獣の槍を持つ男




美坂香里と名倉友里は、まだズルズルとまぐわっていた。

「や……ちょっとぉ……もう……イキすぎてるからぁ……っ」
「だめぇ、お姉さま……お姉さまにたくさん気持ちよくしてもらった分、
 まだ全然返してないんだからぁ……」

電波の影響はもはや無いにもかかわらず関係を断ち切れない辺り、香里の隠された性癖が垣間見えるエピソードである。
周辺に漂う、女同士の妖しい香り。
そんな香りに引き寄せされるように恐るべき脅威が迫りつつあることに、行為に夢中の二人は気づかなかった。

「……セロ……」

それは誇り高き王の如く。

「……ラセロ……!」

それは密林を疾駆する野獣の如く。

「―――ウォォォォ―――!!」

そこに裸の女がいる限り、それは必ずやって来る。

「ヤラセロ、女ァァァ―――ッ!!!」

下半身世界無差別級チャンピオン、魔獣・岡崎朋也が、夜の闇を裂いて現れた。
その暴れん坊将軍は24時間体制ゴーゴーである。

「な、何……!?」
「ひっ……!」

ネコ役を務めていた分、香里の反応が一瞬だけ遅れ、それが彼女の致命傷となった。

「レッツ……ゴォーッ!!」
「ひ……がぁ……いや……いやあああ……ッ!」

神速の突きが一瞬にして膣内を越え、香里の子宮を蹂躙する。
飛び散る破瓜の血が、見る間にその下半身を真っ赤に染めていく。

「イッけぇぇぇ、俺のマグナムゥゥゥ!!」
「が……ぁああああああああっっ!!」

子宮を埋め尽くし、なおも途切れず発射され続ける朋也の超子汁。
性戦士ならぬ香里の身には、それはあまりにも巨大な負担であった。

「ぉ……ぉなかぁぁぁ……ぉなかさけちゃぅぅぅ! ぎ、ぎぃぃぁぁ……っ」
「ヒィィィト、エンドォォォ!!」

朋也の肉男爵が、指一本すらも使わず、その力だけで繋がったままの香里を持ち上げる。
伝説の奥義・マグロ一本釣りである。

「ひ、ひぎぃぃぃ!! ……が……くぁ……ぁ……ぁ……」
「お、お姉さまぁぁぁっ!?」

友里が叫ぶが、時既に遅し。
香里のその瞳は最早、何一つとして映してはいなかった。
あらゆる力を喪いもたれかかる香里の死体を、エクスカリバーの上下運動だけで放り捨てると、
朋也はそのギラギラと光る眼を、友里へと向ける。

「ひ……あ……お、お姉さまを……よくも……!」
「クク……イキながら死んだのさ……女としちゃあ一番の幸せだろうぜ……!」

締まりのない口元から涎をだらだらと垂らしながら、かつて朋也と呼ばれていた獣が友里に迫る。
だが友里は、己が荷物から素早く突撃銃を取り出すと、朋也へと向けた。
奇跡的な手際で弾倉を叩き込み、トリガーを引き絞る。

「し、死ねえっ! ……えっ!?」

だが、その30発の弾丸は、すべて野獣の剛直によって受け止められていた。
朋也の乳繰りマン棒から、ぱらぱらと弾丸が零れ落ちる。

「ン……今、俺の愚息が何か頂いちまったようだなァ……?」
「ば……ばけもの……!」
「貰ったら……お返しを、しなくちゃイケねぇよなァ! 人としてッ!!」

朋也が、翔ぶ。

「生まれたてのッ! ヒヨコの産毛のように繊細にッ!」

その奇妙に蠢く指が目にも留まらぬ速さで、一糸まとわぬ友里の、白い胸へと伸ばされる。
膨らみの頂点、桜色の突起を、女神の如き優しさで撫でさする朋也。

「ふ……ぁぁ……っ!?」

がくりと、友里の膝が落ちる。

「そしてッ! 怒れる独裁者のように大胆にッ!!」

一転、狂気すら感じさせる強さで、友里の乳首が摘み上げられる。
敏感な場所を万力のように締め上げられる苦痛。
しかしその中に、友里は確かな悦楽の芽を見出し始めてていた。

