勝平さん、がんばってください(by椋)




「オラオラ!勝平様のお通りだよっ」
「五月蝿い黙れ馬鹿」
「何だと?!っていうか、やっぱりお前等はそのメンバーでしか固まれないのか!」

鎌石消防分署に飛び込んだ柊勝平を迎えたのは、想像通りのあの面子だった。
相沢祐一、神尾観鈴、藤林杏、緒方英二、春原芽衣。そしてしょぼい男の代わりに婦女子プラスワン。

「ああ?誰だ、あんた」
「いきなり失礼ね」

見覚えのないボインの姉ちゃんこと、向坂環に目をくれる。
それにしても良いスタイルだった。

「おーいおーいおい、りなぁ〜」
「泣かないでください英二さん、私が・・・あなたの妹になりますから」
「芽衣ちゃん・・・」
「な、何であいつ泣いてるんだ?」
「妹さんが亡くなったんだそうだ・・・そっとしておいてやれ」

鼻水を垂らしながら、芽衣の平たい胸に抱かれている英二の崩れっぷりに唖然。
ちょうど杏を殺すという時に乱入してきたあの威厳はどこへやら、英二は泣き続けていた。

「にはは、私達もついさっきここに来たの。一緒一緒♪」
「一緒にするな」
「が、がお・・・」
「あんたは何か用があってここに来たのか?」

声をかけてきた祐一に対し、お前を殺しにだよ、と。そう叫んでやりたかった。

「芽衣ちゃんは、あったかいね・・・」
「へへっ。英二さん、かわいい」
「そんな、芽衣ちゃん・・・大人をからかっちゃ、ダメだよ」
「守ってくれたお礼じゃないですけど、少しは英二さんの力になれますか?私、英二さんになら・・・」
「こらそこ、ここで乳繰り合うんじゃないわよ」

だが、いまいち雰囲気に欠ける。

「でも勝平さんも無事だったのね。良かったわ〜、早速報告でもしようかしら」
「報告?」

カタカタとキーボードに手をやり、ノートパソコンを操作している杏に近づく。

「何やってんだ?」
「ん?掲示板にね、こうやって載せとけば安心でしょ?」

覗き込んでくる勝平にもよく見えるよう杏はノートパソコンをずらし、開かれたウインドウを指差した。
『自分の安否を報告するスレッド』というタイトルのついたページが、そこにある。

「・・・ふーん。そんなの、あったんだ」
「ええ、ただパソコンという設備自体が希少みたいでね、まだ書き込みも・・・・・・・・・あった」
「はぁ?」

さっきまではなかったそれを、杏の目が捉える。
その内容に思わず声を上げてしまう、何だ何だと祐一達も寄ってきた。

「・・・天野?」
「相沢くん、知り合い?」
「ああ、後輩だ」
「が、がお!これ、私のお父さん!」
「は?」

『橘敬介』という文字を指差し、観鈴が叫ぶ。
天野美汐という参加者曰く、彼女はその橘敬介さんに不意打ちくらわされピンチだったらしい。

「あなたの両親何考えてんのよ・・・」
「が、がお」
「神尾さん、あなたのお父さんは本当にこんなことをする人なの?」
「わ、私、一緒にいることなんてなかったから・・・分からない」
「そうか」
「相沢くん、天野さんっていう子は信用できる?」
「ああ、無口だけど悪い奴じゃない。嘘をついているとは思えないんだけどな・・・」
「うーん、神尾さんのお父さんというなら、あまり疑いは持ちたくないんだけどね」
「早めに合流して、話し合ってみた方が良さそうだな」
「う、うん!そうだ、そのこと書き込んでみたらどうかなっ」

何か盛り上がっているが、勝平はいまいち会話についていけないし混ざれない。だから皮肉っといた。

「もうどれが誰しゃべってるかさっぱり分からんな」
「五月蝿い黙れ馬鹿」
「誰だ?!今言ったの誰だ、っていうか最初にもお前ソレ言ったよな?!!
 ・・・ああもう、ゴチャゴチャし過ぎ!お前等、人、塊過ぎ!散れ!!」

怒り爆発、っていうか最初からこうしていれば良かった。
勝平はバックから電動釘打ち機を素早く取り出構えようとする。

だが。

次の瞬間祐一はS&W M19を、少し離れた場所で涙で伏せっていた英二は拳銃(種別未定)を、
同じく離れた場所にいた芽衣はボタンを、環はコルトガバメントを、杏は辞書を、構えた。

「すいません僕が悪かったです、とりあえずそれら諸々を降ろしてもらえませんか?」
「にはは、情けない」
「何もしてないお前が言うな!!」
「が、がお・・・」




柊勝平
【所持品:電動釘打ち機16/16、手榴弾三つ・首輪・和洋中の包丁三セット・果物、カッターナイフ・アイスピック・他支給品一式】
【状態:ま、まだ諦めた訳じゃないんだからね!】

相沢祐一
【所持品:S&W M19(銃弾数4/6)・支給品一式】
【状態:冷静】

神尾観鈴
【所持品:フラッシュメモリ・支給品一式】
【状態:がお】

向坂環
【所持品:コルトガバメント(残弾数:20)・支給品一式】
【状態:冷静・朝までは祐一達と同行】

春原芽衣
【持ち物:デイパック、水と食料が残り半分】
【状況:冷静】

緒方英二
【持ち物:拳銃(種別未定)デイパック、水と食料が残り半分】
【状況:冷静になった】

藤林杏
【持ち物:ノートパソコン(充電済み)、デイパック、包丁、辞書×3(英和、和英、国語)】
【状態:冷静】

【時間:一日目午後6時45頃】
【場所:C-05鎌石消防分署】
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