「ふぁ〜…よく寝た……って、どこだここは!?」 気絶(爆睡)から目覚めた折原浩平は状況が判らず多少混乱した。 近くに狙撃銃や自分のものではないデイパックが転がっている寺の裏手に一人ぽつんとたたずんでいたのだから。 浩平は気絶する以前の記憶を蘇らせ、やっと状況を理解した。 「そうか、七瀬はあいつを追っていったんだな…」 貴重な武器である狙撃銃を置いていってしまっているが、多分七瀬なら大丈夫だろうと浩平は思った。 「さて…せっかくここまで運んでもらったんだ、朝まではこの寺で休んでいくとするかな?」 そう言うと浩平は周りの荷物をまとめて無学寺の裏門を潜った。 「うん…?」 「気がつかれましたか?」 「うわぁ!?」 目を覚ました七海は自身の目の前にいた見知らぬ少女、ほしのゆめみに対して思わずすっとんきょうな声をあげた。 「あっ。すみません。驚かせるつもりではなかったのですが…」 「大丈夫よ七海。ゆめみは敵じゃないわ」 同じ部屋にいた郁乃がすぐさま七海にこれまでのことを説明した。 あの後、また高槻が現れたおかげで一応春夏は退けたこと。(無論、その後にあった高槻の告白やキスしそうになったことなど余計な部分は大幅説明カット)ゆめみたちと合流したこと。 ゆめみたちのグループの一人だったレミィが何者かに殺害されたこと。そして高槻たちがその犯人の足取りを追っていったことを一通り郁乃は話した。 「そんなことがあったんだ……」 「でもこうして七海も無事目を覚ましたことだし、あとはあいつらが帰ってくるのを待つだけね」 「はい。ご無事だと良いのですが……」 「あれ? 誰かいるのか?」 「あっ…」 郁乃たちが振り替えると、そこには荷物を抱えて部屋に入ってくる折原浩平の姿があった。 しまったと郁乃はすぐさま浩平に銃を向けた。 「うおっ!? 待て待て、俺はゲームに乗っていない。人を探しているだけだ!」 そう言って荷物を足元に投げ捨て浩平は両手を挙げる。 「……その様子だと、嘘ではないみたいね」 郁乃は銃を向けていた腕を下ろすと浩平から話を聞くことにした。 「つまり今折原はこの川名みさき、上月澪、里村茜、住井護、長森瑞佳、七瀬彰、 七瀬留美、藤井冬弥、氷上シュン、広瀬真希、深山雪見、柚木詩子を探しているのね?」 浩平が探しているという人たちを確認するため、郁乃は参加者名簿をチェックしていく。 「ああ。俺が知ってる奴はそれで全員だな。じゃあ今度はそっちが探している人の名前を聞かせてくれ」 「私はお姉ちゃんの愛佳とそのお姉ちゃんの知り合いで河野貴明って奴の2人ね」 「私が探しているのは那須宗一さんに湯浅皐月さん。それと梶原夕菜さんです」 「あんたは?」 浩平はゆめみの方へ目を向ける。 「すみません。私はこの島に来る以前のお知り合いの方はいらっしゃらないので……」 「そうか。このマルチとかセリオっていうのはロボットっぽい名前だから知り合いかなと思ったんだが……」 そう言って浩平は一通り自分の名簿にチェックを済ませるとそれをパタンと閉じてデイパックにしまった。 「あ。そういえばこっち何入ってんだ?」 浩平はもう一方のデイパック――かつて柚原春夏のものであったそれの中が気になったので確認してみることにした。 「――ナイフと何かの鍵と…カードにどこかの建物の見取り図か……」 「こんな施設がこの島のどこかにあるっていうの?」 「あるから支給品で配られたんだろ?」 「そうですよね」 浩平たちは要塞の見取り図を見ながらああだこうだと話し続けたが、自分たちの子供の考えだけではらちがあかないと判断し、結局打ち切りとなった。 「とりあえず、今は小牧の仲間たちが戻ってくるのを待とうぜ。休めるときに休んでおかねーと」 「そうね」 浩平は自分のデイパックからパンを取り出すと勢い良く噛り付いた。今まで食物など何も口にしていなかったので腹が減っていたからだ。 「あんまり美味くはないな………」 しかし背に腹は替えられない。今は殺人ゲームの真っ最中、食べられるときに何か食べておかないとこの先何があるか判らないのだから。 パンを食べながらふと部屋を出て空を見た。まだ朝日が昇る時間ではない。空には未だ無数の星々が輝いていた。 (こんな所でも星空は俺が住んでるところよりも綺麗なんだな) こうして星を見るのは何年ぶりだろうかと思いながら浩平は残りのパンを口の中に放り込んだ。 (長森……無事でいてくれよ………) 【時間:2日目AM3:45】 【場所:無学寺】 折原浩平 【所持品1:34徳ナイフ、H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、だんご大家族(残り100人)、日本酒(残り3分の2)】 【所持品2:要塞開錠用IDカード、武器庫用鍵、要塞見取り図、他支給品】 【状態:高槻たちが戻るまで休憩】 小牧郁乃 【所持品:S&W 500マグナム(残弾13発中予備弾10発)、写真集×2、車椅子、他支給品】 【状態:高槻たちが戻るまで休憩】 立田七海 【所持品:フラッシュメモリー、他支給品】 【状態:高槻たちが戻るまで休憩】 ほしのゆめみ 【所持品1:忍者セット、他支給品】 【所持品2:おたま、他支給品】 【状態:高槻たちが戻るまで休憩】 【備考】 ゆめみのおたまは春夏が落としていったもの - BACK