ったく似合わない事はするモンじゃねえな。 あの彰っていうクソガキを助けようとしたせいで撃たれちまって肩は痛てえし、頭はくらくらするしよ。 熱血馬鹿みてえな台詞を言っちまってこっぱずかしいし、マジで最悪だ。 俺様は決めたぞ、もう絶対にボインの姉ちゃんしか庇わねえ。『女を助けて美味しく頂いちまう』―――これだよ、これ。 ハーレムを築きながら、ついでに岸田と主催者の野郎をブッ潰す。 そうすりゃこのかったりいゲームに放り込まれてた女達が、みんな俺様に大感謝してウッハウハって寸法よ。 ……妄想はここら辺にして、そろそろ本編に戻るとしますかね。 俺様達は湯浅皐月ってガキに先導されて鎌石局を訪れていた。 歩きながら湯浅の話を聞いてたんだが、貴明と久寿川はもう鎌石村を離れちまったらしい。 つまり俺様達は当面の間、急ぐ必要はねえって訳だ。 いくら俺様でも、あんだけ派手に殴り合ったら体力の限界が来る。 疲れ果てた俺様は鎌石局につくなり、爆睡モードに入った。 そのままずっと惰眠を貪っていたかったんだが、湯浅に叩き起こされ、今は治療の最中だ。 湯浅が俺様の左肩へ無造作に消毒液をぶっかける。 「あいててっ!俺様はデリケートなんだ、もっと丁寧に扱いやがれ!」 「うるさいわね。知り合ったばかりの貴方の手当てをしてあげるだけ、有り難く思いなさい」 いや、マジで痛いんだぞ?タンスの角に足の小指をぶつけた時の十倍は痛え。 湯浅は包帯を取り出して、ぐるぐると俺様の肩に巻きつけた。 「はい、これで終わりよ」 銃で撃たれてんのにこんな簡単な手当てで良いのか、オイ。 まあ文句を言っても却下されるのは目に見えてる、ここは大人しくしておこう。 「じゃ治療も終わったし、早く七海達の所に行くわよ」 「あん?」 言われて俺様は周りを見渡した。いつの間にか俺様と湯浅以外の奴らがいなくなってるじゃねえか。 「他の奴らは何処行ったんだ?」 「説明するのも面倒だわ。良いから連いてきなさい」 ・ ・ ・ 俺様は鎌石局のすぐ横にある一軒家で、椅子に座っていた。 「どうぞ、召し上がってください。一生懸命作りました」 七海のヤツがテーブルの上に、焼肉が盛り付けてある皿を置く。 失った血を取り戻すには肉を食べるのが一番だって湯浅に言われて、肉を焼いたらしい。 ちなみに郁乃と折原の奴はもう飯を食い終わって休憩中だ。 ポテトの野郎はと言うと主人を放ったらかしにしたまま、ぴろとかいう猫とじゃれ合ってやがる。 テメェ、焼き犬にすんぞ。 さて、七海シェフの作った焼肉についてだが、ちょっと焦げているが食えないレベルじゃなさそうだ。 七海が見守る中、俺様は肉を口に入れて、モグモグと噛んで飲み込んだ。 「ど、どうですか?」 「ああ、悪かねえぞ。こんくらいなら全然オーケーだ」 「よかったぁ」 七海は心の底からホッとしているみてえだった。うむうむ、愛い奴よのう。 にしてもまだまだ食い足りねえ。俺の胃が更なる獲物を要求してやがるぜ。 「おい七海、もうひ……」 「ごご、ごめんなさいっ!やっぱり焼き過ぎでしたよね」 「あん?全然そんな事は……」 「ですよね。やっぱりこんなの食べれませんよね」 ……人の話は最後まで聞けよ、オイ。小学生の頃先公から習わなかったのか? まあ俺様は授業時間をもっぱら睡眠学習に充ててたから知らないがな。 ってげげっ、七海のヤツ焼肉を捨てようとしてやがる。 「あー、もう良いから貸しやがれっ!」 「え……?」 俺様は皿を七海から奪い取ると、焼肉を一気に口の中に放り込んでいった。 一個、また一個と次々に咀嚼して飲み込んで、一分と掛からずに全部食い尽くした。 流石俺様、早食い大会に出たら優勝間違いなしだぜ。 「貴方、行儀悪いわね……」 湯浅皐月嬢が下目遣いでいちゃもんをつけてくる。 「っせーな。それより、お前は料理しねえのか?七海がお前の事、料理が凄い上手いって褒めてたぞ」 「嫌よ面倒臭い。性格反転してない時の私に言って頂戴。それより食べ終わったんなら皆を集めて作戦会議するわよ」 ・ ・ ・ 「この見取り図、臭うわね」 湯浅が折原の持っていた(元は知らないオバハンの物だったそうだ)見取り図を眺めながら、呟いた。 