悲劇の結末




「智子さん落ち着きなさい。これは北川君達がやったんじゃないわ」
「何でや?うちが来た時にはもうこのみは死んどった・・・コイツラ以外に考えれへんわ!」
皐月が冷静な口調で智子を制止しようとするが、我を忘れている智子は全く聞く耳を持とうともしない。
その剣幕に皐月以外は動揺していたが、皐月はそんな智子相手でも冷静そのものだった。

「仮に北川君達が裏切っていたとして、最初にこのみを殺す必要がどこにあるの?」
「!」
その一言に、智子の動きが止まる。

「私がもし裏切るとしたら、まず最初に武器を奪うわ。もしくは寝室に集まっているところを狙って一網打尽にするわね。
このみ一人を殺しても疑われるだけで逆効果よ」
「ふむ、確かにの」
「言われて見ればそうなんよ・・・」
皐月の論理の正当性に、花梨と幸村は感心顔で頷くばかりである。
しかしそれでも智子は納得出来ていなかった。

「でも、ならなんでこのみは死んでるんや!?自殺でもしたっていうんか・・・・・。
コイツラがショットガンで撃った以外ありえへんやろ!」
「違う!何でかは分からないけど、柚原の首輪が突然爆発したんだ」
「黙らんかい!うちが・・・、うちがあんたらを信頼したせいでこのみが・・・・」
「保科・・・・」
智子の銃を握る手が震えている。その瞳には涙が浮かんでいた。

「分かったわ。じゃあ私が裁いてあげる」
「!?」
驚いて声のした方を振り向く一同。

そこにはいつの間に回収したのか、ショットガンを手にした皐月の姿があった。
そのショットガンの銃口は北川達の方を向いていた。
銃を構える皐月の表情はあまりにも無表情で、迷いや躊躇は一切感じられなかった。

「く・・・・!」
「き、北川!?」
北川は真希を押し退け、彼女を庇うように前に立っていた。

「良い度胸ね・・・・・じゃ、さようなら」
そう言い、北川の頭に向けて狙いを定める皐月。
食堂全体に緊張が走る。

――止めなければならない、止めなければきっと今の皐月は容赦無く北川の命を奪うだろう。
だがその事が分かっていても、皐月の声の冷たさに、迫力に、花梨も幸村も智子も動けない。
北川は目を瞑って黙って最期の時を待っている。


「駄目ぇっ!!」
叫びながら再び北川を庇おうとする真希。
それを見て、北川は慌てて真希を制止しようとしている。
ショットガンによる銃撃は広範囲に及ぶ。下手をすれば二人とも命を落としかけない状況だった。
その光景に、最初に北川達に銃を向けた張本人である智子ですら目を瞑る事しか出来ない。

だが、いつまで経っても銃声が鳴り響く事は無かった。
「・・・・・なんてね。安心しなさい、あなた達の疑いは晴れたわ」
「・・・・え?」
北川達が皐月の方へと視線を戻すと、皐月は北川達には目もくれずにショットガンを念入りに調べていた。

「疑いが晴れたって、どういう事だ?」
「この銃、弾数が一つも減ってないわ。それに床に空薬莢も見当たらない。」
「何やって!?」
「つまり、このショットガンはまだ未使用って事よ。少なくともこの場所ではね。
このみの首輪が爆発した理由は分からないけど、北川君達が犯人じゃないのは確かよ」
大体犯人だったらこんな馬鹿な庇い合いなんてしないわよ、と北川達の方へと視線を戻しながら付け加える皐月。

動機も無ければ凶器も無い。
第一、北川達がゲームに乗っているのなら弁明などせずにショットガンを手に攻撃を仕掛けてきている筈である。
もはや、北川達を疑う理由は存在しなかった。

「そうやったんか・・・・。北川君の話を全く聞かないで、とんでもない事してもうた・・・・。」
謝って許される問題やないけど、ごめん・・・。本当にごめんな・・・・」
「全く、冗談じゃないわよ。北川がこんな事するわけないじゃない・・・・」
若干落ち着きを取り戻した真希が、ぶっきらぼうに言い放つ。
その瞳にはまだ涙が溜まっていた。

「とにかく、これにて一件落着ね。"私"が出ていられる時間はそろそろ終わりみたいだから、後は頼んだわよ」
言い終わるとほぼ同時に皐月がその場に崩れ落ちた。

「皐月っ!!どうしたんやっ!?」
智子が慌てて駆け寄り皐月を抱き起こす。
「・・・・寝てるだけみたいやな」
そう言って、安堵の表情を浮かべる智子。
皐月のおかげで救われた。彼女がいなければどうなっていたか分からない。
いや、きっと最悪の事態になっていただろう。
智子達は今回の最大の功労者を寝室まで運んでいった。

「なあ保科。柚原の遺体を埋葬したら今日はもう休もうぜ」
皐月と遠野を運び終えて、食堂に戻る途中で北川が智子に声を掛ける。
「北川君・・・。怒ってないんか?」
「怒るとか怒らないとかじゃなくて、今やるべき事をしないと駄目だと思うんだ。
俺達は明日も頑張らないといけないんだからな。柚原の分もな・・・・・」
柚原の分も。その言葉で智子も北川自身も改めてこのみの死を実感し、俯く。
そんな彼らの様子を見ていると、真希もこれ以上文句は言えなくなっていた。


皐月達がホテル跡に到着してから約7時間半。
様々な悲しみを生み出しながらも、ようやくこの場所に静寂が訪れようとしていた。




湯浅皐月
【所持品:専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×1個&四分の三個)支給品一式】
【状態:寝室で気絶中】
幸村俊夫
【所持品:無し】
【状態:朝まで休憩してから北川達とは別行動】
保科智子
【所持品:なし】
【状態:同上】
笹森花梨
【持ち物:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾6/10)】
【状態:同上】
ぴろ
【状態:皐月の傍にいる】


北川潤
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾、SPAS12ショットガン総弾薬数8/8発+ストラップに予備弾薬8発】
【状態:朝まで休憩してから村へ(どの村へ向かうかは次の書き手さん任せ)】
広瀬真希
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾】
【状況:同上】
遠野美凪
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾】
【状況:寝室で気絶中、朝からは北川達と共に村へ】


共通
【場所:E−4、ホテル跡】
【時間:2日目00:40頃】

※北川、遠野、広瀬の荷物はショットガン以外は食堂の端に
※花梨の銃と皐月以外の荷物は元の寝ていた部屋に
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