「ぷひー! ぷひー!」(おい! 嘘だろ! せっかくまともな飼い主が見つかったってのに!) ボタンは崖から落ちて息絶えた春原芽衣にすがり、泣き声を上げていた。 「ぷひー……」(どうして……どうしてこんなことに……) ボタンは芽衣、英二と共に鎌石村に向かっていたはずだった。 そうだったはずなのに、いつの間にか二人と一匹は崖に立っていた。 そして芽衣は、空から降りてきた翼人に妙な術を掛けられ崖下に落とされてしまったのだ。 「ぷひー……」(俺のせいだ……俺がワープポイントに気付かなかったから……) 思えば辛く苦しい日々だった。 力を封印され地上に落とされたところを杏に拾われてから、 ボタンには彼女のオナペットとしての性活が待っていた。 そこには、かつて神をその背に乗せて天を駆けていたころの面影は微塵も残っていなかった。 「ボタン、高速バイブ!」 「ぷひー! ぷひー!」(俺は性猪じゃなくて聖猪だってーの!) それはまさに地獄だった。 毎日のように彼女のヴァギナを、アヌスを舐めさせられ、 その舌を、前足を、後ろ足を、あるいは全身を入るところまで挿入させられた。 毎日の食事は彼女の愛液だった。 隣の部屋から聞こえてくるおぞましい喘ぎ声を聞き、 向こうよりはましかもしれないと思えることだけが唯一の救いだった。 「ぷひー……」(俺は……これからどうするべきなんだ……) 「うーん、こっちからボタンの匂いがするような気がする……」 藤林杏は匂いを頼りにボタンの捜索をしていた。 朋也2号、3号を失った今、彼女の性的快楽を支える三種の性具はボタンしか残っていない。 なんとしても見つけなければならないという思いが、 彼女の嗅覚を驚くほどパワーアップさせていた。 「ぷひー!」(やばい! 杏がこっちに来る!) ボタンはまさに性鬼と呼ぶ他ない元飼い主の接近を察知し、震え上がった。 このまま捕まったら、ただのオナニーの道具と成り果てる。 それだけはなんとしても避けなければならない。 しかし今いる場所は崖下の海岸、身を隠す場所などなかった。 「ぷひー……」(万事急すか……) 「匂いが強くなってきたわね。ボタンはこの辺りにいるはず……あっ!」 杏は倒れているボタンを見つけ、駆け寄った。 「やっと見つかったわ。さっきから欲求不満でほんとに辛抱たまらなかったのよね。 さっそくだけど、イクわよボタン! 超高速バイブ!」 そして彼女から、慈悲のかけらもない命令が下された。 ・ ・ ・ 「ボタン! 何をやってるのよ!」 杏の怒りの声が響く。何度命じても、ボタンはピクリとも動かなかったのだ。 「ちゃんと振動しなさい! 言うこと聞かないと皮を剥ぐわよ!」 しかしボタンには全く反応がみられなかった。まるで死んでいるかのように。 杏はボタンの脈に手を当てた。 「嘘でしょ……ボタンが……死んでる」 そこに血液の流れは感じられなかった。 彼女は次にボタンの胸に耳を当てたが、心音は聞こえなかった。 「う……そ……」 杏は大いなる絶望に包まれた。 一番の性パートナーの死、受け入れがたい現実に打ちひしがれた。 ボタンの近くには、ひしゃげた誰かの死体がある。 横は断崖絶壁、誰かに突き落とされたのだと杏は判断した。 「誰よ! ……誰がボタンを殺したのよ!」 全ての希望は絶えた。もう何もしたくない。 こんなときはロワちゃんに逃避するに限る。 彼女はパソコンの電源を入れた。 放送保管スレッド 1:びろゆぎ@管理人:一日目 21:02:47 ID:haKarowa3 このスレッドでは、聞き逃した方、もう一度聞きたい方のために定時放送などをアップロードしていきます。 「そういえば、さっきなんか放送あったわね。オナニーに夢中で全然聞いてなかったけど」 別に放送の内容なんてどうでもよかったが、一時でも気を紛らわしてくれればと、 彼女はアップされた放送を聞いてみることにした。 それが彼女にさらなる絶望を突きつけることになるとも知らず…… ──────────────────────────────────────────────── ───厚生労働省、特別人口調査室の榊です。今回の参加者の権利発生に関するお知らせを致します。 住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん、 住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん。 10月14日に住民基本台帳番号33218802の岡崎がこっそりと市役所に婚姻届だしていた 住基番号38221088番の岡崎智代さん、旧姓坂上智代の死亡が、午後12時32分に確認されました。 配偶者死亡の為、180日後の3月25日、午後12時33分を持って岡崎様に再婚を行える権利が発生した事を ここにご報告申し上げます。 ──────────────────────────────────────────────── 放送を聞いた杏は、あまりの内容に意識を失いかけた。 「朋也が……結婚? 智代と? 何よ……それ」 朋也はあたしと付き合うはずだったのに 朋也はあたしと結婚するはずだったのに 朋也のために処女も大切にとってたのに 「あはははははははははははくぁwせdrftgyふじこlp!!」 希望は全て絶えたと思った。そんなの嘘だった。 性的欲求解消の術を断たれることなんて、その源を断たれることに比べたらどうということもない。 自分は誰を想い、何のためにオナニーをしてきたのか…… そんなの決まってる…… 朋也への愛のため。 「もういい! みんな死んでしまえ!! 朋也も椋もことみも渚もみんなみんな殺してやる!! くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!!!」 杏は奇声を上げてその場を走り去った。 「ぷひー」(助かったぜ……なんかパソコン忘れてったみたいだな) 杏がいなくなったのを確認し、ボタンはそっと起き上がった。 「ぷひー」(まさか心臓を千年に1回しか動かさない技が役に立つ日が来るとは……いや待て) そしてボタンはおかしなことに気が付いた。 力が封印されているのなら、こんな技が使えるはずがないのである。 「ぷひー」(もしや封印が……) ボタンの毛の色が金色に染まっていく。 それと同時に、ボタンはこの島にいるもう一匹の獣の気配を感じ取った。 「ぷひー! そうか、我が宿敵ポテトの封印も解けたか! ついに決着を着ける時が来たぜ。待っていろ、すぐにそちらに向かってやる」 【時間:午後9時半ごろ】 藤林杏 【場所G−03】 【持ち物:包丁、辞書×3(英和、和英、国語)、支給品一式】 【状態:オナニーマスター、朋也を殺す】 ボタン 【場所H−03上空】 【持ち物:ノートパソコン(充電率90%)】 【状態:聖猪(飛行能力あり)、ポテトと戦う】 - BACK