決断の責任




夜の廃墟のホテル、食堂内での爆発後、一発の銃声が部屋中に木霊した
無論その銃声が食堂から廊下へ廊下から皐月たちの部屋に伝わるのは当然のことだった
それが皐月達を食堂へ導くのを早めたのは言うまでもない
「どうしたの!!」
湯浅皐月は食堂に入ると同時に開口一番叫んだ、用心のため手には智子のランダムアイテムであるバズーカと自分の所持品を持ちながら…。
「そうやったな…防弾チョッキ付けとるんやったな、忘れとったわ!」
血だらけの三人組みに銃口に硝煙を燻らせて保科智子の怒号が飛び交う
部屋の床は一面が赤一色、血の匂い、地獄絵図そのものだった
「………っ」
割烹着を着た皐月と同じぐらいの年齢の少年、北川潤は脇腹を押さえ呆然としていた
枯れた声で呻き声を上げながら智子をじっと見つめていた
防弾性があるとは言え銃弾の衝撃までは緩和されない、そしてこのみの惨劇…彼にはどうすることもできない状況だった
(…言い訳が出来ない…しかも寝ている皆も来ちまった…。)
北川は死を覚悟していた、何故このみの首輪が爆発したのか理由は解らない、彼女を突き飛ばしたのは彼の咄嗟の判断だった。
首輪のカウントダウン、必要最低限の犠牲、広瀬と遠野を失いたくない一心、…そして今。
「テーブルの上の銃で(ショットガン)撃ったみたいにドタマ打ち抜いて、さっさとこのみの所に送ったるわ!」
先程の皐月の叫び声は聞こえず、目を血走らせ北川に怒鳴り散らす…。

智子にしろ事の次第は把握できていない、しかし数時間前のエディの件、テーブルの上の北川のショットガン
首から上を吹き飛ばされたこのみの死体、血だらけの三人組、そしてそれを信用した自分自身…。
―――智子は北川達と同じぐらいに自分が許せないでいた―――
彼女は責任感が人一倍強い、自分が北川達を信頼できると判断したからこそホテル内に招き入れた…それは彼女が下した決断、そして今の現状…。
(皐月のこと偉そうに言えんわ…ごめん…ことみ)
それが懺悔の言葉であり、けじめの決意でもあった…智子の銃口が北川の顔面に向けられる、北川は覚悟を極める…。
(ごめん…真希、美凪…。)
心の中で初めて彼女達を名前で呼ぶ北川…。

――――――ガバッ!!!――――――

再度銃口が北川向けられた瞬間、不意に北川に覆いかぶさり彼を庇う影…広瀬真希だ。
子供の様に泣きじゃくり、ダンゴ虫の様に縮こまりながら、北川を庇う

「――――――――――――――――――!!!」
爆死したこのみの返り血を浴びた顔で涙を流し言葉に為らない言葉で頭を横に振りながら智子に叫ぶ広瀬。
「そこを退きぃや!!!」
涙を流し叫びながら銃身が震える智子、尋常じゃない顔で涙を流し懇願する広瀬…。
(うちの…私の責任や…私の所為でこのみが…このみが――――――――――!!!)
「やめて!智子さん―――――――――――――!!!」
事態を把握出来ていない皐月、尋常でない智子、呆然とし覚悟する北川、泣きじゃくり北川を庇う広瀬、とにかく皐月は叫んだ。
智子の銃38口径ダブルアクション式拳銃の引き金が引かれようとする!!

パシッ!―――――――――――――――――――コトン。

軽い音と共に床に落ちる智子の持つダブルアクション式拳銃、湯浅皐月と同じ部屋で寝ていた幸村俊夫の手刀によるものだった…。
同じく俊夫と一緒に来た笹森花梨が智子の銃を直ぐ様拾う…。
部屋中一辺を沈黙が支配する
「………みんな落ち着くんじゃよ…。」
俊夫の言葉が部屋一面に重く圧し掛かった。

(如何すればいいの、宗一、エディさん…。)
ことみの死体、激怒する智子、呆然とする北川、泣きじゃくる広瀬、気絶する美凪、
智子から見れば北川達が殺した風に見れたのかもしれないが、皐月から見れば何もかもがおかしく見れた。
皐月はまだエディの事を立ち直れてはいないものの命がけで思考を張り巡らした
今の状況を冷静な判断が出来る人が欲しい、皐月は心の底から願った…そして。
何も言わずバッグの中からセイカクハンテンダケを取り出し1/4ほど食べて沈黙した…。

エディへの約束、自分の決意、このみの死の意味、北川達の弁護、先走って智子を自分の二の舞にしたくない
全ては皐月の双肩に掛けられていた…。




湯浅皐月
【所持品:専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×1個&四分の三個)支給品一式】
【状態:性格反転(クール)事態の把握は出来ていないが、先走って智子を自分の二の舞はさせない】

幸村俊夫
【所持品:無し】
【状態:エディの件もあり誰にも誰にも軽はずみな行動はさせたくない】

保科智子
【所持品:なし】
【状態:混乱、激怒(北川よりも自分に対しての怒りの方が大きい)】

笹森花梨
【持ち物:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾6/10)】
【状態:事態の把握は出来ていないが、智子に銃を渡さない

北川潤
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾】
【状態:呆然 脇腹に痛み(智子を怨んではいない)】

広瀬真希
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾】
【状況:号泣(北川に庇うように抱きついている)】

遠野美凪
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾】
【状況:気絶】

ぴろ
【状態:爆発音に驚いて食堂の端に逃げた】




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【場所:E−4、ホテル跡】
【時間:1日目23:55頃】
※北川、遠野、広瀬の荷物はショットガン以外は食堂の端へ、ショットガンのみすぐ近くにテーブルの上に
※皐月以外の荷物は元の寝ていた部屋に

【備考】
SPAS12ショットガン総弾薬数8/8発+ストラップに予備弾薬
北川はゲーム開始から一発も使ってはいない
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