YO! YO! パソコンの画面の前のよい子、悪い子のみんな。おはこんばんちわ。(死語? ほっとけ!) いつの間にかMr.ハードボイルドと呼ばれるまで(え? まだそこまでは呼ばれてない? 別にいいじゃねーか)このキャラが板についてきたと思ったら、 前回ランクが「漢」にアップしたんだかダウンしたか判らなくてちょっと困ってる高槻お兄さんだよー。 いつものノリならこのまま美少女ゲーみたいに俺様の一人称視点で話が進めたいだが、残念ながら今回は以降の文は普通の小説っぽく話が進んじまうんだなあこれが。一応メインキャラは俺様だけどよ。 たまにはいいだろそういうのも? 原点回帰みたいで新鮮な感じ……しないか? 駄目か? ……あーもう。とにかく本編開始だ。さっさと次に行けよやー!! 「はい。終わったわよ」 「おう。すまねえな」 杏は浩平の両手に包帯を巻き終わると救急箱をデイパックにしまった。 「――しっかし…沢渡の置き土産がこんなところで役に立つとはな」 高槻は浩平に再び七海を背負わせると現在は杏の手にある沢渡真琴のデイパックに目を向けた。 以前述べたとおりこの中には今杏がしまった救急箱や先ほど真琴の墓を作る際に使用したスコップなど様々な日用品が入っている。 今は亡き真琴曰く「持って行けば絶対に役に立つわ!」とのことだったが、その「使えそう」というのが真琴基準であるため、使えそうなものから見るからに絶対使えそうもないものまで本当に様々な種類の品が中にはぶちこんである。 「そういえば聞いていませんでしたが、何で久寿川さんとは別行動を?」 まだ聞いていなかった疑問をゆめみが高槻に投げかけた。 「ああ。実はあれから俺たちはポテトの鼻を頼りに鎌石小中学校まで行ったんだがな………」 高槻がそこまで言ったところで2回目の定期放送が流れ出した。 『――みなさん……聞こえているでしょうか。 これから第2回放送を始めます。辛いでしょうがどうか落ち着いてよく聞いてください』 「!?」 前にも一度聞いた青年の声が高槻たちの耳に入る。 しかし、その青年の声は12時間前に聞いたときよりも活気がなくなっているように思えた。 (――もしかして、この放送をしている奴も俺たちみたいに主催者に強制されてやらされているのか?) 放送を聞きながら高槻はそう思った。 「くそっ…まさかエディさんが……氷上や雪見先輩まで………」 放送が終わると浩平は手当てを終えたばかりの右手でどんと軽く壁を叩いた。 「梶原さんって人の名前もあったわね……」 「神尾晴子って確か観鈴の……それに春原芽衣と古河早苗って…もしかして………」 「久寿川たちや沢渡の探していた祐一って奴はまだ一応無事みたいだな」 「ええ…」 「しかしマズイなこれは……」 高槻は放送の最後に(どういうわけか)あの声を聞くだけで腹立たしいクソウサギが言った言葉を思い出した。 「『優勝者にはどのような願いも叶えられる』。『大切な奴が死んでしまってもそれで生き返らせれば問題ない』……だっけ?」 「ああ。それに、下手をしたらそれに釣られて今までこのゲームに乗っていなかった奴までゲームに乗っちまう可能性がある。 『ゲームに乗って他の参加者を皆殺しにしても、自分が優勝してゲームが終わった後に全員生き返らせれば問題ない』なんて馬鹿なこと考えてな」 「少なくとも1人はそういうやつがいるだろうな」 「―――まあ、今は考えてばかりいても仕方がねえ。まずは鎌石村に行って久寿川たちと合流するぞ」 そう言って高槻は自分の荷物を手に取ると無学寺を後にする。 「あっ! 待ちなさいよ! まだなんでささらと別行動になったのか理由を聞いてないわよ!」 「それは歩きながら説明してやるよ。いいから早く来い。置いてくぞ」 ぶっきらぼうにそう言って先を行く高槻の背中にぎゃーぎゃーと文句を言う郁乃をなだめながら浩平たちも高槻の後に続いた。 「………とまあそういうこった」 道中を歩きながら高槻は鎌石小中学校で起きた出来事を一通り郁乃たちに説明した。 「つまり、鎌石村に行ってささらたちと合流したらまずはその朝霧って人を探すのね」 「ああ。一応な。本当なら宮内の仇を討ちたいとこだが、久寿川たちがそれだけは止めてくれってことでな。 ……そういや、折原に藤林だったか? お前らは探している奴はいないのか?」 「そうだな。俺は……エディさんが探していた人も含めると、 川名みさき、上月澪、里村茜、住井護、長森瑞佳、七瀬彰、七瀬留美、藤井冬弥、広瀬真希、柚木詩子。 それとさっき高槻が言っていた河野貴明に那須宗一、姫百合珊瑚、姫百合瑠璃、湯浅皐月、リサ=ヴィクセン……だな」 「そりゃまた随分多いな」 やれやれだぜ、と呟くと高槻は郁乃から渡された参加者名簿にペンでチェックを入れていく。 「河野って奴を除いてエディさんが探している人たちは判らねえけど、俺の探している連中……特に住井と長森とみさき先輩と七瀬…留美のほうな。