「ひ……ぎ……ぁ……」

酸素を求めて開けられた友里の口に、朋也がもう一方の指を突き込む。

「い……いら……いらぃよぉ……」

舌を掴まれ、苦痛と快楽の声を上げる自由すらも奪われる友里。

「安心しろ……お前もすぐに送ってやるさ! あの女が待つ、悦楽のエデンへなッ!」

その言葉に、薄れかけていた友里の意識が戻る。

(お……おねえ、さま……!)

朋也の無慈悲な夜の王様が、友里を儚く散らそうとした刹那。
友里が、最後の力を振り絞って朋也の手を払った。

「貴様……!」
「ただで殺されてなんて……あげるもんですか……っ!」

飛びついたのは、香里の荷物の中にあったナイフ。

「アソコがダメでも、他のところなら……!
 お姉さまの仇、死ねえっ……!」

虚を突かれた朋也の反応が、一瞬遅れた。
銀に光る刃が、その無防備な横腹を刺し貫くと見えた、その瞬間。

「……が……ふ……っ」

友里の胸腔に、大きな穴が開いていた。
己の胸から突き出した異物を、呆然と眺める友里。

「……どう……して……」

そこにあったのは、白い毛皮と鋭い爪。

ゆっくりと引き抜かれていくそれを見ながら、友里は絶命した。

「女……俺の、女が……!」

寸秒前の窮地を省みようともせず、朋也は怒りの声を上げる。

「邪魔しやがったのは、どこのどいつだ……ッ!」

その黄色く濁った目には、涙さえ溜めている。
崩れ落ちていく友里の身体の向こう側から現れたのは、

「―――風子……参上」

聞き覚えのあるその声に、朋也が驚愕する。

「風子……風子、だと……!?」

だがその口から出たのは再会の喜びではなく、疑念交じりの声。
朋也が驚くのも無理からぬことであった。
風子を名乗るその姿は、有り体にいって、マントを羽織って直立する虎の子であった。

「お前……本当に、あの風子……なのか」
「風子……参上」

朋也の言葉が聞こえているのかどうか。
返ってくる言葉は先刻とまったく同様であった。
だが朋也は既にそんな風子の反応に一切の興味を払っていない。
そのどろりと濁った目は、真っ直ぐに風子の腰辺りへと注がれていた。

「クク……まあいい……そろそろ獣の締め付けも恋しくなってきたところだ……。
 後ろを向いてケツを出せ、風子……」
「……」

「おい、聞いてるのか風子……何!?」

朋也が再び驚愕する。
風子と名乗る獣の姿が、霞のように消えてしまったのである。

「クッ……何だっていうんだ……!? おい風子、風子!」

呼べども叫べども、風子が再び姿を見せる気配はない。

「グォォ……女……、誰でもいい……女を寄越せェェェッ!!」

朋也の咆哮が、夜の森に響き渡る。
胸を貫かれた友里の死体だけが、風子が確かに存在していたことを無言の内に語っていた。




【時間:2日目午前2時頃】
【場所:D−5】
 岡崎朋也
【持ち物:お誕生日セット(クラッカー複数、蝋燭、マッチ、三角帽子)、支給品一式(水、食料少し消費)、大変な逸物】
【状況:変態強姦魔】
 伊吹風子
【持ち物:彫りかけのヒトデ】
【状態:覚醒・ムティカパ妖魔】
 美坂香里
【状態:死亡】
 名倉友里
【状態:死亡】
※アーミーナイフ、Remington Model 700Police装着数4 残弾数51、支給品一式×2、
 ハーネル StG44突撃銃(0/30)&弾層×4は放置。
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