放送が流れた後、北川潤の表情は一気に険しくなっていた。 彼の変容に、広瀬真紀も遠野美凪も戸惑うばかりで。 ・・・場の空気は重い、それを打ち破ったのは潤自身であった。 「ごめん。俺、行かなくちゃ」 「え、ど、どうして?!」 「・・・知り合いが、死んでた」 その一言が、全てを物語る。 「も、もしかして・・・敵討ちとか、考えてんじゃないでしょうね」 「・・・」 「き、北川!答えなさいよっ」 真希の詰問、潤は・・・苦笑いを浮かべながら、やんわりと首を横に振った。 「大丈夫、そういうんじゃない。・・・ただ、あの子が死んだことで変わっちまいそうな奴が、いてさ」 「お友達?」 「そうだ、親友だ。・・・あいつが復讐なんて道に走っちまったら目も当てられない、だから俺は行く」 心配そうに見守る真希と美凪の視線を背中に受けながら、潤は自分の荷物を手にし家の出口まで向かって行った。 「北川ぁ・・・」 「じゃあな。広瀬、遠野・・・短い間だったけどさ、あんがとな」 「わ、私もっ」 「いや、巻き込みたくない。これは俺とアイツのことだ。・・・ごめんな」 「・・・また、会えます?」 「おうよ!きちんとケジメつけて帰ってくるぜ」 しっかりとした足取りで別れを告げる潤を、二人は見送ることしかできなかった・・・。 明るく親しみやすい顔は、一歩外に出れば冷たいポーカーフェイスに戻る。 しっかりとした足取りは変わらないが、潤は冷静に島の地図を取り出し現在位置を確認した。 第一回の放送、それが行動を開始する合図であった。 「ふう・・・もうアイツの、動き出した頃かな」 直接会ったこと、関わった事があると言われたら分からない。覚えていない。 そんな彼のことを考えながらも、潤はこれからの指針について考えていた。 島にはゲームを円滑に進めるために、主催側から盛り込まれた人間がいる。 一人は、数減らしのために殺戮を担当する者。 そしてもう一人。『姫君』が退屈しないよう、ゲームを盛り上げるために配置される者。 ある時は参加者に様々な知識を与え、今までとは違う行動や展開に話を持っていこうとすること。 またある時は大人数のグループに紛れ込み、仲間内での疑心暗鬼を作り出すこと。 それが、彼、北川潤の使命であった。 「正直、何で俺がって感じもするんだけどな〜・・・」 ・・・いくども繰り返された世界で、彼がこのような行動を取らなくてはいけなくなったのはつい最近のことだった。 何故か、と言われたら分からないとしか言いようがない。 ただ、そのような行動を取る様になる理由は、確かに存在していた・・・と、思う。 また覚えていることは断片的だが、全ての記憶がなくなってしまった訳でもない。 その欠片の中には、自の命を顧みず自分を庇ってくれた・・・真希の姿が、あった。 「・・・あの二人が何か首輪のことに、気づいてくれりゃあいいんだけどな」 今回は、あの時とは違う。多分。 この後また二人に会えるかどうか、それは分からないけれど。 彼女達には何かをやり遂げて欲しい、そんな思いも胸に秘めながら潤は新しいターゲットを探しに行くのだった。 北川潤 【時間:1日目午後6時過ぎ】 【場所:B−5】 【持ち物:SPAS12ショットガン(8/8+予備4)防弾性割烹着&頭巾 九八式円匙(スコップ)水・食料、支給品一式、携帯電話、お米券×2 】 【状況:新しいターゲットを探す】 広瀬真希 【時間:1日目午後6時過ぎ】 【場所:日本家屋(周りは砂利だらけ)】【B-5】 【持ち物:消防斧、防弾性割烹着&頭巾、スリッパ、水・食料、支給品一式、携帯電話、お米券×2 和の食材セット4/10】 【状況:北川を見送る】 遠野美凪 【時間:1日目午後6時過ぎ】 【場所:日本家屋(周りは砂利だらけ)】【B-5】 【持ち物:消防署の包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、支給品一式、特性バターロール×3 お米券数十枚 玉ねぎハンバーグ】 【状況:北川を見送る】 - BACK