―――時は12月31日、23時50分。 北川、美凪、真希ら凸凹□トリオは一緒にコタツに入りながら日付が変わるのを待っていた。 「しかし今年も寒いな……。このままじゃ年が明けても寝正月になっちまいそうだ」 北川が蜜柑を食べながらぼやく。 彼はだらしなく上半身をコタツの上に預けており、やる気の無い事が容易に見て取れる。 だが真希はそんな彼に容赦無く言い放つ。 「駄目よ、明日は初詣に行くんだから」 「誰が?」 「あたし達がよ」 「何処に?」 「神社よ」 「何日に?」 「明日よ」 「誰が?」 「…………」 真希はこのやり取りの無意味さを悟り、北川の耳を掴んで引っ張った。 そのまま指に力を加え、捻るような動きを混ぜる。 「あだだだだっ!」 「そういう事だから私と美凪のエスコートをよろしく頼むわね、北川君?」 「いててっ!分かった、分かったって!」 「よろしい」 真希はパッと手を離した。 すると、とんとんと肩を美凪に突かれた。 「どうしたの?」 「……見てください」 美凪が指で示してる方向を見ると、テレビの時計は丁度0:00を示していた。 北川もすぐそれに気付く。 「新年になったな、真希、美凪」 「そうね、潤」 「じゃ、始めるか」 三人はコタツから出ると横一列に並んで整列するように立った。 北川がすう、と深呼吸をする。 だが、彼が何かを話す前に美凪がお米券を手に喋りだした。 「……新年おめでたいで賞、しんて……」 「わー、待て美凪!それは三人一緒にだ!」 「……残念」 授賞式を妨げられた美凪は一瞬シュンとしたが、すぐにいつもの微笑みを湛えた顔に戻った。 改めて北川は二人を促し、三人は揃って深呼吸をした。 「それじゃいくぞ…………明けまして」 「「「おめでと〜ございますっ!」」」 彼らは三人一緒に大きな声でそう言って深々とお辞儀をした。 そのままの態勢で10秒程固まっていたが、やがて北川が姿勢を戻して動き出した。 「ふ〜、終わった終わった。さて、またコタツに戻って冬の風物詩・蜜柑を堪能するとしますか」 北川はそう言ってコタツに戻ろうとするが、その肩をがしっと真希に掴まれる。 「ちょっと待ちなさいよ。まだコメント発表が残ってるでしょ?」 「ああ、そう言えばそうだったな……」 「そうです。それじゃまずは私がT槻(匿名希望)さんからのコメントをお伝えしますね」 美凪は紙を取り出して、そこに書かれてある内容を読み出した。 「『参ったぁっ!俺は参ったぁぁっっ!なぜなら人気No1の座を得たからだぁぁぁっ!ハハハハ、我が世の春が来たァ! フハハハハハ、お前らもっと俺を褒め称え……』……あら?」 「ん、どうしたんだ美凪?」 「字はここで途切れてます……そしてこれまでとは違う女の子らしい字で裏に何か書かれていますね」 「どういう事かしら……読んでみてよ」 「『騒がせて悪かったわね。調子に乗ってる高槻には私、郁乃がちゃんとお仕置きしておいたわ。 ……ふ、ふんだっ!今年も私達をよろしくお願いだなんて、思ってないんだからねっ!』……以上です」 読み終えると美凪は紙をポケットの中へと戻した。 北川と真希は苦笑いを浮かべている。 「さ、最初から随分と変わった奴らだな……」 「そ、そうね……。ま、気を取り直して次行きましょ。今度はあたしの番ね。えーと……、柳川祐也さんって人からのコメントみたいね」 真希は紙を取り出し、そこに書かれてある内容を読み出した。 「『ちっ、新年の挨拶などと下らん。作者もこんな物を書いてる暇があれば本編の一つでも書けば良かろうにな。 こんな茶番に付き合う気は無い、俺のコメントは以上だ。……と思ったんだが、後ろで倉田がうるさいから代わりに書かせるか……』」 「……変わった奴ばっかだな」 北川がぼそっと呟いたが、真希は構うことなく紙に書かれている内容を読み続ける。 「『あはは〜、倉田佐祐理です。どうもすいません……普段は無愛想ですけど、本当は柳川さんは良い人なんですっ! ですから出来れば今年も応援してあげてくださいね』……以上よ。ったく、レディに迷惑掛けてる奴が多いみたいね……」 真希は溜息を吐きながら紙をポケットに戻した。 「そうだな。このジャパニーズジェントルマン・北川潤様を見習えってんだ」 「もうつまらないボケは良いからさっさと最後のコメント読んじゃって……。変なコメントばっかで、ツッコミを入れる元気も無くなったわ」 「あ、ああ、そうだな……。えーと……、橘敬介って人のコメントだな」 北川は紙を取り出し、そこに書かれてある内容を読み出した。 「『やあみんな、新年おめでとう。去年の僕は厄災続きだったんだけど……今年は少しはマシになったら良いな、ハハハ……。 今年も至らないなりに頑張るから、どうかよろしくね』……以上だな。この人は割と普通そうだ」 「……橘敬介さんには不幸で賞として、お米券100枚を進呈します。ぱちぱちぱち……」 どこにこれだけの量を仕舞っていたのだろうか、美凪は数え切れない程大量のお米券を取り出していた。 北川にとってそれはもう慣れっこの光景だったので特に気にせず、彼は終幕へと取り掛かる。 「よし、それじゃ最後に三人一緒に締めようぜ」 「そうね」 「そうですね」 「「「せーの………」」」 三人はまた横一列に整列し、大きく息を吸った。 「「「今年も葉鍵ロワイアル3をよろしくお願いします!」」」 北川潤 【持ち物:みかん10個、Mr死亡フラグのコメント付き用紙】 【状況:コタツでみかんを食べたい】 広瀬真希 【持ち物:柳川と佐祐理のコメント付き用紙】 【状況:疲労、呆れ】 遠野美凪 【持ち物:お米券数百枚、T槻と郁乃のコメント付き用紙】 【状況:また出番が来て嬉しい】 【備考:つい調子に乗ってやった、今は反省している】 - BACK