こっちも大所帯




「や、やっと・・・街道かよ・・・」

抱えなおしたイルファの重みに潰されそうになりながらも、折原浩平はめげずに頑張っていた。
外れた頭部は簡単にはめ込み直せた、一応彼女は元に戻ったということにして彼は再び歩き出す。
同じミスは繰り返さない、今度は事前にきちんと地図を取り出すことも忘れなかった。

何とか現在位置を把握したところで、浩平は次の行き先を探す。
学校を見かけたということを記憶の頼りに検討をつけ、その上で今番近い建築物を求めた。
とりあえずそこで休憩したかった、それだけを考えた。

東に進めば必ず街道に出る、それを頼りに浩平は足を動かし続けた。
一歩一歩の進度は遅かったが、何とかそこまで辿り着いた時は・・・もう、感動で涙がちょちょ切れそうになる。

「・・・やっぱり、あった」

そして。
街道沿いには、古びた建物がポツンと存在していた。
無学寺。地図の通り、浩平の待ち望んだものがそこにあって。

「やっと、やっと・・・ひと、休み・・・」

疲労はピークを迎えている、一刻も早くイルファを降ろして横になりたかった。
ただ、それだけを望んでいた。
それなのに、ただ、それだけだったのに。

「む?!何よあんた、ここは真琴達の場所よ。何か用?」
「さ、沢渡さんっ、不用意に外に出ちゃ意味がないですよっ」

小さな女の子が二人、入り口を塞ぐように現れる。
何事か。浩平が、口を開こうとした瞬間だった。

「問答無用!とりゃあー」

鞘のついたままの日本刀が振り上げられる、あれは何を狙っているのか。

(え、俺?)

オーイエス、その通り。衝撃が来たと同時に、浩平の視界も閉ざされるのであった。






ズキンという、頭の痛みで目が覚める。

「いたっ・・・」
「あ、目が覚めましたか」

声を漏らした途端、ひどく優しい声が降り注がれた。
薄く目を開けると、少しウエーブのかかった綺麗なロングヘアが目の前にあり。
ゆっくり身を起こす・・・固い床の感触に、浩平の中で疑問が沸く。

「え、ここは・・・」
「無学寺です。すみません、ゲームに乗った人が入ってきたら危ないと思って見張りの人を立てていたのですが・・・ちょっと、勘違いがあったみたいで」

見渡すと、数人の少女達がここに収容されていることが分かった。
浩平は今一度、一番近くにいた年上らしき少女に目を合わせる。どういうことなのか、問う前に彼女は答えた。

「負傷した人・・・ではないですけど、そういう状態の参加者を背負っている人が、ゲームに乗っている訳ないですもの。本当に、すみませんでした」
「あ、ああ・・・あの人、そういえばどうなったんだ?俺が駆けつけた時にはもう壊れてたんだ」
「大丈夫です、ただバッテリーが切れていただけらしいです。同じロボットということで彼女が見てくださいました」

少女が紹介するように指差す先にいたのは、いやに個性的な服装をした女の子だった。

「一晩充電すれば問題ないです、ご安心ください〜」

ほんわかとした笑み、こちらまでつられて笑ってしまう。
柔らかい雰囲気に心温まる、そんな浩平に対し少女は改めて自己紹介をした。

「私は久寿川ささらです、こちらはほしのゆめみさん。あと・・・」

それからは、ここにいるメンバーと順繰りに挨拶をしていくことになった。
浩平に一撃与えたのは沢渡真琴、彼女と一緒に見張りをしていたのは立田七海という二人の少女だった。

「あ、あの時はすみませんでした・・・」
「君が謝ることじゃないから、気にしないでいいよ」
「ふんっ、紛らわしいそっちの方が悪いんだもん!」
「いや、お前は謝れ」

そして、いやでも目に入る車椅子に腰掛けた少女、小牧郁乃。
このような状態でゲームに参加させられてしまうということを不憫に思う、だがそのような同情を郁乃は望まない。
浩平も瞬時に悟り、当たり障りない言葉だけを並べておいた。

「あともう一人、今は見張りをしてもらっているんですが宮内レミィさんという子がいます。明るくて面白い子ですよ」
「そっか。せっかくだから、見張り手伝おうか?」
「え、でも・・・」
「女の子一人じゃ危ないだろうし、俺は今寝てたおかげで眠気はふっとんだ。ちょうどいいよ」
「ささらさん、せっかくですしお言葉に甘えたらどうです?」
「そうですね・・・では、一時間ほど経ちましたら交替に行きますから。それまでお願いできます?」
「了解、じゃあいってきま・・・」

立ち上がった時だった。
一人もしゃもしゃと何かを食べている少女が目に入る、真琴だ。
その、彼女の口に入れているものに非常に見覚えがあった。

「こらお前、人のダンゴ勝手に食うな」
「あうっ、何よケチねー・・・」

油断も隙もなかった。
真琴からバックを奪い、レミィと呼ばれる少女の元へ向かう浩平。
とりあえず何とか生きている人間に会えたという事実は、少なからずとも浩平の心に安心感を与えたのだった。




【時間:1日目午後11時】
【場所:F−9・無学寺】

折原浩平
【所持品:だんご大家族(だんご残り95人)、イルファの首輪、他支給品一式(地図紛失)】
【状態:見張りに行く】
 
イルファ
【持ち物:フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬5発(回収)、他支給品一式×2】
【状態:充電中・首輪外れてる・左腕が動かない・珊瑚瑠璃との合流を目指す】

小牧郁乃
【持ち物:写真集二冊、車椅子、他支給品一式】
【状況:休憩、七海と共に愛佳及び宗一達の捜索】

立田七海
 【持ち物:フラッシュメモリ、他支給品一式】
 【状況:交替で休憩、郁乃と共に愛佳及び宗一達の捜索】

久寿川ささら
【所持品:スイッチ(未だ詳細不明)、他支給品一式】
【状態:交替で休憩】

沢渡真琴
【所持品:日本刀、スコップ、食料など家から持ってきたさまざまな品々、他支給品一式】
【状態:交替で休憩】

宮内レミィ
【所持品:忍者セット(木遁の術用隠れ布以外)、他支給品一式】
【状態:今は見張り中】

ほしのゆめみ
【所持品:支給品一式】
【状態:交替で休憩】
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