三人の心は一つだった…。




三人は民家に帰ってからも無言だった…。
ベッドの上の少女…美凪は顔に付いた血を綺麗に拭き取られ、偶然タンスの中にあった新品の割烹着を身に着けられて寝かされていた
北川と真希は傷の手当てもせずに肩を寄せ合い座っていた、ベッドの上の少女を見つめながら…。
その時は部屋の中の時間が止まってるような気がした。
「少しだけ待っててね…美凪」
真希がそう言い残すと、二人は部屋から立ち去った。

美凪が寝かされた部屋の隣の居間で二人の傷の手当てが始まった
当初「自分の傷は自分でする…」と言った北川だったが、二人とも背中を撃たれていた為
「碌な手当てが出来ないでしょ…」と真希が無理矢理に北川の服を脱がせ手当てを始めた
先ずは北川、そして真希の順で手当てが始められた
真希は北川の身体の傷痕を見て絶句した、背中の傷は勿論のこと手当て済みだが昨日腹に受けた二発の弾丸の痕を…
防弾チョッキ越しでもこんなになるとは思わなかったからだ。
真希は何も言わず北川の傷の治療をした…そして真希の番になった


「……アンタ…よく昨日からこんなの撃たれて動きまわれたわね。」
居間の座布団の上に裸でうつ伏せに寝かされた真希がそう話を切り出した…。
真希の小さい背中はチョッキ越しに撃たれていたが夥しいほどの弾痕の痕を残し、皮膚は円状に剥がれ血が滲み出ていた
ホテルから拝借しておいた救急箱の中から消毒液とガーゼを取り出し手当てをする北川
「そうだな…。」
素っ気無い返事をしながら手当てを続ける北川…あまり話はしたくないらしい、しかし真希は気にせず話し続ける…覚悟を決めているからだ
「アンタはあれだったわ、一番しなければならないことをよく解ってた…。」
これまでの事を振り合えるように話す真希、消毒液が染みるのか時折顔を歪ませている。
「今回もそうだった…アンタも美凪も…それに引き換えあたしは何も出来なかったわ。」
淡々とした口調で話す真希…弾痕の治療を終えたのか座るように指示する北川、
真希の胸と腹に綿とサラシを巻く北川、…治療のガーゼが取れないようにの為であり
申し分程度の防弾衝撃対策、斬撃での内臓が飛び出ないようにだったりする、決して二の鉄を踏まない、
そして北川は意を決して口を開ける
「………お前達に…危険なことなんかさせられるかよ!」

嗚咽を交えながら、やっとまともな口を開く北川、真希の身体にサラシを巻くのを一時的に止める
「…じゃあアンタは危ないことは自分で全部やるとでもいうの!」
北川の洩らした言葉が癪に障ったのか、身体を振り返らせ瞳いっぱいに涙を溜めて北川に詰め寄り押し倒しながら怒鳴る真希
昨晩のホテル跡の食堂で北川を庇った時と同じ体勢を取って…。
「…美凪はねぇ、あたしと違ってちゃんと考えて行動してたわ、アンタと出会う前からね!!」
「今回だって美凪は美凪なりの判断でやったのよ、それを後からあんたがつべこべ言って、あの子が聞いたらどう思うのよ!!」
泣きながら北川を叱咤する真希、そのまま北川の胸に顔をうずめる…。
「…ああ…そう……だな……真希…。」
そっと真希を抱きしめ涙を流す北川
傷の手当てを終えたままの北川と真希は身を寄せ合い唯々泣いていた………。

取り残された二人は一通り泣いた後、二人の気持ちは一つになっていた。


二人は荷物の整理をして装備を整える、
北川の荷物にはショットガンと接近戦用のスコップを真希の荷物には美凪の包丁と前回参加者が置いていった拳銃を持って
そして美凪からもらったお揃いの割烹着と頭巾を着込んでいた、
真希は美凪の防弾性割烹着も一緒に二重に着込む…もしあの子に…みちるに出会えたのなら渡すためだ。

一通りの準備が出来次第、北川と真希は意を決してロワちゃんねるのスレッドを見ていた
耕一と呼ばれた男と千鶴と呼ばれた女の情報が欲しかったからだ…
連中がもっぱら口論していたときに途切れ途切れ聞こえてきた
【ロワちゃんねる】【自作自演】【氷川村の宮沢有紀寧】【リモコン爆弾】【首輪の爆破まで48時間】【岡崎朋也】【人質の初音】
【鎌石村】の単語の数々
耕一と呼ばれた男がマーダーの千鶴を説得しようと何度も説明を繰り返していたので断片的に憶えていた…。
そして一つのスレッドを発見する、
【自分の安否を報告するスレッド】…何と無く理解できた…そしてどうでもよかった…美凪が如何なるわけでもないからだ…。
ノートパソコンの電源を落とし、北川と真希は最後に美凪の部屋に行く


綺麗な顔をしてベッドの上で安らかな眠りに付く美凪、今にもひょっこりと起きて来そうだった
エディとこのみを弔ったのと同じく、庭で摘んだ花を美凪の傍らに添える二人。
「オレ達はオレ達にしか出来ないことをするよ……美凪」
「美凪の作ってくれたハンバーグの味はちゃんと覚えているわ……行って来ます」
そう言って半泣きの真希は永遠に眠ったままの美凪の冷たい頬を撫でた後、二人は部屋を出て行く。

「…覚悟はいいか?………いくぞ真希。」
「どこまでもついていくわ………潤」
北川はそう言って民家を出ていく、傍らには自分で荷物を持った真希が北川と肩を並べて走っていたのだった。
二人のポケットにはお米券が…そして真希の首には美凪のロザリオが提げられていた。

北川潤、広瀬真希、遠野美凪の三人は唯の高校生だった、
首輪を解除できる技術も持ち合わせていなかった、だからこそ自分達の出切る事をしようとした
悲しいときに涙を無理に止めるような感情を持ち合わせてはいなかった、だからこそ笑えるときに笑う感情を持ち合わせていた
残された二人の心は曇ったまま、傷ついた心と身体で前へと進む
自分たちにできること…現在生きてるのかどうかも分からないみちるの情報を求めて、残された二人は北へと走り出した。

三人の心は一つだった…。




北川潤
【時間:2日目11:00頃】
【場所:G−2民家】
【持ち物@:SPASショットガン8/8発+予備8発+スラッグ弾8発+3インチマグナム弾4発、支給品】
【持ち物A:スコップ、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有)、ノートパソコン お米券 おにぎり1食分】
【状況:美凪を看取る、チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:自分たちにしか出切ないことをする(みちるの情報)】

広瀬真希
【時間:2日目11:00頃】
【場所:G−2民家】
【持ち物@:ワルサーP38アンクルモデル8/8+予備マガジン×2、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有)×2、支給品、携帯電話】
【持ち物A:ハリセン、美凪のロザリオ、包丁、コミパのメモとハッキング用CD、救急箱、ドリンク剤×4 お米券】
【状況:美凪を看取る、チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:同上】

遠野美凪
【持ち物:民家にあった割烹着&頭巾、お米券数十枚】
【状況:永眠 G-2民家のベッドで北川と真希に弔われる】

【備考】
今現在リモコン爆弾の解除方法の情報は北川と真希しか知らない
ドリンク剤×2及びおにぎり×2を消費

その他の物はG-2民家の中

ホテルにあった様々なもの(剃刀、タオル、食器、調味料 その他諸々) ワイン&キャビア、
同人誌の数々、スコップ はG-2民家の中
-


BACK