「すまない。だけど、おかげで助かった」 「いいのよ。困った時はお互い様だしね」 藤井冬弥と藤林杏は出来上がった焼そばを互いに分け合いながら食していた。 『旅は道連れ、世は情け』とはこういうことをいうのかしらと焼そばを食べながら杏は思った。 「ええと……杏ちゃん、だっけ? 聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」 冬弥は焼そばを食べる手を止めると突然杏に話し掛けた。 「ん? なに?」 「単刀直入に言うけど―――君はこれまで何人殺した?」 「――っ!?」 本当に単刀直入な質問であった。 『殺す』という言葉に思わず反応してしまう。 しばしの沈黙。 まだ残っている焼そばが焼けるジュージューという音だけがあたりに響き渡る。 しばらくして杏は口を開き答えた。 「………1人よ。妹の大切な人を事故だったとはいえ……この手で…………」 杏は自分の両手を見た。激しく震えていた。 「そうか………俺も1人……襲ってきた女を殺した………」 「…………」 「…………」 再びしばしの沈黙。 焼そばが焼ける音だけがあたりに響く。 沈黙を破ったのは冬弥の方だった。 「……杏ちゃんはこれからどうするつもりなんだ?」 また質問か、と杏は思った。だが先程の質問とは違い、今度はすぐにはっきりと答えられるものだ。 少なくともこれ以上場の空気を悪くすることはあるまい、いやむしろ良い方向に戻せると判断すると杏は答えた。 「私はもちろん妹や知り合いを探すわ」 「そうか……」 「そういう藤井さんはどうなのよ?」 「俺は……俺の大切な人たちを殺した奴らを見つけだして………殺すつもりだ」 「なっ!?」 杏は愕然とした。 「なに言ってんのよ!? そんな馬鹿なこと……自分から死にに行くようなものじゃない!」 「―――うるさい」 「っ!?」 刹那、冬弥は杏に銃口を向けていた。 「あんたにわかるのか? たった一人の自身の心だったの支えだった人を失った奴の気持ちが? かけがえのない友を失った奴の気持ちが?」 「そ、それは………」 「――ゲームに乗った奴らを片っ端から潰していけば、由綺やみんなを殺した奴に会えるはずだ…… だから俺は……この糞ゲームに乗った馬鹿な奴らを一人残らず殺してやるんだ!!」 そう叫ぶと冬弥は先程杏がいた鎌石村の方へと駆けていった。 「ちょ…ちょっと………もう。男ってどうしてああいう真っすぐな馬鹿ばかりなのよ!!」 杏はそう叫ぶと残った焼そばを口の中にかき込んだ。 「……ぷぴっ」 そんな杏を見てボタンはただ鳴くことしかできなかった。 【時間:2日目・午前1:00】 藤井冬弥 【場所:D−8(移動済み)】 【所持品:FN P90(残弾49/50)、ほか支給品一式】 【状態:復讐のためマーダーキラー化。鎌石村へ】 藤林杏 【場所:D−8】 【所持品:包丁、辞書×3(国語、和英、英和)、携帯用ガスコンロ、野菜などの食料や調味料、ほか支給品一式】 【状態:目標は妹や朋也たちとの再開、だが今は残った焼そばをやけ食い】 ボタン 【状態:杏に同行、今はただ鳴く】 - BACK