「さて茜。これから先どうする? このまま朝までここで待機しているか、朝になる前に移動するか……」 先程までガチバトルでお互いボコボコに殴り(時々蹴り)合ったので今まで蓄まっていた欝憤が全て解消されてスッキリした智代と茜はこれから先どうしようか話し合っていた。 「そうですね…外の方も落ち着いたみたいなのでこのままここに留まっていても問題は無いかもしれませんが………」 「それまでに何人の参加者が犠牲になるか………だな?」 「はい。おそらくこの数時間の間にゲームに乗った人は間違いなく増えています」 「それに比例して犠牲者も増える……」 「――1人でも多くの人を助けるならいつまでもここで休んでいる場合ではないと思います」 「そうだな……」 そうして結論着けると智代は自分の荷物を持った。 「よし、それなら行くぞ茜。先程の外での騒ぎの余波が広がらないうちに1人でも多くの同志と合流するんだ」 「はい」 外ではほんの十分ほど前まで来栖川綾香、神尾晴子、水瀬秋子ら総勢11名(うち3名が死亡)の参加者による激しい戦いがあったが、今はそれが嘘のように静かだった。 まともな武器がなかった自分たちがあの戦いに巻き込まれなかったのは奇跡だったと智代と茜は思った。 「茜、朝までにこの村を離れるべきだと私は思うんだが、おまえはどう思う?」 「同感です。もしかしたら先程の騒ぎを聞き付けて別の敵が来る可能性もありますから」 「そうだな。それに近くにまだ敵が潜んでいる可能性もある」 「決まりですね。……しかし、先程の取っ組み合いで私たち少し絆が深まったんでしょうか? やけに意見が一致する気がするのですが」 「かもしれないな」 思わずふっと笑う智代。それにつられて茜もふっと笑った。 ちなみに、彼女たちが去った倉庫から少し離れた茂みには休息を取っていた綾香がいたのだが、智代たちは運良く接触することはなかった。 つまるところ、彼女たちの予想は当たっていたわけである。 春原陽平はあれからずっと泣き続けた。しかし、もう今は流す涙も枯れた。 そのため彼は何もせずただぼうっとして空を見上げて惚けていた。 今さら皆のもとに戻る気にもなれなかったし、戻っても後の祭りである。 ――もう何もしたくなかった。いっそこのまま死んだほうがマシなんじゃないかとすら思う。 自分が死んでも芽衣の奴はしっかりした子だからきっと大丈夫だろう。 ――誰かの足音が聞こえた。 それも1人ではない。 追撃が来たのだと春原は思った。 殺されるという恐怖よりも、これで楽になれるという安堵感のほうがあった。 皮肉な話だなと春原も思う。 (さあ――僕はここにいるぞ殺戮者。殺るからには一思いに殺れ。くれぐれも情けなんてかけるなよ……) 春原は覚悟を決めて目を閉じた。 そういえば、るーこと最初に出会ったときもこんな感じだったなと思いほくそ笑みながら。 「―――なにニヤニヤしているんだ春原?」 「へ?」 目を開く。そこには呆れた顔で春原を見る智代と茜がいた。 【時間:2日目・午前0:30】 【場所:G−3(村外れ、教会周辺)】 坂上智代 【所持品:手斧、他支給品一式】 【状態:全身打撲、反主催の同志を集める】 里村茜 【所持品:フォーク、他支給品一式】 【状態:全身打撲、反主催の同志を集める】 春原陽平 【所持品:スタンガン、他支給品一式】 【状態:全身打撲、数ヶ所に軽い切り傷、心身共に衰弱気味、自信喪失、やや自暴自棄】 - BACK