高槻青年の名推理




拝啓お袋様。
先ほど何年振りかもわからない便りを送ったにもかかわらず、凝りもせずまた筆を取ってしまいました。
筆不精な息子をお許しください。
と言うのも、前回の手紙をぜひ訂正したい所存であります。
あれだけ見てしまったら、「そんな辛いなら早く帰っておいで」とも言われかねないのでは無いかと思ったのです。
是非とも腹を痛めて産んでくれた事を後悔しないような息子でありたいと常々思っているのは間違いありません。
そしてこの度自分で言うのもなんですが、ようやく世間様に顔向けが出来るようになったと自負しております。
今はまだあなた様に自信を持って顔を向ける事は出来ませんが、少しでも精進して誇りに思ってもらえるよう頑張って行きたいと思っております。
乱筆ではございますがこれにて、どうかお身体にお気をつけてくださいませ。

……脳内手紙(二通目)の投函は無事完了したし、現実に戻るとするかね。
ともあれ今の俺は最高にハイだ。
なんて言うか自分で言うのも情け無いがオチがなかった話は初めてじゃないか?
吊るされるわ張り手食らうわロリコンだのストーカーだの言われるわ、挙句の果てに持ち物に格下げだ。
ハードボイルドなんて儚い夢だと人生に挫折しかけたものの、諦めず頑張れば報われるってのが良くわかったよ。
なんだポテト、その不満そうな顔は。俺様の隣の二人を見てみろよ?
さっきまでの小馬鹿にした態度は欠片も無いじゃねーか。
結局更衣室にあったのは糞尿まみれになった浴衣だけだったらしく、もう身体を洗ってここから逃げたんだろうという結論に達した。
ポテトの鼻も反応しなくなったし、まったく使えない奴だ。力なく顔をうなだらせたポテトの足取りは重い。
久寿川は腹を撃たれた俺を本気で心配そうに見て、俺が大丈夫って言ってるのに肩を貸してきやがった。

マスクメロンのような乳が俺様の脇に当たって、つい顔が緩みそうになるのを必死にこらえている。
ここで崩しちまったら元の三枚目に逆戻りだからな。ファンは大事にしないといけねぇ。
ファンと言えば郁乃達は無事なんだろうか?
……いつから俺は他人の心配するような人間になっちまったんだ。調子狂うぜ……ったくよ。
「高槻さん、本当に大丈夫ですか?」
久寿川が俺の顔を覗きこんで尋ねてくる。
別の意味で大丈夫じゃねーよ、息子がやばいことになってる。言えねーけどな。
「ああ、こいつの小説があったからな。助かったぜ」
言いながら真琴の髪の毛をくしゃくしゃとやってやった。
「あうーーーっ!」
真琴がジタバタともがいて俺様の手を跳ね除けるが、そんなに嫌そうには見えないな。
さすが俺様。こいつらのハートはがっちりキャッチだろう。
俺様の気持ちを知ってなのかは知らんがポテトの視線が冷たい。
主役の座を再び奪われて悔しいのか? 安心しろ、気が向いたら少しはまた出番をやるよ。気が向いたらだけどな。

そんな絶好調の俺様だからこそ気付けたのかもしれない。
殺気とも言える独特の空気。微かに鼻を擽る血の香り。
隣の二人はそれに全く気付いていないようで、久寿川の身体から身を離すと小さな声で言った。
「……お前らちょっとここで待ってろ」
「「え?」」

「いいから、すぐ戻る」
拝借したばかりのコルトガバメントを握り締め、ポテトに合図を送ると俺様はゆっくりと歩き出した。
俺様の後をちょこちょことついてくるポテト。よかったな、さっそく出番はあるかもしれねーぞ。

廊下を曲がろうとしたところで俺様は壁に身を隠す。
曲がった先にはガキどもの姿があった……一人、二人、三人か。
今にも殺し合いをしようって形相で睨みあってやがる。……やれやれだ。
危険を察知できたことに満足すると、関り合いにならないほうが良いと思って俺様は踵を返したんだ。
ポテトが裾を引っ張って文句を言ってるが知ったこっちゃねぇ。関る理由も必要も無いしな。
「あたしはみんなを守る為に修羅になるって決めた。もう人を何人も殺してるんだよ。今更後戻りなんて出来ないしするつもりも無いぞ」
俺様の足を止めたのはその中の一人のそんなセリフだった。
人を殺しただと? 浴衣はここに捨ててあったよな。そして言葉を発した女の格好はスクール水着だ。
なんでそんな格好してるかなんて普段の俺なら突っ込んでただろうが、今の俺は違う。
ダサい云々は置いておいても金田一だからな。ピーンときた。宮内を殺ったのはあいつだ、間違いない。
「その話詳しく聞かせてもらうぞ」
気付けば俺はガキどもの前に姿を現していた。
「俺のおっぱ……じゃねぇ、連れが殺されたんだ。わりいが事と次第によっちゃただじゃすまさねぇ」
本当に関るつもりはなかったんだがな、おっぱいの恨みはでかいんだぞ。




金田一高槻
 【所持品:食料以外の支給品一式、日本刀、分厚い小説、ポテトwithコルトガバメント(装弾数:6/7)予備弾(13)】
 【状況:絶好調】
久寿川ささら
 【所持品:スイッチ(未だ詳細不明)、トンカチ、カッターナイフ、ほか支給品一式】
 【状態:健康、高槻と少し離れたところで待機】
沢渡真琴
 【所持品:スコップ、食料など家から持ってきたさまざまな品々、ほか支給品一式】
 【状態:健康、高槻と少し離れたところで待機】
河野貴明
 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
 【状態:麻亜子と対峙。殺しはしない】
観月マナ
 【所持品:ワルサー P38・支給品一式】
 【状態:足にやや深い切り傷。麻亜子と対峙。殺しはしない】
朝霧麻亜子
 【所持品1:SIG(P232)残弾数(3/7)・ボウガン・バタフライナイフ・投げナイフ】
 【所持品2:仕込み鉄扇・制服・ささらサイズのスクール水着・支給品一式】
 【状態:貴明とささらと生徒会メンバー以外の参加者の排除。スネが痛い】
 【備考1:スク水を着衣、浴衣は汚物まみれの為更衣室に放置】
 【備考2:制服はバックの中へ】

【時間:2日目02:00頃】
【場所:D-06鎌石小中学校職員室前廊下】
【備考:由依の荷物(下記参照)と芽衣の荷物は職員室内に置きっぱなし】
   (鎌石中学校制服(リトルバスターズの西園美魚風)
    カメラ付き携帯電話(バッテリー十分、全施設の番号登録済み)
    荷物一式、破けた由依の制服
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