藤井冬弥と別れ、残った焼そばを全て食し終えた杏は、知り合いたちを探そうと再び道を歩いていた。 (うーん、焼そば……ちょっと作りすぎたかしら? まあ、歩けば食後の運動にはなるわよね?) そう思いながら杏は焼そばを食べたことで少し苦しくなった自分の腹をさすった。 ――本当はいつまでも夜道で堂々と休憩を取っているのは危険だと判断しての移動なのだが。 「――さて。地図によるとこの先に無学寺ってお寺があるみたいだけど……」 手に持っている地図を確認しながら杏は一度足を止める。 「人はいそうだけど、それが殺し合いに乗った人間という可能性もあるわよね……」 はあ、と一度ため息をつく。 「ま…一度調べてみる価値はあるわよね? 誰か知り合いがいるかもしれないし」 そう自身に言い聞かせると杏は再び歩き始めた。 それから歩くことおよそ1時間。杏は無学寺に到着した。 目の前にたたずむ大きな門に思わず圧倒されそうになる。 「随分とまあ大きいわね……」 「ぷぴっ」 「誰かいてくれると嬉しいんだけど……」 そう言って杏が門を潜ろうとしたその時であった。 ―――ドン! 「えっ!?」 「ぷぴっ!?」 寺から銃声が聞こえ、周囲に響き渡った。 (まさか、殺し合いに乗った奴がこの先にいるの!?) 不意に妹や知り合いが銃で射ち殺される姿を想像してしまう。 杏の背中にぞくりと悪寒がした。 「―――行くわよボタン!」 「ぷぴっ!?」 そして、気がつけば杏は右手でボタンを引っ掴んで無学寺の境内へ突入していた。 藤林杏 【時間:2日目・午前5:00】 【場所:無学寺・境内】 【所持品:包丁、辞書×3(国語、和英、英和)、携帯用ガスコンロ、野菜などの食料や調味料、ほか支給品一式】 【状態:無学寺の境内に突入。目標は妹や朋也たちとの合流。右手でボタンを引っ掴んでいる】 ボタン 【状態:杏に引っ掴まれている】 【備考】 ・銃声は高槻が逃げる岸田に射った追撃によるもの ・岸田は裏門の方から逃げたので杏には気付かれていません。もちろん岸田も杏には気付いていません - BACK