その見取り図には何かの建物の内部構造に加え、普通に支給品されてる分の地図と同じ番号(A1とかそういうのだ)が書いてある。 「風呂には二日間入ってないけど、物にまで感染る程俺の体臭は濃くなってるのか……」 折原ががっくりと項垂れる。すると、湯浅は呆れたように大きく溜息をついた。 「違うわよ、この見取り図に書いてある建物が怪しいって言ってんの。何しろこれだけ大掛かりな建造物なのに、支給品についてる地図には一切載ってないんだからね」 「何で大掛かりって分かるの?」 郁乃が素朴な疑問をぶつけてくる。よし、ここは金田一高槻様がズバッと答えてやろうじゃないか。 「この見取り図に打ってある番号は支給品の地図と同じだろ?んで、この建物の一部分はC6-7の海岸線からそのままG06-H07まで続いている。 もう一つの部分はG2-H2の境界線と海岸線の交差地点から、GとHの交差する09地点まであるらしい。 つまり、この島を横断出来るくらい馬鹿でけえ建物って事だ」 「でもこのc6-7の辺りはあたし達も通ったけど、何にも無かったわよね?」 ふむ、言われてみればそうだな。こんなでけえ建物が建ってたら、気付かない訳が無い。 となるとハッタリか?けどよ、意味も無くこんなモンを支給するとは思えねえんだよな。 「……これは推測に過ぎないんだけど」 湯浅が前置きをしてから話し始める。 「この建物は地下にあるんじゃない?そして浩平の持っているカードか鍵のどちらかが、この建物の中に入る手段だと思うわ。 こんな見取り図を配った以上、出入りする為の道具も一緒に渡してあると考える方が自然だしね」 「うーん……、その可能性はあるな。でもこんな大きな建物、何に使うんだろうな?」 折原が顎に手を当てて考え込む仕草を見せる。そこで俺様は、ピッと人差し指を立てて言ってやった。 「地下にある建物っていったら、悪の秘密基地に決まってるじゃねえか。……つまり、主催者共がそこにいるって事よ。 ガキくせえ理論だが、あながち間違いでは無い筈だぜ。地下なら襲撃される心配も少ないし、必要がありゃいつでもゲーム会場に来れるし、隠れ家にはもってこいだ」 「確かに主催者の人が隠れるのに丁度良いでしょうけど……何でわざわざ、自分達の居場所がバレるような物を準備したんでしょうね?」 七海が尋ねてくる。その疑問はもっともだが……答えは俺様にも分かんねえ。 『――みなさん、聞こえているでしょうか?これから第三回放送を始めます』 「―――!?」 そこで、あの胸糞悪い放送が始まりやがった。 【時間:二日目・18:00】 【場所:C-4一軒家】 湯浅皐月 【所持品1:H&K PSG-1(残り0発。6倍スコープ付き)、S&W M60(5/5)、.357マグナム弾×10、自分と花梨の支給品一式】 【所持品2:宝石(光4個)、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)、手帳、ピッキング用の針金、セイカクハンテンダケ(×1個)】 【状態:性格反転中、首に打撲、左肩、左足、右わき腹負傷、右腕にかすり傷(全て応急処置済み)】 ぴろ 【状態:ポテトとじゃれ合っている】 折原浩平 【所持品1:S&W 500マグナム(4/5 予備弾7発)、34徳ナイフ、だんご大家族(残り100人)、日本酒(残り3分の2)】 【所持品2:要塞開錠用IDカード、武器庫用鍵、要塞見取り図、ほか支給品一式】 【状態:頭部と手に軽いダメージ、全身打撲、打ち身など多数。両手に怪我(治療済み)】 早食いチャンピオン高槻 【所持品:コルトガバメント(装弾数:6/7)、分厚い小説、コルトガバメントの予備弾(6)、スコップ、ほか食料・水以外の支給品一式】 【状態:全身に痛み、中度の疲労、血を多少失っている、左肩貫通銃創(簡単な手当て済みだが左腕を動かすと激痛を伴う)】 【目的:最終目標は岸田と主催者を直々にブッ潰すこと】 小牧郁乃 【所持品:写真集×2、車椅子、ほか支給品一式】 【状態:首に軽い痛み、車椅子に乗っている】 立田七海 【所持品:フラッシュメモリ、ほか支給品一式】 【状態:健康】 ポテト 【状態:ぴろとじゃれ合っている、光一個】 - BACK