり苦労し、英二が手間取っているのを見かねてか祐一も手伝う。もちろん英二と同様、観鈴の姿に頬を羞恥に染めながら。
 それを誤魔化すように「逃げるって、どうやって?」と尋ねる。

「僕が囮になる」
 ピタリ、と観鈴の服のボタンを閉めていた祐一の手の動きが止まる。怒ったような声になりながら祐一が反論した。
「さっきの話聞いてたのか!? あいつは」
「手強いんだろう? まあ熱くなるな少年」

 どうどうと祐一の肩を叩きながら英二が続ける。
「一応治療は済んだが、観鈴君は依然として危険な状態だ。ここで二人いっぺんに逃げても同時に襲われる。対象が一つだからだ。ならリスクは減らした方がいい。僕が引き付けている間、少年が観鈴君を背負って逃げる。そして環君と合流する。後はよりいい治療ができる人物を探す」
 英二の言わんとしていることは分かる。観鈴を危険に晒してまで二人で逃げるよりはどちらかが囮になって観鈴を安全に逃がした方がいい。英二が言わなければ祐一がそう提案していたところだ。しかし納得できない部分が一つだけあった。

「囮なら俺がやります。体力のある俺が引き付ければ」
「違うな」
 何が違うのか、と詰め寄りたくなった祐一だが英二の目が「まあ聞け」と言っていたので飛び出しそうになる言葉を口を堅く結んで抑える。
「確かに体力のあるのは若い少年の方だろう。それは分かってるさ。だが考えてくれ。人一人背負って走るのと、自分の身一つで戦うのと、どちらが体力を要すると思う?」
「……! それは……」
「残念だが、僕が観鈴君を背負って走ると数百メートルも持たないと思う。情けないがそういう自信がある。それに万が一、囮になった方が殺されてみろ。僕と少年、どちらがマルチと距離を広げられると思う?」

 祐一は反論できない。英二の言う事はもっともだ。あのマルチを倒せれば問題ない、が先程の戦闘で実感した通りあれを相手に生き残るだけでも至難の業だ。祐一が行ったところで勝てるのかさえ分からない。足止めをするのは体力のある方だ、と勘違いをしていた自分が恥ずかしいと祐一は思った。
「煙草なんて吸うものじゃないな。少年も、成人してもそういうことはするんじゃないぞ」
 自嘲するように、英二は煙草を吸う仕草をする。あるいは呪っているのかもしれない。体力がない自分に対して。

「観鈴君は任せた。僕は僕の仕事をしてくる」
 英二は立ち上がると、ベレッタのマガジンをベルトに差し、恐らく治療中にかき集めたのであろう医療具などを祐一に投げ渡した。祐一は自分のデイパックにそれを詰め込みながら、まるで家族に語りかけるように言った。
「ああ、気をつけろよ」
「心配するな。何たって僕は敏腕プロデューサーなんだからね」
 軽く手を上げて応えると英二はまったく畏れることなく、扉の外へ――敵の待つ戦いの場へと赴いていった。

     *     *     *

 ワタシはロボットだ。
 ワタシは機械だ。
 機械はニンゲンの為に在る。
 機械はニンゲンの役に立たなくてはならない。
 故にニンゲンの――雄二様の命令は、絶対だ。

 ワタシは壊れている。
 ワタシはヒトを殺した。
 壊れているから、殺した。
 しかし壊れたロボットに用は無い。
 だからワタシは壊れていない。
 ワタシは雄二様の役に立たなければならない。
 だから殺す。
 しかし壊れていないロボットはヒトを殺せない。
 故に殺したのはヒトじゃない。
 殺すのは、モノだ。

 雄二様の敵はワタシの敵だ。
 雄二様の敵はニンゲンじゃない。
 雄二様の為に、ワタシは全てを壊して差し上げます。
 だから雄二様、お願いです。

 ワタシをヤクタタズと、存在価値ノナイガラクタト、呼バナイデ――

 ヒテイサレルノハ、イヤダ――


 マルチの高感度イヤーレシーバーが激しい物音をキャッチしたのと、目の前に緒方英二が現れたのはほぼ同時だった。それは英二にとっても予想外だったらしい。扉を開けたすぐ目の前にHMX-12、マルチがいたのだから。
「……いや、かえって好都合だ」

