メイドロボとして




ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・ただただ、私は心の中で謝り続けました。
瑠璃子さんを助けられなかったこと、雄二さんを止められなかったこと。
本当は雄二さんの心を、私が受け止めてさしあげなくてはいけなかったんです。
でも・・・・・・私の足は、雄二さん達と一緒に過ごしたあのお家からどんどん離れているんです。

(ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・っ!)

耐えられませんでした、狂ったように瑠璃子さんの亡骸を弄ぶ雄二さんが。
耐えられませんでした、いいように私のことを扱おうとする・・・・・・雄二さんの変容が。
私はメイドロボです、ですから本来はあのような物言いをされたとしてもそれは受け入れるべき区別です。
でも、私は・・・・・・。

「はうっ!!」

足をとられつまづいてしまい、地面に体が投げ出されてしまったとしても。
そこに痛みはありません、私は生き物ではありませんから。
それでも、私を私として大切にしてくださる方々のいる甘い生活に・・・・・・私は、慣れ過ぎてしまったのかもしれません。
おかしいですよね、機械の私が「慣れる」だなんて。
これは有り得ないことだと思います。でも。

「苦しいです・・・・・・ひろゆきさぁん・・・・・・」

お名前を呼んでも、いつも明るく私に接してくださるあの方は現れてはくださいません。
セリオさんもあかりさんも、どなたも・・・・・・ここにはいらっしゃいません。

スカートについた土ぼこりを払い立ち上がると、大分明るくなった空が目に入りました。
きっと普通の方でしたら肌寒さを感じる時間帯でしょう、あの後眠りについた雄二さんはどうしているのでしょうか。
まだ、眠っていらっしゃるでしょうね。目が覚めて、私がいないと分かると・・・・・・どう、されるんでしょうね。

「雄二さん・・・・・・」

肩にかけた支給品の入った鞄が、重く感じます。
これは・・・・・・雄二さんに支給された、鞄でした。
灯台で笑いあった思い出の詰まったものです、中には雄二さんが楽しそうに語っていたボロボロのノートも入っていました。
もうあの時間に戻れないと思うと・・・・・・凄く、つらいです。悲しいです。
そして。そんな感情を持っているように感じるたびに、雄二さんのあの言葉が復唱され。私は。

「雄二さん・・・・・・」

ノートをぎゅっと抱きしめ、あの幸せなやり取りをメモリーから読み込もうとした時でした。
すぐ隣を歩いていた一つのお家から、どなたかのくしゃみが聞こえた気がしたんです。
私の走っていた場所が住宅街ということもあり、近辺で休んでいらっしゃる参加者の方も決して少ないかもしれませんが・・・・・・。

(もしかしたら、浩之さんでしょうか)

人恋しい思いが募り、いてもたってもいられなくなります。
私は意を決してそのお家の入り口まで行き・・・・・・ドアノブを、回しました。鍵はかかっていませんでした。
玄関は、とても静かでした。私が感知したものはお家の側面に当たる所でしたので、急いで向かおうとします。
・・・・・・と、その時何やら床に点々と落ちている液体に気づきました。
それはすぐ近くの部屋の前まで続いていました、色からして血だと思われます。
大変です。もしここにいらっしゃる方が、お怪我をされていてお命の危機に晒されているとしたら。
いてもたってもいられなくなり、私は閉じられた扉を急いで開けました。

「どなたかいらっしゃいますか〜?」

声をかけますが、お返事はありません。
そこはダイニングとお呼びすればいいのでしょうか、お食事に使うと思われる椅子やテーブルなどが置かれたお部屋でした。
奥を覗くとキッチンが見えます。でも人はいらっしゃいません。
床をもう一度見回してますと、部屋の隅に向かって血は垂れていました。
そして、家具などの置かれていないちょっとスペースにて。私は、その方を発見することができました。
男の方でした。壁に寄りかかってお休みなっていらっしゃってます、そっと近づきお顔を覗き込んで見ますが、浩之さんではありませんでした。知らない方です。
・・・・・・血の出所は、この方の太ももからでした。布で巻いていらっしゃいますが、このような乱暴な手当てでばい菌などが入ったら大変です。
お休みになっている所申し訳ないですが、きちんと手当てし直す必要があるでしょう。
何か役に立つものはないかと辺りを調べますとと、救急箱をすぐに発見することができました。
包帯、消毒液。共に揃っています。

(ではすみません、勝手にやらせていただきます・・・・・・)

再び近づきますが、起きられる気配は一向にありません。
余程疲れていらっしゃるのでしょうか。まじまじと、そのお顔を見つめてみます。

(あれ?私、この方とお会いしたことありましたっけ〜・・・・・・)

それは、ちょっとした違和感でした。
お知り合いではないはずですか・・・・・・ちょっと気になりましたので、メモリーを呼び起こしてみます。
・・・・・・答えは、すぐに分かりました。この方は昼間私達を襲ったあの男の人でした。




マルチ
【時間:2日目午前5時45頃】
【場所:I−7・民家】
【所持品:救急箱・死神のノート・支給品一式】
【状態:巳間を見つける】

巳間良祐
【時間:2日目午前5時45頃】
【場所:I−7・民家】
【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)・予備弾(30×2)・支給品一式x3(自身・草壁優季・ユンナ)】
【所持品2:スタングレネード(1/3)ベネリM3 残弾数(1/7)】
【状態:寝てる・右足負傷】
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