求められた助け




顔を見合わせる。
電話の呼び鈴が鳴り響く部屋で、柊勝平と神尾観鈴はその薄気味悪い事象に戸惑っていた。
一定のリズムを刻むそれは、いつまで経っても止むことはない。
そもそも電話なんて連絡手段を使えるということを、彼等は知らなかったから。

・・・もしかして、ここに人がいるかを確かめるためにかけているのだろうか。
それとも命の危機に晒され、助けを求め必死になって連絡を取ろうとしているのか。

分からない。どうすればいいか、勝平が思い悩んでいる時であった。
座っていた観鈴がすくっと立ち上がり、電話の方へ歩いていく。

「お、おい」
「とりあえず取らないと、皆起こしちゃうし・・・」

怖くないわけではない、でもこのままだとせっかく休んでいる仲間に迷惑がかかってしまう。
それが観鈴の結論であった。
ゆっくりと受話器を持ち上げ耳に当てる観鈴の後ろ、やはり気になるのか勝平も構える。

「・・・もしもし?」

観鈴の問いかけ。返事は、即座に返ってきた。

『た、助けてください!』
「え?え??」
『鎌石小学校にいます、今変な人に捕まっちゃったんです・・・っ、お願いします、助けてっ!!』
「あ、あの・・・」
「何、悪戯?・・・ちょっと貸して」

勝平には相手側の声は聞こえていないようで。
ただしどろもどろしている観鈴の様子に苛立ったのか、無理矢理受話器をひったくった時だった。
受話器の向こう側から上がる悲鳴、それと同時に『何してやがるっ!』といった男の罵声も聞こえてくる。

「お、おい!もしもし?!」

慌てて受話器を耳に押し付けるものの、既に通話は切られていて。
呆然。何が起きているのか理解する前に、勝平の中に走ったのは「これはヤバイ」という不安であった。

もう一度、二人顔を見合わせる。
観鈴も感じたのだろう、「どうしよう・・・」という眼差しを勝平に送ってくる。
戻されていない受話器から流れる機械的な音だけが、場を支配していた。






一方。鎌石小中学校、職員室にて。

「ン〜、由依ちゃんは悪い子だなぁ。勝手に外に連絡とっちゃうなんて、これはお仕置きモノだぞ?」
「ひ、ひぃっ」

ガタガタという震えが止まらない。
携帯電話を抱きしめるように身を小さくし、名倉由依は男から逃げるよう後ずさりをした。
だが尻餅をついてしまっている状態だったため、ずかずかと歩いて詰め寄ってくる男から離れることはできない。
髪を掴まれ顔を寄せられる、由依は男の成すがままになるしかない。

「ほ〜ら、熱いキッスをくれてやる。顔こっち向けろ」
「い、嫌です!」
「たっく、ノリが悪いな・・・ほら、じゃあ自分から股開けよ」
「い、いやです、もう止め・・・」
「愚痴愚痴言ってんじゃねえ!!大体こんな小さい身なりで非処女なんてヤリマンの証拠じゃねえか、あぁ?」
「う、うぅ・・・」

切り裂かれた物の代わりにこの学校で手に入れた制服も、今は所々破かれ大量の白い染みに侵されていた。
服だけではない。体中も男に撫で回された不快感が拭えず、それは由依の心をズタズタに引き裂いていく一方で。

・・・最初は優しい笑顔だったはずの男は、この場所に由依以外の人間が本当にいないと分かった途端彼女を押し倒した。
由依は状況が理解できないままに身をもみくちゃにされ、何度も何度も犯されることになる。
そんな経緯から、男にとって由依のそれは今更の抵抗であった。泣き叫ぶ由依の姿を見るのもまた余興。そんな、心境。

約一時間前、仲間を増やすべく由依が電話をかけた先・・・それに出たのが目の前の男、岸田洋一であった。
余程近い場所だったのか、彼が由依の元に辿り着いたのは三十分ほどで。
こんなにも早く味方を見つけられるなんて・・・と、彼女が思うのも束の間。
岸田の変貌は本当に早かった。
花梨や由真を取り逃がしたことによるフラストレーションを抱えていた時に、運よく現れた小動物。
それが、名倉由依。岸田は彼女にそれをひたすらぶつけた、由依自身にとってはたまったものではない。
・・・だが、それでようやく岸田は。本来の調子を取り戻せたような、そんな気分になることができていた。

「まぁ、やっちまったことは仕方ねえなぁ。くっくっくっ、ちょうど刺激が足りなくなってきた所だあ!いっちょ揉んでやるかっ。
 さーて、由依ちゃんの呼んだお仲間が来るまで・・・気持ちいいこと、してような〜」
「いやああああぁぁぁっ!!!」

由依の悲鳴は止まらない。
彼女の地獄は、まだ始まったばかり。




柊勝平
【時間:1日目午後11時45分】
【場所:C−5・鎌石消防分署】
【所持品:電動釘打ち機16/16、手榴弾三つ・首輪・和洋中の包丁三セット・果物、カッターナイフ・アイスピック・支給品一式(食料少し消費)】
【状態:呆然】

神尾観鈴
【時間:1日目午後11時45分】
【場所:C−5・鎌石消防分署】
【所持品:フラッシュメモリ・支給品一式(食料少し消費)】
【状態:呆然】

岸田洋一
【時間:1日目午後11時45分頃】
【場所:D−6・鎌石小中学校・職員室】
【所持品:カッターナイフ】
【状態:女>ゲーム】

名倉由依
【時間:1日目午後11時45分頃】
【場所:D−6鎌石小中学校・職員室】
【所持品:鎌石中学校制服(リトルバスターズの西園美魚風)、
      カメラ付き携帯電話(バッテリー十分)、
      荷物一式、破けた由依の制服】
【状態:全身切り傷と陵辱のあとがある・このゲームで傷ついた人への介抱を目的にしているが、今はそれどころじゃない】
【備考:携帯には島の各施設の電話番号が登録されている】
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