「――気が付いたか?」 貴明が目を開けると目の前にはやれやれといった表情で、だが安堵の笑みを漏らした聖の姿があった。 横には心配そうに見つめることみと先ほどまで恐怖に覚えていたとは思えないほど安らかに眠る名雪の姿もあった。 「――っ!! あいつは?」 気絶する前のことを急激に思い出し、冬弥の姿を探そうと身体を無理矢理起こしたものの身体を激痛が襲う。 よろける貴明をたしなめるように聖は言う。 「大丈夫だ、なんとか追い払ったよ。それよりあまり無理はしないほうが良い。軽い怪我でもないのだからな」 うんうんと頷きながらことみは貴明の身体をさすっている。 「――手当て……してくれたんですね」 身体に巻かれた包帯に触れながら聖に対してペコリと頭を下げた。 聖ははにかむように笑いながら、そして一転真面目な表情を作り貴明の顔に向かい合う。 「出来る限りの事をしたつもりだが、正直応急処置でしかない。無理をするとすぐ傷は開くぞ。 安静にしていることをお勧めしたいが……ここではそう言うわけにもいかないだろうな」 「ええ……人を待たせているからすぐにでも戻らないと」 置いてくる形になったささらとマナのことが気にかかっていた。 名雪のほうをチラリと見た貴明に聖は小さく溜め息をつくと 「――止めるわけにもいかんだろうな」 言いながら聖は持っていた貴明の所持品を手渡す。 「この娘のことは私達に任せたまえ、君にはやるべき事があるのだろう?」 聖の言葉に貴明は真摯に頷くと、痛む身体を押さえよろめきながらも立ち上がり自身のバックを手に持った。 「すいません、お世話になりました……どうかお気をつけて」 「ああ、君もな」 「ばいばいなの」 また一つ貴明は小さく会釈をすると観音堂の西の林の中へと真っ直ぐ鎌石村の方角に走って行った。 「――さてと、この娘のことも気にかかるがそろそろ出発しようか。 三時間ほどここで足止めを食ってしまったわけだしね」 聖は眠り続ける名雪を起こさぬようにそっと背中におぶせる、自身のバックに手を伸ばす――が 「先生重くないの? これぐらい私が持つの」 庇うようにことみが二人分のバックを抱え上げる。 「大丈夫か?」 ことみは少しフラフラとしながらも、聖の問いに微笑みながらガッツポーズで返す。 そんなことみの姿を微笑ましく眺めながら、聖は笑って言った。 「それでは行こうか、とりあえずは氷川村だな――ん?」 足並みをそろえて聖とことみが歩き出そうとした直後、ガサリと言う音が聞こえた。 「また会いましたね――霧島聖さん」 慌てて音のした方に振り返ると先ほど自分が手当てした女性――篠塚弥生の姿があった。 【時間:2日目10:45】 【場所:C-6(観音堂正面)】 霧島聖 【所持品1:ベアークロー、FN P90(4/50)】 【状態:左肩・左腕負傷(応急処置および治療済み)。名雪を背負っている】 一ノ瀬ことみ 【所持品:暗殺用十徳ナイフ、青酸カリ入り青いマニキュア、携帯電話(GPSレーダー・MP3再生機能・時限爆弾機能(爆破機能1時間後に爆発)付き)他支給品一式(ことみのメモ付き地図入り)】 【状態:聖の支給品一式(治療用の道具一式(残り半分くらい)と名雪の持ち物を所持】 水瀬名雪 【所持品:なし】 【状態:気絶中。精神状況不明】 篠塚弥生 【所持品:包丁(隠している)】 【状態:マーダー・脇腹に怪我(治療済み)】 【時間:2日目10:40】 【場所:C-6(観音堂西の林道から鎌石村へ)】 河野貴明 【所持品:Remington M870(2/4)、予備弾(12番ゲージ)x24、SIG・P232(0/7)、仕込み鉄扇、支給品一式】 【状態:左脇腹・左肩・右腕負傷(応急処置および治療済み)。左腕刺し傷・右足に掠り傷(どちらも治療済み)、ささらたちのもとへ】 【備考】 ・弥生の支給品一式(救急箱、水と食料少々)は車の後部座席に置いたまま ・車はC-6の脇道に一時放置 ・冬弥がどこにいるかは後続任せ - BACK