______ |MISSION LOG|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 激闘の末、ようやく岸田を追い払う事に成功した高槻達。 しかし岸田との戦闘でこちらも沢渡真琴(五十二番)を失い、さらに 新入隊員の折原浩平(十六番)も身体中に怪我を負い、ほしのゆめみ(支給品) も腕が動かないという事態に陥った。 そんな折、新たに現れた女、藤林杏(九十番)と、 あわや戦闘になりかけたが誤解だと分かり、行動を共にすることになった。 現在、彼らは鎌石村への街道を歩いている… _________________________________ ______ | E X I T |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ …とまあ、いつも拝啓おふくろ様(以下略 では芸がないので今回はハードボイルドっぽくあらすじを書いてみたぞ。どうだ、中々カッコイイだろ? いつの間にやら仲間がどんどん増えて当初の目的など場外ホムーランしてしまった俺様だが、まだまだ美女をゲッツするってのは諦めちゃいない。 こうなったらヤケだ。いっそのこと折原以外が全員女なのをいいことにハーレムを作ってやろうという結論に達した。(ちなみに折原は召使いだ) そう言えば、これは最近(ゆめみにこっそり聞いた。勉強家だろ?)知ったことなのだが、ハードボイルドというのは「固ゆで卵」の意から転じて冷徹、非情の意を表すらしい。 なるほど、俺様にピッタリだ…と思えなくなってきたのは何でだろうな… 「そう言えばさ、ここ一連のゴタゴタで言い忘れてたことがあるんだけど…」 俺様の悲嘆をよそに、藤林に車椅子を押してもらっている郁乃が(俺様は前衛。ポイントマンというそうだ)七海のデイパックを指して言った。 で、そのデイパックの持ち主の七_さんは折原の背中ですやすやと寝て…あいや、気絶していらっしゃる。ゆめみが片腕を使えないし、俺様は前述の通り前衛でコイツしかいないから仕方がないんだが… べ、別にめんどくさいとか疲れるからだとか、そんな理由だからじゃないんだからねっ、勘違いしないでよっ! 郁乃風に言い訳してみたが、気持ち悪くて仕方ない。やはり男には似合わないな。 「七海のデイパックにフラッシュメモリがあるでしょ? あれをゆめみに調べてもらっていたんだけど、役に立ちそうなファイルがいくつかあったのよ」 ほう。それは朗報だ。いくつかということはファイルは複数あるということだ。情報が圧倒的に足りない俺様にとってはたとえ主催側からの情報であってもありがたい。 これを足がかりに奴らに噛みついてやる。窮鼠猫を噛む。 「バカ、これは追い詰められた時に使う言葉じゃない」 「…おい、俺様の崇高な心の声を読むんじゃない」 俺様の的を射た言葉をバカという2文字で完全否定する小牧郁乃嬢に反論…って、待て。 「郁乃、お前って人の心が読めたのかっ!?」 「…本当にバカね。自分で声に出してたじゃない」 『バカ』の追撃。言葉の矢が突き刺さる。 「…ね、折原。コイツがあんたらを窮地から助けたって、ホント?」 「オレも信じたくない」 後方にて藤林と折原の援護射撃。もずくに浸かってパズルを食べて、俺様の心はボロボロだ。 ダディアナザーン! オンドゥルウラギッタンディスカー!! 「あ、あの…小牧さん、お話を続けた方が…高槻さんがかわいそうです」 ゆめみが非情な助け舟を出してくれる。ちくしょう、俺様がアホの子みたいじゃないか。ハードボイルドなのはこいつらだと思うんだが、どうよ? それもそうね、と郁乃が言ってゆめみに例のメモリを取り出してもらう。それから「もう一度お願いできる?」と続けた。もう一度? 何をするのやら。 わかりました、とゆめみは心なしかこちらを気にするようなそぶりを見せてから後ろを向く。