「あ、おかえりなさい」 「・・・」 のほほんとした気の抜ける雰囲気が出迎える。 破壊されたセリオを確認した際、失神してしまった柚木詩子を背負いながら相良美佐枝はこの場に戻った。 部屋の真ん中でちょこんと座っている小牧愛佳と来栖川芹香、こちらを迎えるその毒気の無さに相良美佐枝は半ば呆れた。 美佐枝自身が悲惨な面を見てしまったからかもしれないが、彼女達がこうして朗らかにいられるのは・・・まだ、自分達が悲劇の餌食になっていないからだろう。 古びた日本家屋が彼女達の隠れ家だった。 このような佇まいの家はこの鎌石村にはいくつかあり、その内の一つで愛佳と芹香は休んでいた。 少し年代を感じさせる色あせた畳の上、寛ぐ彼女達は美佐枝の帰りを心から喜んだ。 正直ここまで懐かれているとは思わなかったので・・・美佐枝も、どこか嬉しくなる。 「あの、その方は・・・」 「ああ、ちょっとあってね。布団とかあるかい?」 「あ、はい!ちょっと待っててください」 パタパタと押入れの方に向かい、布団を引き出す愛佳。 その間に美佐枝は背負っていた詩子を降ろす、芹香はただぼーっとそんな光景を見つめているだけだった。 詩子を横たえた後、手に入れた缶詰を一つ開けてのささやかな食事と摂りながら、美佐枝は話し出した。 村の家屋で施錠済みの家が多かったこと、そして詩子のこと。 事情を知った愛佳の顔が暗くなる、けれど仕方ないことだ。 これが、殺し合いをさせられているという現実であるのだから。 「そっちは何かあったかい?」 「あ、そうなんですっ。聞いてください美佐枝さん、芹香さんがこの土地の地縛霊さんとお話してくれて、少し分かったことがあるんです」 「はぁ?」 「ですから、芹香さんが・・・」 そう言う愛佳の手には、あ〜んまでの五十音が書かれた用紙と、何故か五円玉が。 見覚えある、小学生の時辺りに流行った気がするそれ。 「・・・こっくりさん?」 「はい、本当は直接お話することもできるらしいんですけど、今はどうしてかできないそうです」 「・・・」 「この島には特殊な呪いか何かがかけられていて、それが妨害してる・・・と言ってます」 そういえば、最初のウサギがそんなことを言っていた気がする。 ・・・芹香が能力者。信じがたいけれど、確かに彼女の常人離れした雰囲気からするとそれは説得ある話だった。 まじまじと見つめる美佐枝の視線を受け、何故か芹香は得意げにブイサインを作る。 そんな二人を無視し、愛佳は話を続けた。 「えっとですね、芹香さんいわくこの島には神塚山を囲んで三つの封印が行われているそうです」 ぱさっと五十音の書かれた紙を裏返す、それは最初に配られた地図。 ホテル跡、鎌石小中学校、鷹野神社。順に、愛佳は指を差していく。 それらは全てスタート地点として指定された場所だった。 「各場所には青い宝石が配置してあり、それには何か秘密があるらしいです」 「・・・秘密?」 「はい。その三つの青い宝石を集めて何かした上で、それを山に謙譲すると何か起きたと、地縛霊さんはそうおっしゃったそうです」 「何だか凄く曖昧だね・・・」 「しかも、それがいいことか悪いことかというのも分からないそうです・・・」 「・・・」 「えっと、地縛霊さんも直接見ていたわけではないのでそこら辺は勘弁してくれ、だそうです」 芹香の呟きを愛佳が伝える、二人はちょっと時間を置いただけでツーカーになっていた。 そんな微笑ましいコンビを見ながら、どうしたもんかねと考える。 ・・・腕を組んだところで、美佐枝ははたと気づいた。 「ちょっと待って。芹香ちゃんの言い分だと、このゲームって・・・」 「・・・」 「はい。施行されたのは、初めてでは・・・ないそうです」 愛佳の表情が曇る、芹香も寂しそうに俯いた。 もし本当に地縛霊という存在があるのであれば、それの持つ知識・・・即ち「見た記憶」というのは過去の物である。 ・・・誰かが踏み台になることで、今築かれた現実があるということ。 それらを含め、早い判断を・・・することは、できない。 「ごめんね、二人とも。正直、それを信じろって言われても・・・私にゃ厳しいよ」 「・・・」 「でもね、もしその場所にさ、本当に宝石なりなんなりが隠されていたのなら。 何かこのゲームから抜け出すきっかけを作れるかもしれない、そうは思う」 美佐枝は一度深呼吸し、表情を崩して二人に笑いかけた。 「明日、行ってみようか。そこに本当に青い宝石なんて物があったらさ・・・また考えよう」 「はい」 「・・・」 行くとしたらここから近いホテル跡か鎌石小中学校だろう、距離的にはホテル跡の方が近いがそこまで大差はない。 とにかく明日考えればいい、そうとしか・・・今の美佐枝には、言えなかった。 相楽美佐枝 【時間:1日目午後11時】 【場所:B−3・日本家屋】 【持ち物:ウージー(残弾25)、予備マガジン×4、缶詰3個&パン2個、支給品一式(水補充済み、食料少し消費)】 【状態:休憩・交代で見張り】 来栖川芹香 【時間:1日目午後11時】 【場所:B−3・日本家屋】 【持ち物:バックパック式火炎放射器、支給品一式(水補充済み、食料少し消費)】 【状態:休憩・交代で見張り】 小牧愛佳 【時間:1日目午後11時】 【場所:B−3・日本家屋】 【持ち物:包丁、支給品一式(水補充済み、食料少し消費)】 【状態:休憩・交代で見張り】 柚木詩子 【時間:1日目午後11時】 【場所:B−3・日本家屋】 【持ち物:ニューナンブM60(5発装填)&予備弾丸2セット(10発)・支給品一式】 【状態:気絶中】 - BACK