「フラッシュメモリ?」 祐一の言葉と共に観鈴が差し出したのは彼女の支給品であった一枚のフラッシュメモリだった。 英二はそれを受け取り眺めてみるものの、当然のことながら中に入ってるものなどわかるはずもなく 難しい顔をしたままそれを観鈴の手へと返した。 「そもそもここに向かったのはパソコンを探してみようってことだったんです」 杏と別れ、英二達とこれからの方向性について話をしている時に、今までの激動ですっかり忘れていたフラッシュメモリの存在。 消防署なんだからパソコンぐらいは置いて無いものかと思い立ち署内を探し回ってみたのものの、それらしきものはどの部屋にも見当たらなかった。 「なるほど……僕らも使えそうなものが無いか何軒か民家を回ったけれどもパソコンは見当たらなかったな」 「そうですか……」 小さく肩を落としながら祐一は表情を曇らせた。 「この鎌石小中学校ならそう言った設備があるんじゃないかしら?」 環は広げた地図の中から一箇所を指差し、一同がそれを覗き込んだ。 「確かに行って見る価値はありそうだね」 「それに、これだけ地図に大きく載っているなら誰かかしらもいそうな気もするわ」 異論を挟むものは誰もおらず、皆が小さく頷いた。 「彼女は置いていくんですか?」 発つ準備を始める一同の前に、環が隣の部屋のドアに目をやりながら英二にそっと尋ねた。 「今の彼女には僕の声は届かないよ、乱暴だけれどもあのままで時間をかけるしかないと思う」 「でももし誰かに襲われでもしたら」 たとえゲームに乗ってしまった身であっても、昔からの知り合いをほおっておいて良いものなのかと環は考えた。 英二は躊躇いがちな表情を浮かべたものの 「……それは君の探し人にしたって一緒だろう?」 それ以上は何も言わず、踵を返すと自身のバックを持ち上げた。 環もまたそれに答えることはしなかった。 自分に与えられた数少ない選択肢はあれども、その中からさらに取捨選択をして出来ることをやるしかないのだ。 大事なものを失い、手にもかけた。 だがそれでも今出来ることをするために前に進もうとしている英二に対し敬慕の念に駆られる。 環は英二の背中に向かって微笑みを向けながら自身のバックを手に取った。 今自分に出来ることとはなんなのか。 簡単な答えだ。 自分とここにいる彼らの身を守り、そして貴明達を探し出す。 その決意は深く重く、再び環の心に刻まれるのだった。 向坂環 【所持品:コルトガバメント(残弾数:残り20)・支給品一式】 【状態:健康】 緒方英二 【持ち物:ベレッタM92・予備の弾丸・支給品一式】 【状態:健康】 春原芽衣 【持ち物:支給品一式】 【状態:健康】 相沢祐一 【持ち物:レミントン(M700)装弾数(5/5)・予備弾丸(15/15)支給品一式】 【状態:体のあちこちに痛みはあるものの行動に大きな支障なし】 神尾観鈴 【持ち物:ワルサーP5(8/8)フラッシュメモリ、支給品一式】 【状態:健康】 篠塚弥生 【持ち物:支給品一式(鎌石消防署内に放置)】 【状態:手当て済(怪我の度合いは後続任せ)両手足は拘束されて鎌石消防署に放置】 共通 【時間:1日目23:00】 【場所:鎌石村消防署(C-05)】 【備考1:弥生の武器は上記のようにそれぞれ移動】 【備考2:祐一一行の当面の目的地は鎌石小中学校 知り合い及びPC探し】 - BACK