 反射的にマルチが飛び退いたのと、英二のベレッタが火を噴いたのは同時だった。マルチの左脇腹すぐ隣を9mmパラベラム弾が通過して森へと消えて行く。
 着地すると同時に、マルチが前屈みの姿勢になり小石を数点掴む。ふんばりによって巻き上げられた砂塵がマルチのニーソックスを汚すが、もはやそれを気に留めるだけの感情を持ち合わせてはいなかった。
 電子頭脳が導き出す命令に従って、マルチはアンダースロウの要領で小石を投擲する。
 一度に投げられた数点の小石は、さながら散弾のように扇状に広がりながら風を切り、英二に肉薄する。だが英二はヒットアンドアウェイの戦術をとっているのか小石が投げられた時には既に回避行動に移っていた。マルチから逃げるように背を向けて走り出していた英二に、小石はどれ一つとして当たらない。

「どうした、僕を仕留めてみろ! 役立たずのロボットめ!」
 役立たず、という言葉にチリッと電子頭脳の奥で何かが焼けるような感覚がした。
 光を失った無感情のカメラアイが、改めて英二に焦点を合わせる。カメラのピントを合わせるように、標的をロック・オンしていた。
 英二を追うようにして、マルチも走り始める。指の先までピンと伸ばし、実に規則正しい角度で手を振りながら。

 それは目標に追いつくための合理的な行動であった。プログラムを自ら改竄し、本来メイドロボならば出せないはずの出力で、導き出す計算に従って、最善の走法を選択する。もはやそれは以前のマルチとは全く異なる思考回路だ。
 つまり、それは。
「コロス……コロサナケレバ、ユウジサマニ、ステラレル……!」
 これまでマルチが培ってきたもの。思い出。感情。それら全てを捨ててしまった、人間の為の『道具』へと成り下がってしまうことに他ならないのに。
 それがロボットとして『正しい』ことだと、『正しい』姿だと認識してしまった哀れな『ガラクタ』であるということだった。

「くそ、来栖川の科学力も伊達じゃないということか……!」
 一方の追われる英二は、確実にマルチに距離を縮められていることに焦りながらも誘導に成功しまず第一の任務は達成したことに内心喜んでいた。
 向坂雄二との会話から考えてマルチは命令に対して絶対遵守の立場を取っていた。恐らく自分を殺害するまでは特に妨害でもない限り目標を変えることはあるまい。これで祐一たちは逃げやすくなったはずだ。

 後は、どう上手く撒くか。
 今の状態で森に逃げ込んでも逆に追いつかれかねない。ベレッタで上手く攻撃を重ねて相手を戦闘不能にした後逃げるのが得策だとは思うが……
「それにしても最新型のHMX-17型ならともかく12型はここまで高性能だった……!?」

 英二が愚痴をこぼそうとした瞬間、背中にコンクリート片を叩きつけられたような衝撃が走り、無様に地面を転がる。勢いよく地面を転がったお陰で細かい擦り傷が顔に腕に刻まれてゆく。呻き声を漏らしながら、英二が顔を上げる。
 そこには、先程より一回りも大きい岩石の欠片のようなものが転がっていた。精々握りこぶしほどの大きさであったが、猛スピードでこれが当たったのだとしたらあの激痛は納得がいく。そんな芸当ができるのは、今この場では一人しかいない。

「ぐ……松坂渾身の一投か……」
 既に目の前――距離にして数メートル――まで間合いを詰めていたマルチが、小さく飛び上がって踵落としを放っていた。英二は痛みを堪えながら横にごろごろと転がり、間一髪頭部への直撃を回避する。地面を穿つ一撃は、土を巻き上げ英二の顔に降りかかる程であった。

 ゾクッとした怖気を感じながら、英二は寝転がった体勢のままベレッタを発砲する。
 恐怖は、死の可能性を広げる最大の要因である。恐怖を力で屈服させるべく、英二は目の前にいる機械の怪物へ引き金を引き続けた。
 あらゆるものは決して、征服されざる者ではない――そう信じて。

 至近距離から発射された弾丸が、次々にマルチに命中する。
 右腕。右足。下腹部。肩も掠った。それが人間であれば、怯むどころか地面に膝を付き行動不能にさせるくらいの損傷を与えていただろう。
 しかし、目の前のロボットは服に開けられた穴から人工血液をじわじわと出しながらもわずかに身をよじらせただけで全く受け付けていない様子であった。
 英二の思いをかき消すが如く、自らが征服されざる者だと主張するように、マルチは黙って拳を振り上げた。
 なおも英二はベレッタのトリガーを引こうとする。が、目の前の怪物を砕くはずの9mmパラベラム弾が飛び出すことは無かった。理由は単純。既に英二のベレッタはホールド・オープンしていたからだ。