この3人は間違いなく信用していい」 「確証はあんのか?」 「七瀬はここに来る前まで俺と一緒に仲間を探していたから問題ない。長森とみさき先輩は性格からしてゲームに乗るような連中じゃない。住井は……馬鹿だけどこういうことには絶対乗るような奴じゃない」 「おいおい…最初の留美って奴はともかく、2人以降はまともな確証になってないじゃねえか………」 「安心しろ。俺のカンは結構当たるぞ」 「そう言われると逆に凄く不安なんだけど……」 自信に満ちた浩平の発言に杏と郁乃…そしてさすがの高槻も呆れるしかなかった。 「あー。気を取り直して、次はあたしの探している人ね。 あたしが探しているのは一ノ瀬ことみ、岡崎朋也、坂上智代、春原陽平、古河渚……そして妹の藤林椋の5人よ」 「一ノ瀬に岡崎に坂上………そして藤林椋と……」 「あと。さっき言ってた祐一って人――多分相沢祐一だと思うけど、彼とは一度鎌石村の消防分署で会ったわ」 「本当か?」 「ええ。今はもう鎌石村にいるかどうかは判らないけど……それと、祐一と一緒にいた子で神尾観鈴。あと私は直接話しちゃいないんだけど緒方英二と向坂環って人。彼らは全員信頼できるわ」 「なるほど……少なくともゲームに乗るなんてことはないんだな?」 「ええ……観鈴が少し心配だけど………」 「神尾晴子……だっけ?」 郁乃が先ほどの放送で上がった名前を口にする。 杏もだまってうんと頷いた。 「あー。そういう辛気臭くなる話はやめろ。ただでさえこっちはテンション高くねえんだからよ」 これ以上士気が下がらないように高槻が話を強制的に終了させた。 「さて、お前たち」 突然高槻が手にしているものを参加者名簿から地図に変えて郁乃たちの方に振り返った。 「なに?」 「なんだ?」 「どうしたんです?」 「どうかしたの?」 郁乃たちはそろって高槻に声をかける。 すると高槻は地図を広げると彼女たちにこれから先の道のりについての説明を始めた。 「既にご存知の通りだが今俺たちは鎌石村に向かっている最中だ。そして、地図を見れば判るとおりここから鎌石村に行くには2種類のルートがある。 1つは東崎トンネルを通って行くルート。もう1つは山道から観音堂方面を経由して行くルートだ。 そのことなんだが…俺様の意見としては後者のルートの方で行った方が安全だと思うわけよ」 高槻が地図に載っている海沿いの山道を指でなぞっていく。 「なんでさ?」 「さっき俺様と今は亡き沢渡は行きも帰りもこっちの東崎トンネルのルートを通って来たんだけどよ、ここがちょっとワケありな場所でな……」 「ワケあり?」 「ああ。このトンネル軽く1キロくらいは距離があるんだよ。しかも、どういうわけかこのトンネル中に照明が、まったくないときたもんだ」 「つまり中は真っ暗闇ってこと?」 「ザッツライトだ藤林! するとどういうことかもう判るよな? つまりはここを通るときは壁伝いでなきゃ恐ろしくて行動できねえんだなこれが!」 「ああ…! そうそう思い出した。私も七海とここを一度通ったけど、中本当に暗いのよここ」 郁乃は昨日七海と無学寺に行くためにこのトンネルを通ったときのことを思い出した。 確かに高槻の言うとおり、あのトンネルの中は昼間でも本当に暗かった。しかも、その暗さは酷いと自身の足元すら判らなくなるほどであった。 「おお。そうなのか我が愛しのマイスイートハニー郁未!? これはやはり運命ってやつなのかねえ……」 属にRRと呼ばれる竹林風台詞回しで高槻が郁乃に言う。ちなみに今言った『我が愛しのマイスイートハニー』という言葉は嘘でもなければ本心でもない。ただノリで言っただけである。 「馬鹿丸出しな冗談言ってないでさっさと話を続けなさい」 「なんだよノリが悪い奴だな……とにかく、俺が言いたかったのはこのトンネルを通るのは危険すぎるってことだ。 もしここん中でマーダーと接触でもしてみろ。下手したらいつの間にか全員ズガンされちまう」 「確かに…それに、もしかしたらそれを狙ってトンネルの中で待ち伏せしている奴がいるかもしれないしな」 「でも、マーダーだってわざわざ自らを危険にさらすまでそんな所で待ち伏せすると思う?」 「そうですね。下手をしたら自分がやられてしまうかもしれないのに……」 「いや……少なくともあの男は………平気でやるでしょうね」 郁乃のその一言で高槻と杏以外(すなわち浩平とゆめみ)ははっとした顔をする。 「―――さっきの男……岸田洋一だな?」 高槻の問いに郁乃は黙って頷く。 「キシダヨウイチ? それがあの男の名前か?」 「ああ」 「ちょっと待ってよ! 岸田なんて人は参加者名簿に載っていなかったわよ!?」 杏が高槻と郁乃に問い返す。が、それにはゆめみが答えた。 