ある愛と欲望の形




「なかなか見つからないな……」
「んに……少し休もう、岡崎朋也」
朋也とみちるは適当な場所に腰掛け、遅めの夕食をとり始めた。

 放送直後に菅原神社で出会った二人は、それから共に知人の捜索をすることにしたのだった。
しかし放送によれば、みちるはターゲットの一人らしい。
うかつに人の多い場所に行くのは危険と判断し慎重に行動した結果、捜索はさっぱり進まなかった。

「やっぱり思い切って村とかに向かうべきだったか」
ターゲットには渚と風子も含まれており、特にこの二人とは一刻も早く合流すべきである。
朋也は判断を誤ったのではないかと思い始めていた。

「ところでさ……放送聞いてからずっと気になってたんだけど」
「何だ?」
「岡崎朋也って結婚してたんだね」
「……その件については触れないでくれ……」
そう、朋也はさっきの放送で思いっきりプライバシーを侵害されたのである。
主催者だかなんだか知らないが、せめて殺し合いと無関係の人権ぐらいは守って欲しいと思った。
「でも奥さん死んじゃったわりにあんまりショック受けてないよね。
探してる人もほとんど女の人だし。もしかしてとんでもない浮気者!?
にょわっ! いまさらだけど怖くなってきた。
みちるが寝たらその隙に襲う気だな! この女なら誰でもいい変態強姦魔!」
「違う! 大声で変なこと言うな!
どっちかというと俺が無理矢理襲われてる側なんだ!」


 一方そのころ、杏は朋也を探して彷徨っていた。
「ふふふ……あたしの愛を裏切った報いは受けてもらうわよ、朋也」
そんな彼女の耳に目的の人物の声が飛び込んでくる。

『この女なら誰でもいい変態強姦魔!』
『違う! 大声で変なこと言うな!』

「……やっと見つけた……まさかあたしというものがありながら
女なら誰でもいい変態強姦魔になってるなんて……酷い侮辱だわ」
会話の内容を冷静に判断する気はないらしい。


「だいたい襲う気なら最初から襲ってるだろ。
あの神社人気なかったし、子供一人ぐらい簡単に押し倒せる」
「んに……ちょっと言い過ぎた」
「まあわかってくれればいいよ……」
変な友人ばかりでいろいろと大変なんだと、朋也は付け加えた。
そこに包丁を構えた杏が姿を見せる。
「この裏切り者ッ!! 覚悟しなさい、朋也!!」
「杏!」

 朋也はやっと友人の一人と再会できた。しかし……
「死ねぇーー!!」
「うわ!」
杏は朋也の胸に包丁を突き立てようと突進する。
朋也はなんとかそれを避けたが、突然の友人の凶行に動揺を隠し切れない。

「お、落ち着け杏! いきなり何するんだ!」
「岡崎朋也……こいつ目がマジだよ……狂ってる」
「白々しいわね朋也。放送聞いたわよ。あたしを裏切って智代と結婚したんですって!?」
「にょわ、ホントに浮気してたんだ……」
「だから違うって! まあ隠してたのは謝る。すまなかった。不本意なものだったからな。
だが『あたしを裏切って』っていうのは何だ?」

 朋也は意味がわからないというように訊き返した。
「何をとぼけてるのよ。あたしが朋也のこと好きなことぐらい気付いてたでしょ!?」
「……は?」

 シーンと場が静まり返った。数秒後、思考が再開された朋也が改めて問い質す。
「いや、待て。俺たちは普通に友達の関係じゃなかったか?」
「あれだけ積極的にアタックしたのに全然気付かなかったとでも言う気なの?」
「いや、だってお前、告白どころか無理矢理押し倒すことすらしてないだろ?」
「……せめて順番逆にした方がいいと思う……」
そう言いたくなるのももっともだが、周りのメンツがメンツなので仕方がない。

「あ、あたしを椋みたいなヤリマンと一緒にしないで!!」
朋也の返答は杏の神経を逆撫でした。
「もういいわ。話すだけ無駄ね。殺してあげる……」
杏は包丁を構え直し、朋也に突き刺そうとした。
しかしその瞬間……

「朋也くんはおれが守るッ!!」
眩い光とともに岡崎直幸が目の前に現れ、鉄拳で杏の包丁を受け止めた。
「親父……いつの間に」
「朋也くんを助けるためにワープしてきたんだ。
ここはおれにまかせて逃げろ!」
朋也は躊躇した。確執はあったが、こんなのでも父親は父親だ。
それにここで置いて行ったらもう会えないのではないか、そんな予感がしていた。
「そ、そんな……」
「逃げるよ、岡崎朋也! お父さんの覚悟を無駄にしちゃだめ!」