 けれども英二もまた冷静だった。普通ならベレッタのマガジンを入れ替えようとするか、もしくは振り上げられた拳を回避すべく横に転がろうとするだろう。マガジンの交換はとても間に合うものではないし、攻撃を回避しても立て続けに追撃が来るのは免れない。
 英二の取った行動は……人間の立脚点となる部分、即ち脚部を思い切り蹴飛ばすことだった。

 人の土台となる部分に衝撃を加えられ、さしものマルチも体勢を崩す。振り上げられた拳は、すぐに姿勢を維持するために開かれる。
 マルチが両手を地面につくのと、英二が立ち上がったのはほぼ同時。
 更に攻撃を加える隙はあった。蹴り飛ばすもマガジンを交換して数発発砲する程度の時間もあっただろう。だが英二は逃げた。息つく暇も無く脱兎の如く逃げ出した。

 命が惜しかったわけではない。自信がなかったわけでもない。英二の役割は出来るだけマルチを引き付けて祐一と観鈴の距離を離すこと。まだその仕事を全うしたわけではないと考えていた。英二を殺害しようとする追跡者を倒す算段を練るのは、まだもう少し後だと考えていた。
 走りながら英二は不慣れな手つきでベレッタのマガジンを交換する。二、三度手が滑りかけたがそれでもマガジンを落とすという愚は犯さなかった。
 自らに課した仕事は完璧に遂行する……それが英二のポリシーであったからだ。

「逃ガシマセン……」

 背後にマルチの気配を感じる。しかし英二は振り向かなかった。
 振り向けば、それだけ速度が落ちて迫るマルチとの距離を縮めることになる。そしてもう一つ、その行為は背後の脅威に恐怖を感じていることの体現に他ならない。とにかく可能な限り走ることが、英二の生存率、そして祐一らの生存率を高めるためのロジックだった。
 ジャリ、と砂が擦れる音が耳に届く。それはマルチのスタートした合図だ。遅れて鳴らされたる始まりの鐘。二人の間は10メートルほど。生死を分かつ徒競走。さぁいつまでこの競技を続けられるだろうか――

 英二が流れ始めた額の汗を拭って速度を高めようとした時だった。ふと英二の背中を追う様にして忍び寄っていた黒い気配がふっ、と消える。
「……?」
 あまりにも突然のことだったので勘違いだろうかとも思った。気配など、所詮は人が何となく感じているものに過ぎない。しかし英二の背を押していた圧迫感のようなものがなくなっていっているのもまた事実だった。
 それが恐怖に屈する行為だと考えながらも、英二は走らせていた足をゆっくりと緩め、やがて足を止める。大きく吐き出される自分の息だけがその場に残った。

 迫る足音も、未だに痛覚を残す原因となった石つぶてが飛来する風音も、感情の無い声も、何も聞こえてはこなかった。
 だからというわけではないが、かえってそれが英二に不信感を抱かせる。明らかにおかしい状況だった。
 透き通った風が英二の肌を撫でる。それは急速に英二の体温を下げ、「おかしい」とばかり考える自分の思考もやがて落ち着いてくるようになった。
 激しく運動したせいか、眼鏡が幾分かずれているようだった。丸眼鏡の枠から外れて見える、僅かなぼやけた視界が妙に鬱陶しい。無性に煙草を吸いたくなったが、手元に煙草のカートンはなかった。

 代わりに眼鏡を整えて視界を調整した後、英二は大きく息を吸い込み意を決したように自分の背中へと向かって振り向く。
「どういう、事だ……?」
 そこには、もはや誰もいない、荒涼とした路傍の風景が転がっているだけだった。

     *     *     *

「英二さん、上手くやったかな……」
 窓の外に敵の気配があるかどうか確認するために、祐一は観鈴をおんぶしながら頭部の上半分だけを出してきょろきょろと目を左右に動かす。英二が出て行ってから発砲音が一発だけ聞こえたが、後は静かなもので時折風が診療所の窓をカタカタと揺らす音が聞こえてくるくらいだ。恐らく、誘導には成功したのであろう。

