何を信じるか




定時放送が流れたのは、雅史と椋が目覚めた直後だった。
二人共、黙って放送を聞く。


「宮内さんに…来栖川先輩、それに琴音ちゃんまで…」
放送が終わった後、雅史は下を向きながら大きく溜息をついた。
「お知り合いの方が?」
「うん…同じ学校の人が4人。それに昨日会ったセリオを入れれば5人か…。椋さんは?」
「あ、はい、私の方は大丈夫です…す、すみません…」
「いや、椋さんが謝る事はないよ」
ペコペコと頭を下げる椋に、雅史は少し苦笑する。
その後、再び沈黙が訪れた。

「と、とりあえずもう一回パソコンをチェックしてみようか。何か新しい情報があるかもしれない」
雅史はそう言って沈黙を破り、ノートパソコンを起動する。
『ロワちゃんねる』を開くと、『安否を報告するスレッド』に新しい書き込みがされていた。

「岡崎さん…!」
その書き込みを見た椋は思わず声を上げる。
「この岡崎朋也って人…確か椋さんが探していた…」
「はい、私と同じクラスの方です」
そう言うとともに椋は民家から走って出ていこうとする。
雅史は慌ててその手を取った。
「ちょっと!どこ行くつもり?」
「どこって…そこに書いてある鎌石村へ…」
「ダメだ!危険だよ!」
思わず怒鳴ってしまう。
確かに椋のクラスメートに会いたいという気持ちは分からないでもない。
しかし、ここに書かれている橘という男のような奴だっているのだ。迂闊に信用するのは危険だ。
が、「知り合いでも簡単に信じるな」とは言いにくいので別の言い訳を考える。
「殺し合いに乗ってる人が、書き込みを見て鎌石村に来る可能性だってある。それに鎌石村はここから反対方向でかなり遠いし…」
椋を説得しようと必死に訴える雅史。
それが通じたのか、椋は俯きながらも「はい…」と小さな声で返事をした。

一安心した雅史は、自分も何か書き込んでおこうと再びパソコンに向かう。
(さて、何て書こうか…)
雅史がキーボ−ドに手をつけようとした時。
「…ごめんなさい。私、やっぱり…」
「え?」と雅史が振り向くと、既に椋の姿は無かった。
「椋さん!くそっ、しまった…!」
慌ててパソコンの電源を落とすと、雅史も民家を出て椋の後を追った。




【時間:2日目午前6時半過ぎ】

佐藤雅史
【場所:I−7】
【持ち物:金属バット、ノートパソコン、支給品一式(食料二日分、水二日分)】
【状態:椋を追う】

藤林椋
【場所:I−7】
【持ち物:包丁、参加者の写真つきデータファイル(内容は名前と顔写真のみ)、支給品一式(食料と水二日分)】
【状態:14時までに鎌石村役場に向かう】
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