カチャカチャという機械音が聞こえて、次にゆめみが振り向いた時にはフラッシュメモリがイヤーレシーバーの横にあるUSBポートに接続されていた。 「へぇ…最近のロボットっていうのはよく出来てるのね」 藤林が感嘆の声を上げる。ありがとうございます、とゆめみが照れ臭そうに応じた。パソコンみたいなロボットだよな…なんだったっけか、どっかにそんな感じの漫画があったな… 「ゆめみ、出してくれる?」 郁乃が一声かけると、同じくイヤーレシーバーから光が出て、目の前にホログラフを作った。 スクリーンなしで映るのかと思ったが実に綺麗に画面が映っていた。最新式のコンパニオンロボは伊達ではないらしい。 俺様を含めた全員が画面に見入る。テキストファイルやら、何かの実行プログラムやらがいくつか並べられている。 「私とゆめみが見たのが、これ」 『今ロワイアル支給武器情報』という文字を郁乃が指した。郁乃の説明によれば、文字通りこのファイルには全参加者の支給武器の詳しいデータが載っているという。 俺様や藤林、折原も確認してみたが郁乃が気になったもの以外はめぼしいものはなかった。 「オッサンの支給品はやっぱポテトだったんだな…」 オッサン言うな折原。で、その話題の支給品はと言うとウリ坊(ボタン)と仲良く遊んでいた。 この野郎、一人だけ幸せそうに… 「春原…芽衣…妹さんが…預かってくれてたんだ、ボタン」 俺様がポテトへのやつあたりを計画していたところ、藤林がらしくない、涙ぐんだ声で漏らす。意外と人情家なのかもしれない。 「知り合い、だったのか?」 春原芽衣という名前はすでに放送で呼ばれている。 俺様が訊いたところ、藤林は首を横に振った。 「直接会ったことはないんだけど…よく陽平…春原陽平ってあたしの悪友がよく言ってたのよ。『僕の妹はよく出来てんだぞ』って」 数奇な運命だな…と柄にもなく感慨に耽ってしまう。そういや、俺様と郁乃&七海も…いや、気にしないでおこう。 「みんなもういい? それじゃ、次に行くわよ?」 いつのまにやら仕切り役になっている郁乃がファイルを閉じるように指示する。コイツ、学校では委員長だったに違いない。 「後残っているのは…ええと、『エージェントの心得』と、『HMXシリーズ用プログラムインストーラ』ですね。どうしますか?」 「何でエージェントなんかについてのファイルがあるんだ?」 折原が不思議そうな声を上げる。ふふん、ここで俺様の知識の見せ所だ。FARGOで培ったアングラサイト知識を見せてやろう。 「知らんなら教えてやる。エージェントってのはだな、まあ要するにスパイだ。任務中は常に命の危険に晒されてる。従って一流のエージェントってやつはサバイバル知識も豊富なわけよ。で、これにはその秘伝が書かれてるってことだ」 久々に鼻高々。見ろ、あの郁乃や藤林でさえも感心した目つきじゃないか。やはり俺様は頭脳派だ。これからはポアロ・高槻と名乗ることにしよう。 「…ってことはここにはサバイバル知識や戦闘術が書かれてるのね。参考にはなりそうだけど…今見る必要はないんじゃないかしら。こっちは大人数。敵も迂闊には手を出してこないはずよ」 「そうね…安全そうなところについてから改めてみた方がいいわね。じゃあこれは後回しってことで」 …が、やはり話の主導権は郁乃と藤林の女連中に握られていた。見ろ折原。亭主関白という言葉はもはや死語になりつつあるのだよ。 「オッサン、なんでそんな目でオレを見る」 理解してもらえなかった。これだから優男というやつは…そうか、きっとこいつはMなんだな。そうに違いない。 「…だから何だよオッサン、その哀れむような目は」 オッサンオッサン言ってるのには目をつむっておこう。 一方話の主導権を握っている女連中はホログラフを見ながらきゃあきゃあ言っている。弱者の意見など聞いてもらえそうにない。 「このインストーラってええっと…来栖川エレクトロニクスのメイドロボシリーズにしか使えないんでしょ? ゆめみはどうなんだっけ?」 郁乃の質問に、ゆめみは頭も動かさず答える。 