「俺達もそろそろ逃げなきゃな……」
 環の安否が気になるけれども、と考えた瞬間噂をすれば何とやらというタイミングで、頭からダラダラと血を流しながら歩いてくる向坂環の姿があった。
「おいおい、マジかよ……」
 呆れ半分、驚き半分といった感じで祐一は声を漏らす。姉弟喧嘩にしてはいささか派手過ぎるんじゃあないのと思ったが、逆に言えばそれだけ環の弟は手の施しようのない状態だったのだろう。あの狂気じみた台詞回しからも、それは分かる。
「けど、ってことは向坂、弟を手に……」

 家族殺し、という単語が頭に浮かんだ祐一だったがそれよりもあの様子では傷も深いはずだった。一旦背負っていた観鈴を下ろして、診療所の外へ向かう。
「向坂っ!」
 声を張り上げながら走ってきた祐一に、環が軽く手を上げて応える。だがそこに余裕はなかった。弟との戦闘で心身ともに疲弊し、声すら出せない女の子が一人、そこにいるだけだった。
「色々言いたいことはあるだろうが、まずは手当てするぞ。今はまだ、ここも安全だ」

 よく見れば顔だけでなく足や腕からも微妙にだが出血している。どれだけ激しく争ったのだろうか。訊きたい気持ちに駆られるが、口に出すことはしなかった。話してもいいことなら、いずれ環の方から喋ってくれるだろう。
 祐一は環の肩に手を回し、支えるようにして診療所まで連れて行った。

     *     *     *

「……そう、そんなことがあったのね」
 祐一に手当てしてもらい、掃除に事の顛末を聞いた環は自分の隣にどっさりと詰まれたペーパータオルの山(血液つき。吸血鬼にお勧めの一品です)を嘆息しながら眺めていた。

「悪いが、すぐにここを出るぞ。ゆっくりしてるとあのロボットが戻ってくるかもしれない」
 床に寝かせていた観鈴をおんぶし直すと、祐一は環に立つように言った。
 未だ目を覚まさない観鈴ではあるが顔色は決して悪くない。じきに目を覚ますだろう。安静にしていれば、の話だが。
「分かってる。けどこのまま西に行くのはやめたほうがいいわ。ひょっとしたら雄二が待ち伏せしてるかもしれない」

 雄二、という言葉に祐一が少し反応して口を開きかけたが、何か思いとどまったのかすぐに口を閉じて目を逸らす。その様子を見た環は、普段から考えればあり得ないくらいの申し訳なさそうな口調で、
「……ごめん。でも、どうしても弟には……」
「あ、いや、そういうことじゃないって」
 ボリボリと観鈴を背負ったまま器用に頬を掻きながら、少し遠慮がちに祐一は言う。

「むしろ安心した。お前が家族を殺すような奴じゃないって分かったからな。ただ、あんまり向坂は話題にしたくないんじゃないか、って思ってさ」
「祐一……うん、ありがとう。でも気にしてないわ、聞きたいことがあるなら遠慮なく言って」
 浮かべた笑みは祐一の言葉が少しだけでも環の心を解していることを表していた。「なら」と祐一が続ける。

「東は英二さんが、西は向坂の弟がいる。なら北か南か、になるんだが、どっちから行く気だ」
「私は南から迂回して西に抜けるのがいいと思う」
 環はデイパックから地図を取り出すと島の最南端の海岸付近を指でなぞりながら道を指し示す。

「北は森になってるし、道も険しいはず。そんなところに観鈴を連れ込むわけにもいかないでしょ? 南からだと民家もあるし、万が一襲われたとしてもそこに逃げ込むことだってできる。それに」
 環はテーブルの上にあった一枚の紙切れを取ると、それを祐一に見せる。

「なんだこりゃ? 『日出ずる処のなすてぃぼうい、書を日没する処の村に致す。そこで合流されたし』?」
 眉をひそめて紙を凝視する祐一に、環が明朗に告げる。
「まあついさっき見つけたわけなんだけど。これは簡単な暗号ね。多分これは小野妹子が隋の煬帝に宛てた文書をもじったもの。で、日没する処……つまり西の村で合流しようって書かれてるってこと」
「まあ、言ってることは分かるが……誰が書いたんだ?」
「さぁ、そこまでは……『なすてぃぼぅい』、『ポテトの親友一号』、『演劇部部長』、この三人のうちのどれかだとは思うけど? 心当たりは?」
 いや、と祐一は首を振る。環はどうなんだと聞こうとした祐一だが、知っているなら聞きはしないだろう。むしろそれよりこの文章の内容を信じて西の村……つまり平瀬村に向かってしまっていいのだろうか? 罠だという可能性はないだろうか? だからそれを環に尋ねてみることにした。

