男はゲーム開始以来、ずっと周囲のマイクから聞こえてくる悲痛な叫びを楽しんでいた。 だが夜が深まるにつれて寝静まる者が増え、マイクから聞こえる悲鳴も少なくなっていった。 男は気だるそうにあくびをした後、モニターを見たまま、傍にいる側近に声をかけた。 「ふむ………篁も醍醐も呆気ない最期だったな。奴らには期待していたんだがな。おい、那須宗一はどうしてる?」 言われて側近はすぐにファイルに目を通した。 「那須宗一は今、マーダーの二人…天沢郁末と鹿沼葉子と行動を共にしています。 完全には信じていないものの、騙されているようですね」 「愚かな……世界No1エージェント、NASTYBOYもその程度か。これは今回も少年の優勝で終わりそうだな」 「恐らくそうなるでしょう。ですが一つ、朗報があります」 男は眉を寄せ、唇を少しすぼめた。 「何だ?」 「前回のゲームの最中に紛失した"宝石"が見つかりました。現在は笹森花梨が所持しています」 それを聞いた男は側近の方へと振り返り、唇の端をぴんと持ち上げた。 それは酷く、歪な笑みだった。 「くくく……ようやくか。絶対に監視を怠るなよ、アレは我々の計画の要となる物だ」 「分かっています。前回と同じミスは決して犯しません」 「ああ、頼んだぞ。では、再び楽しませてもらうとするか」 再びモニターに視線を戻す。 男の顔には歪な笑みがへばり付いたままだった。 【時間:2日目午前3時】 【場所:不明】 - BACK