「はい、わたしはコンパニオンロボということになっていますが…基本のOSはHMX系統のものを用いておりますので恐らく、ではありますけど使用できるのではないかと思います。ただ…わたしは試験体ですので最新型のHMXのアップデートに対応しているかは…判断できません」 なるほど、要は最新型のメイドロボをWindows vistaだとすればさしずめゆめみはMeってところだな。 「ってことはインストーラも使えるのね。それじゃ…んふふ、ゆめみさんを改ぞ…じゃなくて、機能拡大してみましょうか?」 藤林がマッドサイエンティストばりの笑みを浮かべる。のんびり屋のゆめみも流石に藤林のただならぬ雰囲気を感じ取ったらしく、カメラアイをあっちこっちに動かしている。 さらばゆめみ。俺様はお前の事を、永遠に記憶の片隅にとどめておくであろう。シャボン玉のように華麗ではかなきロボットよ。 俺様と折原は黙って背を向けた。…まあ実はゆめみの歩行能力にはいささかの不満もあったので機能が良くなることについて異存はない。折原もそれは分かっているようだった。 「ポチッとな」という声が聞こえて(実際起動するのはゆめみだが)、インストールが始まった。 「郁乃ー、どんくらい時間はかかる?」 「んー? ホログラフを見ると…あ、2、3分で終わるって」 何だ、意外と早いじゃないか。これなら退屈せずに済みそうだ。 「ん…うーん…」 などと思っていると、折原の背中から呻き声が。子泣き爺ではない。 「おっ、立田が起きたみたいだ」 折原が起きそうなのを悟って地面にゆっくりと下ろす。ほどなくして七海が目を覚ました。 「あ…あれ、ここはどこ…ですか?」 きょろきょろと周りを見まわしている。そりゃそうか、目覚めたら外の世界だもんな。 「七海、今はわけあって鎌石村まで移動中だ。それから、ゆめみが今…」 俺様がゆめみのことを口にしようとした時。 「更新が完了致しました、通常モードへ復帰します」 やたらと事務的な声が聞こえて、ゆめみのほうも終わったようだった。 「ゆめみさんが、どーしたんですか?」 純粋な疑問の瞳で聞いてくる七海。俺様は冗談半分で、言った。 「パワーアップして帰ってきた」 【時間:2日目・07:30】 【場所:D−8】 ポアロ・高槻 【所持品:日本刀、分厚い小説、ポテト(光一個)、コルトガバメント(装弾数:7/7)予備弾(6)、ほか食料・水以外の支給品一式】 【状況:外回りで鎌石村へ。岸田と主催者を直々にブッ潰す】 小牧郁乃 【所持品:写真集×2、S&W 500マグナム(5/5、予備弾7発)、車椅子、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ】 立田七海 【所持品:フラッシュメモリ、ほか支給品一式】 【状態:目覚めた。支障などはない】 ほしのゆめみ 【所持品:忍者セット(忍者刀・手裏剣・他)、おたま、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ。左腕が動かない。色々パワーアップ】 折原浩平 【所持品1:34徳ナイフ、H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、だんご大家族(残り100人)、日本酒(残り3分の2)】 【所持品2:要塞開錠用IDカード、武器庫用鍵、要塞見取り図、ほか支給品一式】 【状態:全身打撲、打ち身など多数(どちらもそこそこマシに)。両手に怪我(治療済み)。外回りで鎌石村へ】 藤林杏 【所持品1:包丁、辞書×3(国語、和英、英和)、携帯用ガスコンロ、野菜などの食料や調味料、ほか支給品一式】 【所持品2:スコップ、救急箱、食料など家から持ってきたさまざまな品々、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ】 ボタン 【状態:ポテトと遊んでいる】 - BACK