セーラー服の錬金術師




ぼーっと、空を眺めていた。

「・・・・・・」

そうしていたら、あっという間に陽が暮れ夜になり。
眠くなったので、寝た。
一緒にいたはずの森川由綺は、どこかに行ってしまってここには戻ってきていない。
放送のノイズで目が覚めた。姉と妹の死をしった、凄く悲しかった。ついでに由綺も死んでいた。
怒りも込み上がる・・・が。

「・・・・・・」

如何せん、全く登場していなかったので表現する機会がなかった。
何故こんなことになってしまったのだろう、メインルートで早々と退場してしまったからか。
柏木楓は色々考えながら、ポテポテと歩いていた。
そう、これから出番を増やすにはどうすればいいか。
まずは目立つことをしなければいけないだろう。

「・・・・・・」

しかし、良案は出ない。そんなことを考えていた時だった。

「お困りですか〜」
「・・・・・・?」

振り向くと、にこにこと微笑む人の良さそうな少女がいた。
自分とは何とも対照的な存在である。その雰囲気は、妹の初音に近いかもしれない。

「お困りですか〜?」

もう一度問われたので、静かに俯く。

「佐祐理は困っている人の味方ですよ〜。何でもお願い叶えてあげますっ」
「・・・・・・出番」
「はい〜?」
「出番、欲しい」
「はえ〜。佐祐理も欲しいです〜」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

会話終了。

「えっとですね〜。何か個性をお持ちになれば、きっと活躍できますよ〜」
「個性・・・・・・」

そう言われても。
んーと少し考えた後、楓はじっと佐祐理の手にするステッキを見つめた。

「こ、これですか?これは佐祐理の個性ですから差し上げられません〜」
「・・・・・・」
「困りましたね〜。ではこれはいかがでしょう?」

そう言って佐祐理が差し出してきたのは、六角形をした金属の板のようなものであった。

「万が一魔法少女の権利を剥奪された時に使おうと思ったんですけど、あげます。
 これで頑張ってください〜」

受け取り、マジマジと見るが何なのかさっぱり分からない。
質問しようと思い顔を上げるが、既に佐祐理は立ち去っていた。

「・・・・・・」

困る。
指で弾くと、澄んだ音色が鳴る。だがそれだけ。
・・・・・・困る。どうすればいいのだろうか。

「目立ちたい・・・・・・」

どうしようもないので、試しに祈りを捧げてみる。
するとどうだろうか、金属はまるで楓の望みを叶えるかのごとく光り輝き、彼女の体を包んでいった。
温かい湯に浸かっているかのような感覚を覚える楓、瞬間太ももに冷たい物質を押し付けられたような気がして彼女の夢はそこで覚めた。
気持ちよさに閉じていた瞳を開けると、そこは先ほどと変わらない村の中。
しかし、視界にはおかしなものが映っており。

「・・・・・・?」

太ももに、見慣れぬ器具が取り付けられていた。
器具からは四つのナイフが飛び出ている。正直、危ない。
何であろうか・・・・・・指でつついてみると、勢いよくナイフが飛び出してくる。
まるで傘の骨のように繋がったそれは、楓を守るかのように周囲へと広がった。
何が起きているか理解できず硬直してしまう楓の様子を窺うかのように、一つの刃が彼女の前に近づいてくる。
恐る恐る側面に触れると、カクカクと揺れて反応を示す。その様子は、少し微笑ましい。

しかし、そんな穏やかな時間は続かなかった。
人の気配を感じ、楓はすぐに臨戦モードへと構えを変えた。コルト・ディクティブスペシャルを手に、辺りの様子に気を張り巡らせる。
ナイフ等も彼女を守るよう四方に伸びて、場をうかがい始めた。
人影は、前方からやってきた。

「おー怖い怖い。話し合う予知はないってことかな」

・・・・・・佐祐理の時とは違い、楓は最初から敵意を持って目の前の人物に対し対峙していた。
彼女は、雰囲気が違う。佐祐理とは違うその禍々しさに眩暈を起こしそうになる、そのようなプレッシャーを目の前の彼女は放っていた。


「ふーん、いい『個性』持ってるじゃない」
「・・・・・・?」
「ああ、知らないのかな。この世界で生き抜くには『設定』と『情報』、そして『個性』が必要なワケよ。
 こういうのがないと、どんどん消されていっちゃうセチガナイ世の中なのさ」
「・・・・・・」
「ぶっちゃけ、あたしは今ドンジリかもしんねぇんだ、早めに手を打たんと消されるっちゅーことね。
 いい時にいい獲物が見つけられたよ・・・・・・その『個性』、あたしがいただくよ!」

言葉と共に特攻服を靡かせる少女、湯浅皐月は楓に向かって突っ込んでいった。




柏木楓
【時間:2日目午前10時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【持ち物:バルキリースカート(それとなく意思がある)・コルト・ディテクティブスペシャル(弾丸12・内6装填)・支給品一式】
【状況:武装錬金】

湯浅皐月
【時間:2日目午前10時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【所持品:『雌威主統武(メイ=ストーム)』特攻服、ベネリ M3(残弾0)、支給品一式】
【状態:番長】

倉田佐祐理
【時間:2日目午前10時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)移動済み】
【持ち物:マジカルステッキ】
【状況:何でもありな魔法少女】
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