【前回までのあらすじ】 鬼姉妹次女・梓さんからの誤解を受け、喧嘩を吹っかけられた柳川さん。 そんな彼を救ったのは、自らを盾に梓の爪の前に飛び出したさゆりんでした。 しかし梓の与えたダメージは致命傷で、さゆりんは命を落としてしまいます・・・。 柳川さんは涙しました。 涙し、そのやるせない思いから鬼に進化してしまいました! ・・・しかし、島には能力制限がかかっているらしく、それを越えての鬼変化は柳川さん自身にも大ダメージを与えます。 あと、柳川さんの服にも大ダメージを与えます。 柳川さん自身はともかく、服に関しては壊滅的です。 今、柳川さんはあられもない姿で、この島に放置されてしまったのです・・・。 「うえ〜ん、寒いよさゆりん〜」 時刻は深夜、夜風は柳川さんの柔肌を痛めつけます。 仮眠どころではないです、このまま眠ってしまうと永眠しそうです。 ガタガタと震える柳川さん、一応建物だしーと甘く見ていていましたが、この廃墟。 スタート地点で使われた→つまり一部爆破されたということで、とにかく隙間風がひどいのです。 今更新しい寝床は探せません、探す気力も体力も0です・・・柳川さんぴんち。 そんな時です。建物が、ミシミシと音をたて始めました。 「はて、誰か来たのかな」 柳川さんは部屋の隅っこにいたので、もう逃げも隠れもできませんでした。 仕方ないので、殺気だけは放っておきます。 「えっと、誰かいるんですか〜」 「こ、こら!不用意に声をかけるんじゃないっ」 「で、でももしケガをした人だったら・・・」 男女の会話。微笑ましいです、数時間前の自分とさゆりんの姿を重ねてしまいそうになります。 「う、羨ましくなんかないんだからね!」 「あ、芳野さん。ここの部屋から何か声が聞こえましたよ」 「マジで?」 (しまった、罠だったか?!) ついつい声を上げてしまった柳川さん、大ぴんちです。 カチャ・・・ドアを開け、部屋に踏み入れてきたのは・・・女学生と繋ぎの男でした。 「きゃっ!」 「うお、何で素っ裸の男がこんな所に?!」 手で顔を覆うもののしっかり指の間から柳川さんの裸身を眺める女学生と、リアクションが普通過ぎて面白くない男。 敵意はなさそうです、柳川さんは心底ほっとしました。 「これに関しては説明させてくれないか、少々複雑な事情があってな・・・」 股間を隠しつつ正座で説明し始める柳川さん、女学生と男もつられて正座してしまいます。 「かくかくしかじかで・・・とにかく、大変だったんだ」 「そうですか、可哀想です・・・。私、長森瑞佳です。何か協力できることがあるようでしたら、遠慮なく言ってください」 女学生こと瑞佳さんは、非常に優しい女性でした。 思わず柳川さんの涙腺も緩みます。 「すまない・・・では、その繋ぎでも貸してくれないか」 「え、俺?」 「このままだと寒くて風邪を引いてしまいそうでな」 「いや、これを渡したら今度は俺の露出ショーじゃないか・・・」 「それでしたら、私いいもの持ってますよ」 ごそごそ。瑞佳さんが支給された鞄を探ります。途端、隣の男の表情が「げっ」という感じで歪みました。 じゃーん。瑞佳さんが取り出したのは、可愛らしい制服三種でした。 「防弾性らしいので、体にも安全です。ホックの位置でS〜XXLまで即対応、優れものなんですよ」 「ほほぅ、それは素晴らしい」 「このトロピカルタイプなんて、ちょうどパンツになりそうですね」 「よし、早速はいてみよう」 ちょっとキュッとなりすぎかもしれませんが、普段ビキニパンツを愛用している柳川さんにはむしろちょうど良かったようです。 これで正座をする理由もなくなりました、体勢を崩して柳川さんは二人に感謝の握手を求めます。 「・・・や、遠慮しとく。とりあえず、手、洗ってからな」 男の拒絶の言葉は、柳川さんのガラスの心にヒビを入れます。 ですが男はそれに気づきません、こういう男はきっとすぐ女にも愛想をつかされるだろう・・・と柳川さんは思いました。 「で、何であんたはフル装備する、その制服を」 「寒いからだ」 「それでも腹でてるが・・・何ならもう二着も着たらどうだ?上から」 「いや、防弾性のくせに防暖性も兼ねているらしい。素晴らしいな、これ一枚でぬくぬくだ」 「お役に立てて良かったですよ」 足手まといこと瑞佳さんも、やっとこさ自分が役に立つ時がきてくれたようでご機嫌です。 「ついでに私も着替えちゃいましたよ、浩平に見てほしいな」 「嘘、いつ?!」 男が柳川さんに気を取られている隙にです。 女学生の生着替えを見逃したことに対し、成人男子達はこっそり舌打ちをしました。 一方瑞佳さんは、黒ストまで決めてぱろぱろタイプを見事に着こなしているようです。 これはいいビジュアルです。・・・さて、残る制服は一着。 「はい、芳野さん。あとは芳野さんで完成です」 「・・・は?」 「うむ、お揃いか。いい響きだ」 「よくねーよふざけんなよ」 「う〜ん、無理やり剥いちゃえ」 「了承」 「は?!ふざけ・・・わぁ〜〜〜〜!!!!!!」 今ここに、3輪の花が誕生しました。 長森瑞佳 【持ち物:某ファミレス仕様防弾チョッキ、ぱろぱろ着用帽子付・自分の制服・支給品一式】 【状態:ご満悦】 芳野祐介 【持ち物:某ファミレス仕様防弾チョッキ、フローラルミント着用・繋ぎ・Desart Eagle 50AE(銃弾数4/7)・サバイバルナイフ・支給品一式】 【状態:異常はないけれど精神的に疲労】 柳川 祐也 【所持品:某ファミレス仕様防弾チョッキ、トロピカルタイプ着用】 【状態:新しい仲間ができて嬉しい】 【能力の制限について:エルクゥ化できる条件は、喜怒哀楽の感情が一定以上に 昂ぶった時(判断は書き手様にお任せします)。回数は10時間に1回程度で 1回の変化につき、最大で1時間まで。その後、30分ほどは激痛と脱力感に 見舞われて無防備になる・・・らしい】 【時間:午後11時半】 【場所:H−7、元スタート地点の廃墟】 - BACK