類は友を呼ぶ




宮本浩くん 死亡
人見広介くん 死亡

「ぐおー! 私はムティカパやー!」
「うわあ……今度は牙が生えた……」
ヘタレトレーナーの藤井冬弥くん、相変わらず苦戦中だった。
全くダメージを与えられないままヘタレたちが死んでゆく。
「だからヘタレなんて役に立たないってば。逃げる気ないならもう銃使っちゃいましょ」
「だめだ。それでは経験値が入らない」
「はあ……」
七瀬留美は盛大にため息をついた。ちなみに、
ムティカパ感染者たちに硬い体毛が生えるのはもう少し病気が進行してからなので今なら攻撃は効く。

「このままだと全滅するわね。
……よく考えるとなんであたしはこの光景を律儀に見守ってるんだろう」
もうほっといて逃げようかと留美が思い始めたとき、
彼女は対峙中の獣っ娘の真上の空間が蜃気楼のように揺らめいているのに気付いた。
「今度はなんなのよ……」

 キラーンと強い光を放ち、一人の人影が浮かび上がる。
どうも本人はかっこいいと思ってるらしいポーズをとって、その人物は自らの主張を叫ぶ。
「ヘタレの集いにこのオレ様を呼ばないとはどういう了見だ!
板違いキャラの前に入れるべき人材がいるだろうがっ!
主人公じゃない!? ヘタレの方向性が違う!? 知るか!」
空間の揺らめきが収まると、そこには額にわら納豆みたいなものを括り付けた男が浮かんでいた。
留美はああまた変なのが現れたよと頭を抱えた。

「誰よあんた……」
「オレ様を知らないだあ!?
まあいい、今日は気分がいいから特別に名乗ってやろう!
オレ様は皇!―――の弟!―――の息子、ヌワンギ様だ!
オレ様に逆らうのは皇に逆らうのと同じこと、よくおぼえとけ!」
「要するに、虎の威をかる狐というやつね」
「なんだと!」
「というか、そんな異世界の権力なんて振りかざされても……」
「お前はその発言を後悔することに――っうお!」
ヌワンギと名乗ったその男は、器用にも空中でずっこけた。
そしてそのまま下にいる智子に激突する。

「いてぇーー!!」
「ウォ……」
打ち所が悪かったらしく、智子は気絶してしまった。
「で、あんたは何をしに来たのよ」
「あ? そこにいるヘタレに引き寄せられたんだよ」
「チャンスだ! いけ、ヘタレボール!」

 冬弥は気絶して倒れている智子に向けてボールを投げる。しかし……
「あ、手元が狂った……」
冬弥の投げたボールはやや高すぎ、標的の上にいるヌワンギにぶつかる。
そしてヌワンギは赤い光とともにボールに吸い込まれていく。
「おい! せっかく異世界から駆けつけたのにボールに閉じ込めてんじゃ……」

ピコ、ピコ、ピコ……ピン!

「……ヌワンギ、ゲットだぜ!」
「ゲットしたいのはこっちだったんじゃ……」
「……仲間は多いほうがいいんじゃないかな」
その後智子に改めてボールが投げられ、彼女は冬弥の持ち物となった。

「そのボール、ヘタレとか主人公とか関係なく入ってる気がするんだけど」
「細かいことは気にしちゃ駄目だ」
まだまだ突っ込みたいことが山ほどある気がしたが、
留美は乙女の意地にかけてスルーしておくことにした。




 【時間:午後9時ごろ】
 【場所:C−06】

 七瀬留美
 【所持品:P−90(残弾50)、支給品一式(食料少し消費)】
 【状態:やっぱり呆れている】

 藤井冬弥
 【持ち物:H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、
     支給品一式(水1本損失、食料少し消費)、沢山のヘタレボール、
     鳴海孝之さん 伊藤誠さん 衛宮士郎くん 黒崎崇くん(死) 宮本浩くん(死) 白銀武くん
     鳩羽一樹くん 柊空也さん(死) 朝霧達哉くん 人見広介くん(死) 来栖秋人くん 鍋島志朗くん
     ヌワンギくん 保科智子さん】
 【状態:俺=ヘタレトレーナー】

 保科智子
 【所持品:支給品一式(水、食料少し消費)、専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾×3、ムティカパの塩漬け×2】
 【状態:ムティカパ症候群L3、気絶】

 ヌワンギ
 【状態:ヘタレ】
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