「でも、私やポテトさんやボタンさんのこともありますし………」 「あっ…そっか………つまりその岸田って男は主催者がゲーム進行を進めるために用意し送り込んだマーダーってことなのね?」 「いや。その可能性は低いだろうな」 「なんでよ?」 「あの男は首輪をしちゃいなかった」 「えっ?」 「俺たちやゆめみにだって付けられているこの首輪をあの男は付けてはいなかったんだよ。おそらく………」 「―――ゲームに乱入したっていうのか?」 「多分な。あくまで可能性にすぎないが、もしかしたら島のどこかに奴の船か何かが隠されているかもしれねえ」 「じゃあ上手くいけば……」 「ああ。このゲームを脱出する糸口が掴めるかもしれねえ」 高槻は一度にやりと笑った。 「さて……この話はここで一旦打ち切りだ。本題に戻るぞ」 全員うんと頷く。 「というわけだから俺たちは山道から鎌石村に向かうべきだと思う。ちょっと遠回りになるかもしれないし山道だからきついかもしれねえが………異論は無いか?」 「『急がば回れ』って言うし……いいんじゃないの?」 「ああ。異論は無いな」 「私もありません」 「あたしもないわ」 「ぴこっ」 「ぷぴっ」 「よし。満場一致で決定だな。じゃあ気を取り直して行くとするか」 そう言って地図をしまうと、高槻一行は再び歩き出した。 (やれやれ……何度も思うが本当に俺はどうなっちまったんだろうな?) 空を見上げながら高槻はふと思った。 (こんな連中なんか頬っておけばいいと思っていたはずなんだがなあ………なぜか知らねえが放っておけねえんだよなあ危なっかしくてよ) (―――それとあの岸田って野郎だ。同族嫌悪というワケじゃねーというと嘘になるかもしれねえが俺はあの野郎が許せねえ……!) ふと脳裏に真琴が岸田に刺された光景がフラッシュバックする。 (………腸が煮えくり返ってしょうがねえ…!) その光景や岸田の顔を思い出すたび内から怒りが込み上げてきた。 (あの野郎は絶対あの程度で引き下がるような奴じゃねえ……間違いなくこれから先も奴は他の参加者を殺したり犯そうと暗躍するはずだ……… そして……絶対に俺やこいつらの前に再び現れる………!) 高槻はちらりと目線を郁乃たちに向けた。 (―――ったく。こんな絶望的な状況の中でも僅かな希望の光を求め続ける……本当に馬鹿な連中だぜ。 だが、それに少なからず影響を受けてきている俺様……か。はっ。我ながら馬鹿馬鹿しい光景だぜ。 ――――だけど、結構悪くねーじゃないの、そーいうのよ………) 高槻はふっと笑った。 それに気が付いた浩平たちが高槻に尋ねる。 「なんだ高槻? 急に笑ったりして」 「ほっときなさい。どーせまたやらしい妄想でも抱いていたんでしょ?」 「おいコラ。勝手に決め付けんな。俺様だって時には憂鬱に浸りたいときがあんだよ!」 (―――まったく…本当にしょうがねえガキどもだぜ。しょうがねえ…もうしばらくこいつらの面倒を見てやるか……) 高槻はそう決断するともう一度ふっと笑った。 (そして待ってやがれ岸田洋一…そして主催者ども……! テメーらはこの高槻様が直々にブッ潰す…!) ―――高槻自信はまだ気づいていなかったが、彼の心には確実に『正義』と属に呼ばれるものが生まれていた。 【時間:2日目・07:00】 【場所:E−8】 正義の波動に目覚めはじめた高槻お兄さん 【所持品:日本刀、分厚い小説、ポテト(光一個)、コルトガバメント(装弾数:7/7)予備弾(6)、ほか食料・水以外の支給品一式】 【状況:外回りで鎌石村へ。岸田と主催者を直々にブッ潰すことを決意】 小牧郁乃 【所持品:写真集×2、S&W 500マグナム(5/5、予備弾7発)、車椅子、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ】 立田七海 【所持品:フラッシュメモリ、ほか支給品一式】 【状態:気絶(睡眠)中。今は浩平の背中に】 ほしのゆめみ 【所持品:忍者セット(忍者刀・手裏剣・他)、おたま、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ。左腕が動かない】 折原浩平 【所持品1:34徳ナイフ、H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、だんご大家族(残り100人)、日本酒(残り3分の2)】 【所持品2:要塞開錠用IDカード、武器庫用鍵、要塞見取り図、ほか支給品一式】 【状態:全身打撲、打ち身など多数。両手に怪我(治療済み)。外回りで鎌石村へ】 藤林杏 【所持品1:包丁、辞書×3(国語、和英、英和)、携帯用ガスコンロ、野菜などの食料や調味料、ほか支給品一式】 【所持品2:スコップ、救急箱、食料など家から持ってきたさまざまな品々、ほか支給品一式】 【状態:外回りで鎌石村へ】 ボタン 【状態:外回りで鎌石村へ】 - BACK