深夜、例のスタート地点であった廃墟にて。 それぞれ個性的なコスチュームに身を包んだ長森瑞佳・柳川祐也・芳野祐介は朝方に再出発を図るために今は各自休息をとることになった。 見張りは男二人での交代制、瑞佳のみ奥の部屋でゆっくりと休んでいる。 今は芳野が見張りを担当する時間だった。 「で、何であんたがここにいるんだ・・・・・・」 「まあ、いいじゃないか」 既に交替の時間は過ぎているのにも関わらず、何故か隣に居座り続ける柳川。 機嫌がいいのかずっとこうして芳野相手に話し続けている、芳野からしてはうざいだけなのだが。 「・・・・・・む」 「どうした、いきなり」 後方、見張っていた入り口とは真逆の場所。 鋭い視線を送る柳川につられる形で芳野も見やる、そこには眠っていたはずの瑞佳がもじもじと佇んでいた。 「長森? 明日は早いんだぞ、きちんと休んだ方がいい」 「あ、はい。お気遣いありがとうございます・・・・・・」 少し皺になっているぱろぱろタイプの制服、横になっていたせいだろう。 寝起きのままこちらまで来たようで、髪も整えていない。 年頃の少女として身だしなみに気遣わなければ駄目だろうとプリプリ注意する柳川だが、どうやら瑞佳は全て右から左に抜けていってしまっているようだった。 太ももを擦り合わせ、困ったように俯く瑞佳の様子に芳野が助け舟を出す。 「えっと、アレか?」 「あ、はい、その・・・・・・洗面所を探していまして」 「何だ、こんな時間に顔でも洗うのか?」 すかさず後頭部にチョップを入れられた柳川、抗議するもののそのまま襟首掴まされ芳野に耳打ちされる。 「トイレだろうが、ト・イ・レ!」 ああ! とポンッと手をつく、これでやっと納得したらしい。 しかし次の瞬間その顔つきは異変した。いきなり表情を引き締めた柳川は、再びトイレを探しに廃墟を俳諧しようとする瑞佳を慌てて呼び止める。 「待て長森! それは死亡フラグだ!!」 「え・・・・・・え??」 「トイレに行ってはいかん! 何かあってからじゃ遅いんだ、とにかく駄目だっ!」 困ったように固まる瑞佳、指先をつきつけながら柳川は叫ぶ。 「小便がしたいなら、トイレ以外を使え! 屋外とか!!」 「そんな、恥ずかしいですよ」 「とにかくトイレは危険なんだ、俺の第六感が悲鳴を上げている・・・・・・どうしてもトイレで用を足したいと言うなら、個室の中までついていくぞ!」 「おい変態、手錠いるか?」 「ノーサンキュー!」 呆れ返りばがらもつっこむ芳野、しかし柳川の暴走は止まらない。 「くそっ、ちょっと待ってろ。屋外で安全な場所を確保してくる、それまで動くなよ!!」 「あ、おい!?」 そのまま後ろを顧みることなく、柳川は駆けて行った。 残されたのは、呆然とその背中を見送る男女二人。 「・・・・・・迷ったんだろ?そこまで送ってやる。安心しろ、個室の中には入らない」 「は、はい。お願いします」 「フー、外でするのも気持ちいいものだな」 トロピカルタイプの半パンをずり下げ、その逞しい一物から勢いよく尿を放つ。 廃墟のすぐそこ、森林地帯にて柳川は用を足していた。 よくよく考えれば彼が求めていたのは安全な場所であり彼自身が用を足す必要は全くなかったが、それはそれ。物はついでである。 放尿による開放感に包まれながら、今後について柳川は考えた。 今は亡き倉田佐祐理からの最期の願い、彼女の友人である「川澄舞」と「相沢祐一」を・・・・・・そして、少しでも多くの参加者を守るということについて。 優しい彼女が託してくれたそれを肝に銘じながら、柳川は改めて決心する。 「倉田、見ていてくれよ。俺は・・・・・・ヘブゥ!!」 バクッッッッ だが、言葉は最後まで紡がれなかった。 ムティカパ 【時間:2日目午前4時】 【場所:H−7】 【状況:健康】 【状態:辺りを警戒、常に移動しながら獲物を探している】 長森瑞佳 【時間:2日目午前4時】 【場所:H−7、元スタート地点の廃墟】 【持ち物:某ファミレス仕様防弾チョッキ、ぱろぱろ着用帽子付・自分の制服・支給品一式】 【状態:トイレへ】 芳野祐介 【時間:2日目午前4時】 【場所:H−7、元スタート地点の廃墟】 【持ち物:某ファミレス仕様防弾チョッキ、フローラルミント着用・繋ぎ・Desart Eagle 50AE(銃弾数4/7)・サバイバルナイフ・支給品一式】 【状態:瑞佳を送る】 柳川祐也 死亡 - BACK