「で、学校についたわけだが」 「早いなっ?!」 「あら、あれから一時間くらい経ってるし、別にそんな早い訳でもないわよ?」 「そういう意味じゃなくってだな・・・」 というわけで、鎌石小中学校についた相沢祐一、藤林杏、神尾観鈴、柊勝平の四人組。 辺りは真っ暗で見通しは非常に悪い、夜風も冷たくさながら肝試しのような雰囲気。 ひっそりとそびえ立つ校舎の不気味さに、思わず観鈴は自分の肩を抱き小さく息を呑んだ。 「おいおい、こんな所で漏らすなよ?」 「どこ見ていってんだ、あんたはっ」 「み、みすずちんぴんち」 「ちょ、お前はお前で漏らすなよっ?!」 「で、どうする?さすがにこの中、四人で歩き回ったら夜が明けそうだけど」 建物自体は小・中が一緒になっている割にはそこまで大きくはない。 だが、一々部屋を虱潰しに探すとしたら、やはり時間の浪費は免れないであろう。 二手に別れそれぞれ逆方向から探索をするという案を提唱する杏、効率をはかどらせるならこの方が勿論いいだろう だが、祐一はそれに対し難色を隠せないでいた。 「万が一敵に会った場合とかが危ないな。俺はともかく、装備面では正直不安が残るからな・・・俺はともかく」 「ちょ、ボクは?!」 「病人は黙っとれ」 「あんた嫌なヤツだな・・・」 「あら、私は平気よ?いざと言う時は、これでバッキューンなんだからっ」 「きょ、杏さん?!いつの間に拳銃をっ」 「ん?護身用に、緒方さんから借りたのよ」 そういう彼女の手には、黒光りする凶器が握らされていた。 「へー、これ何て言う銃なんだ?」 「不明よ」 「は?」 「だから、分からないの」 「どういうことだよ?!見て分かんないのかっ」 「ある時はマグナムのような過激なものに、またある時はコンパクトサイズなデリンジャーで敵を不意打ちに・・・。 自由に選択できるって素晴らしいな」 「何が何だか!!」 「よし、とにかく藤林が前線にいけるなら話は別だ。どういう組み合わせにするか?」 「頼りになる私と頼りになる相沢君は別れた方がいいわね」 「そうだな、その通りだ」 「あんた達イヤなヤツだな?!」 「わ、私、勝平さんと行きたいな!」 その時、今まで後ろで小さくなっていた観鈴が声を張り上げた。 右手をぴっと上げ自己主張する彼女の姿に、一同固まる。 彼女がこういう形で意見を言うのは初めてであって、誰もが驚きを隠せなかった。 「却下」 だが、結局は一刀両断される。 「が、がお・・・」 「おいおい、可哀想だろ。懐かれてんのに無下にするなよ」 「ガオ・・・」 「ほら、神尾さん小さくなっちゃったじゃない」 「30センチくらいに」 「それ何て南君の恋人?!」 正直、何故このような形で観鈴が自分に付き纏おうとするか勝平には分からなかった。 ちらっと目線を送ると、彼女のしょんぼりとした様子が目に入る。 ・・・消防分署にいた頃からやけに馴れ馴れしくはあったが、これが彼女の性分なんであろうか。 このような形で年下の女の子に甘えられる経験のない勝平にとっては、あまりに未知のことで戸惑うしかなかった。 「ほら泣くな神尾、俺と行こう。せっかくここまで来たんだし、ここはいっちょフラグでも立ててみようぜ」 「じゃあ、私は勝平さんとフラグでも立ててみちゃう?きゃっ!椋に怒られちゃうわね☆」 「あんた達は平和だな・・・」 「何だ柊、俺とカプりたいのか。それなら早く言えよ・・・」 「きゃっ!スラッシュでクラスBなム−ドに杏ちゃんドキドキっ」 「あんた達マイペースだな?!ああもう、カプらねーよその手をどけろっ!!」 だが勝平も、ここから先は彼も気を引き締めていかなければならない。 ・・・捕らわれた少女など勝平にとってはどうでもよいことである、彼にとっての敵は今目の前にいるのだから。 「ほら、こういう時は目を閉じるんだぜ?あんまり野暮なこと言わせんなよ・・・」 「おいっ、いい感じのナレーション入ってんだから邪魔すんなよ!!」 「きゃっ!」 「どきどき・・・」 「お前等も止めろ!!!」 そんな平和な様子の一行を、岸田洋一は職員室の窓からニヤニヤと見下していた。 「おいでなすったな。さーて由依ちゃん、カーニバルはこれからだぞぉ?」 「・・・」 「分かってるな?女を見つけたらここに連れてくる、男は殺せ」 「・・・」 「返事はどうした」 身動きのない体はさながら人形のよう、呼吸で上下する微かな胸元を見ない限り彼女が生きていることに気づく者はいないだろう。 名倉由依は、それほど疲弊しきっていた。 だがそんな彼女にも鞭打つ様、岸田は厳しく接する。・・・いや、岸田にとって、彼女の状態がどうであるかなど関係はない。 「お返事できないか、そうか。じゃあ、下の口にでも聞いてみるか?」 「!!」 「おら、返事しろってんだろーが、クソガキ!」 「・・・・・・・・は、い」 ただの下僕に気を使う必要などないのだから 小さな、とても小さな呟きを何とか口にする由依を汚いようなものでも見るようにした後、彼は自分の持っていたカッターナイフを彼女の手に握らせた。 「よーし、いい子だ。ほら、これを貸してやる」 力なく垂れそうになるが許さない。 きちんと持つようになるまで由依の手を握り締めるようにした後、岸田は部屋を物色することで手に入れたもう一本のカッターを手にこれから起こるであろう騒ぎに胸を馳せるのであった。 「見た所、男は一人しかいねぇようだ。くけけっ、こりゃ大当たりだぜ・・・」 最後に、期待に満ちた視線を送った後岸田は職員室を後にした。 由依も無理やり手を引かれ連れて行かれる・・・彼女に選択権は、ない。 【時間:2日目午前1時過ぎ】 【場所:D−6・鎌石小中学校・校門】 柊勝平 【所持品:電動釘打ち機16/16、手榴弾三つ・首輪・和洋中の包丁三セット・果物・カッターナイフ・アイスピック・支給品一式(食料少し消費)】 神尾観鈴 【所持品:フラッシュメモリ・支給品一式(食料少し消費)】 相沢祐一 【所持品:S&W M19(銃弾数4/6)・支給品一式(食料少し消費)】 藤林杏 【持ち物:拳銃(種別未定)・包丁・辞書×3(英和、和英、国語)支給品一式(食料少し消費)】 【状態:学校を探索】 【時間:2日目午前1時過ぎ】 【場所:D−6・鎌石小中学校・職員室】 岸田洋一 【所持品:カッターナイフ】 【状態:一行を迎え撃つ・少し勘違い気味】 名倉由依 【所持品:カッターナイフ、ボロボロになった鎌石中学校制服(リトルバスターズの西園美魚風)】 【状態:岸田に服従、全身切り傷と陵辱のあとがある】 【備考:携帯には島の各施設の電話番号が登録されている】 由依の支給品(カメラ付き携帯電話(バッテリー十分)、荷物一式、破けた由依の制服)は職員室に放置 杏のノートパソコンは消防分署に放置 - BACK