「待ちなさい朋也!」
逃げる朋也とみちるを追いかけようとする杏の前に、直幸が立ちはだかる。
「君の相手はおれだ!」
「……いいわ、先に殺してあげる」

 一度少し距離をとり、杏と直幸は向かい合った。
「いい鎧ね……」
「そうだろう。その包丁でこの鉄の装甲は貫けまい」
「ふふふ……あはははははは」
急に笑い出した杏を直幸は怪訝な目で見つめる。
「何がおかしいんだい?」
「いいわ……あたしの必殺技を見せてあげる」

 そう言うと杏は包丁を手放し、バッグから3冊の辞書を取り出した。
「そんな辞書で何をするつもりかな?」
杏はそれには答えず、下着を脱いで股間の割れ目に辞書を装填していく。
「はしたないな……」

「ハッ!!」
杏は掛け声とともに膣に力を込めた。
幾度となく繰り返されてきたオナニーにより極限まで鍛えられていたそこの筋肉は、
装填された物体を超高速で発射してゆく。
「ぐおーー!」
銃で撃ったような音が3回、それを認識する前に直幸は鉄の装甲を貫かれ息絶えた。
衝撃波で倒れた周囲の木々がその威力を物語っている。
膣圧で辞書を飛ばす杏の必殺技、辞書飛ばしであった。

「口ほどにもないわね……」
そんなセリフを残して朋也たちを追いかけようとする杏。
しかし再び彼女を遮るものが現れた。

「杏ちゃんも少しはやるようになったの」
「お姉ちゃんはまだまだ全然駄目よ。なんといっても本番経験が『0!』なんだから。
今時処女なんて流行らないわ。そんなだから朋也くんを他の女に寝取られるのよ」
「寝取ったのは椋ちゃんなの」
「あら、坂上さんも古河さんもヤっているわよ」
「……私ももっと積極的に襲うべきだったの」
「そうね、あのころのことみちゃんはまだまだ未熟だったわ」

 杏は目が点になった。目の前に突然現れたなんだかぶよぶよした球状の物体から、
椋とことみ、二人の人間が生えていたからだ。
しかも二人ともほとんど裸、申し訳程度にシースルーの鎧が装着されているだけだ。
羞恥心も何もあったものではない。
ことみは右手に男性器を模ったと思しき剣を持っており、股間にはペニスがそそり立っている。
そして椋からは数え切れないほど沢山の触手が伸びており、絶え間なくうねうねと動き回っている。
まるで


              バ   ケ   モ   ノ


みたいなそのよくわからない物体は、しかしそれでいて妖艶であり、
見ているだけで愛液がだらだらと零れ落ちていきそうなぐらい性欲を活性化させる何かがあった。

「りょ、椋!? ことみ!? 何者!?」

「なんだかんだと聞かれたら」
「セックスするのが世の定め」
「世界中のイケメンとセックスを愉しむため」
「全宇宙のイケメンとセックスを愉しむため」
「愛と欲望のイケメンセックスを貫く」
「エロティックセクシーなセックスの神」
「一ノ瀬ことみ」
「アーンド藤林椋」
「イケメン求めて魔界に旅立ったりU−1化したりする二人なら」
「セックスでビッグバンだって起こせるぜ!」

「「The God of Sex 降臨(なの)!!」」




 【時間:2日目午前0時ごろ】 【場所:E−05】
 一ノ瀬ことみ・藤林椋 融合体
 【持ち物:書き手薬×3、性なる剣、性なる鎧、ベレッタM92、イケメン触手キョウ、支給品一式×2】
 【状況:性神(The God of Sex)】
 藤林杏
 【持ち物:包丁、支給品一式】 【状態:オナニーマスター、性神の登場に驚愕中】
 岡崎朋也
 【持ち物:お誕生日セット(クラッカー複数、蝋燭、マッチ、三角帽子)、支給品一式(水、食料少し消費)】
 【状況:逃走】
 みちる
 【持ち物:アイテム未定(武器ではない)、支給品一式(水、食料少し消費)】
 【状況:逃走】
 岡崎直幸
 【所持品:鉄拳、ドス、支給品一式】 【状態:死亡】

 【備考:直幸の所持品はその場に放置】
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