「この手紙……信じてもいいのか? 罠って可能性もあるんじゃないのか」
「だったらわざわざ暗号みたく書いたり名前の部分をあだ名にする必要はないと思うわ。おびき寄せたいなら適当に名簿から名前を選んだりもっと目的地をストレートに書いてくるはず。だから敵の可能性は少ない」
「なるほどな……上手くいけば手紙を書いたこいつらと仲間になれる可能性もあるか」
 仲間がいるかもしれないという希望は、いやがうえにも祐一の心を高揚させた。ここまで会う人間の大半が敵だった祐一にとっては無理からぬことだろう。

「そうと決まれば出るぞ。英二さんだって頑張ってるんだ、俺達もここが踏ん張りどきだ」
「……そうね。せっかく作ってくれた風穴を無下にするわけにはいかないものね。行くわよ、祐一」
 歩くような速さで、少しだけ早足で、祐一と環、そして背負われた観鈴は活路を見出すべく飛び出した。

     *     *     *

「マルチ」
 逃げ出した緒方英二を追おうとしたマルチの背に向かって突然聞こえてきた声に、ビクリとマルチが肩を震わせた。
「ゆ……雄二、様……?」

 彼女にとっての畏怖すべき存在。絶対的な王。そして道徳すら支配する唯一の人。フリーズを起こしたように、マルチは動くことができなかった。
「お前よぉ、こんなところで何してんだよ」
 振り向けないマルチの横に、向坂雄二が立つ。眼球はマルチと同じく底無し沼のように黒く濁り、頬が絶えず引き攣るように動き、歯を苛立たしげに鳴らしている。それは怒りなどではなく、遊びに退屈した駄々っ子の様相を呈していた。

「答えろよ、ポンコツがっ!」
 雄二は怒鳴ると、思い通りにならない玩具を叩き壊すかのような勢いでマルチを蹴り飛ばし、無様に倒れこんだマルチを踏みつける。
「答えられるのか、できねぇのかどっちだよ! はっきりしろ、あ!?」
 顔面を何度も踏みつけられる。感覚としての『痛覚』は彼女になかった。しかしマルチは本物の痛みを感じているように「ひぎっ、ひぃ」と悲鳴を上げ、残虐な王の仕打ちにのたうっていた。やがて雄二が息を切らし始め、虐待が収まってきたころにマルチが弱々しい声で詳細を報告する。

「ゆ、雄二様のご命令に、従って……敵を」
「んなこたぁどうでもいいんだよっ!」
 頭を踏みつける感触がなくなったかと思うと今度は腹部を激しく蹴り飛ばす。蹴られる度にマルチの華奢な体がビク、ビクンと痙攣するように動く。

「姉貴だよ!」

 一発。

「姉貴はどこだっ!」

 さらに一発。

「俺を弱いとか抜かしやがったあのクソ姉貴の居場所を聞いてるんだよ! 敵!? 馬鹿かお前は!」

 次の蹴りは喉に。「ぐがっ」と声にならない声を漏らした後、マルチが咳き込みながら言葉を返す。
「で、ですが……雄二様のお姉さんは雄二様が」
 そこまで言ったところで、マルチの光学樹脂の瞳が額に青筋を立てる雄二の顔を捉える。そして同時に理解してしまった。今の言葉が彼の逆鱗に触れてしまったことに。

「うるせぇっ! ロボットの癖に! 人間様の奴隷の癖にごちゃごちゃ抜かしてんじゃねぇよゴミクズがっ! 俺がいつ意見していいっつったよ!?
 それともお前もあれか、心の底で俺を弱いとか思って見下してんのか!? 姉貴も見つけられねぇ役立たずの癖にいいご身分だなぁおい?
 教えてやるよ、人には権利と義務ってやつがあんだよ! 権利ってやつは義務を果たさないと行使できねぇもんなんだよ!
 それをお前みたいなクズは何もできねぇ癖にのうのうと権利を主張しやがって、何様だ!? 王様か!? ロボット様様か!?
 ふざけんじゃねぇよ! 人間の役にも立てないようなお前は奴隷以下だ! ガラクタだっ、スクラップだジャンクだゴミだクズだ産業廃棄物なんだよ!
 いっちょまえに口なんかきいてんじゃねぇ! 奴隷なら奴隷らしくご奉仕しろよ、あ?
 メイドロボなんだろお前は!? 人間様に逆らえる権利なんかお前には一つたりともねぇんだよ!
 なんだってするって言ったよなぁ? あの言葉はウソか? なんだってするって言ったくせにもう俺に逆らってるじゃねぇか!
 ブッ壊れてるくせに偉そうにすんじゃねぇ! 分かってんのかこのビチグソが!!!」

 普通の人間なら思わず耳を覆ってしまうような罵声を浴びせながら、雄二は喋っている間もマルチのあらゆる部分を蹴り飛ばし、踏み躙り、押し潰す。
 瞬く間に服が破れ、人工皮膚が裂け、血が流れる。ボロクズのようになりながら、それでもマルチは仕打ちを受け続ける。致命傷にならない分、それは拷問と言っても差し支えない所業であった。

「ゆ、許して……どうかお許しください雄二様……わたしが、わたしが全て間違っていました、悪いのはわたし、全部わたしです……」
「当たり前だっ! 何分かりきったこと言ってんだよポンコツ! 理解すんのが遅ぇんだよクソ電子頭脳が!」
 雄二は左手でマルチの髪を引っ張り上げ、右手で拳を作り勢いよくマルチの頬を殴る。右も左も、何度も何度も。

「も、もうひはけあひまへん、もうひはけありみゃへん……」
 殴られ続けながら言うので、まったく言葉にならない。その様子を見た雄二がちっと舌打ちをして左手を離した。支えを失ったマルチの体が瞬く間に崩れ落ちる。

「クソが……せっかく見つけてやったってのに姉貴の場所も知らねぇとは……もういい、お前に期待した俺が馬鹿だったよ」
「ゆ、雄二様……見捨てないで……どうかわたしを見捨てないで下さい……今度こそ、今度こそ必ず雄二様のお役に……」
 掠れた声で暴虐な王にすがろうとするマルチ。例えどんなに理不尽な理由で痛めつけられたとしても、今のマルチには雄二こそが全て。雄二こそが絶対の存在だった。よろよろと立ち上がり、立ち去ろうとする雄二を追いかける。

「ち……まだ歩けたのかよ」
 マルチが追ってくるのを見た雄二が、分かった分かったというように手を振りながら言う。
「次が最後だ。もう失敗は許さねぇからな。死ぬ気で役に立ってみせろよ、クズ」
「ゆ、雄二様……は、はい、必ず」

 後がないことを知りながらも、マルチは嬉々とした声色で雄二の後に続く。まだ見捨てられていないという希望が、もう一度マルチを奮い立たせたのだ。
「姉貴を追うぞ。愚図愚図するな! 行くぞ」
「も、申し訳ありません!」
 暴虐な王と哀れな忠臣は、まだ一本の糸で繋がっていた。




【時間:2日目午後14:00】
【場所:I-07】
向坂環
【所持品:支給品一式、救急箱、診療所のメモ】
【状態:頭部から出血、及び全身に殴打による傷(手当てはした)。南から平瀬村に向けて移動】
相沢祐一
【持ち物:レミントン(M700)装弾数(5/5)・予備弾丸(12/15)支給品一式】
【状態:観鈴を背負っている、疲労、南から平瀬村に向けて移動】
神尾観鈴
【持ち物:ワルサーP5(8/8)フラッシュメモリ、支給品一式】
【状態:睡眠 脇腹を撃たれ重症(手当てはしたが、ふさがってはいない)、祐一に担がれている】

【時間:2日目午後14:30】
【場所:H-07】
向坂雄二
【所持品:金属バット・支給品一式】
【状態:マーダー、精神異常。姉貴はどこだ!?】
マルチ
【所持品:支給品一式】
【状態:マーダー、精神(機能)異常 服は普段着に着替えている(ボロボロ)。体中に微細な傷及び右腕、右足、下腹部に銃創(支障なし)。雄二様に従って行動】


【時間:2日目午後14:10】
【場所:H-08】
緒方英二
【持ち物:ベレッタM92(15/15)・予備弾倉(15発)・支給品一式】
【状態:疲労大、マルチいないなどこ行った?】
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