Akira was caught napping




「お前、ゲームに乗っているのか?」
彰は家の前に立ったまま電動釘打ち機を構え、警戒している。
彰はゲームに乗っている者に対しては、全く容赦しないつもりだった。
ゲームに乗っている者―――それは美咲に危害を及ぼす可能性がある者に他ならない。

「いや、すまない・・・・誤解させてしまったようだな
俺は情報を集めたいだけさ」
そう言って、苦笑する岸田。
「なら、なんでさっきみたいな事を言ったんだよ」
対照的に彰は全く警戒を解いておらず、電動釘打ち機を構えたままである。

「冗談のつもりだったんだ、悪かったよ」
「・・・・悪いが信用出来ない。まずはナイフを地面に置いてもらおうか」
「あ・・・・」
言われて初めて気付いたかのように、岸田は慌てた様子でカッターナイフを地面へと捨てた。
そして岸田は両手を前に出し、何も持っていない事を多少大袈裟な動作で示した。
「これで敵意が無い事は分かってもらえただろう?その物騒な武器を降ろしてくれないかな」
それでも、彰は武器を降ろすそぶりを全く見せなかった。
「情報交換するだけならこのままでも出来るだろ?」
彰は目の前の男に胡散臭さ、そしてある一種の嫌悪感を感じていた。
それは全く根拠の無いただの直感だったが、何故か信用する気になれなかった。

(チ、このままじゃどうしようもないな・・・。)
岸田は内心毒づいていた。
あの釘打ち機をどうにかしない限り、下手は打てない。
この少年は予想以上に警戒心が強い。懐柔するのは難しいだろう。
そこで岸田は別の作戦を試してみる事にした。
「仕方ないな・・・そのままで良いよ。君はゲームには乗っていないんだな?」
「ああ。僕の敵は美咲さんを狙う奴だけだよ」
「美咲さん?誰だそれは?」
「僕にとって一番大事な人だよ。美咲さんだけは絶対に守らないと・・・」
「そうか・・・、詳しく話を聞かせてくれないか?力になれるかもしれない」


そうして、彰は美咲の外見の特徴等を岸田に伝えた。
「どうだ?何処かで美咲さんを見てないか?」
「残念ながら見てな・・・・」
そこで岸田は何かに気付いたような表情になった。
「どうしたんだ!?何か思い出したのか!?」
彰は凄い剣幕で情報を聞き出そうとしていた。
だが、岸田はそれには構わずに彰の後方を指差していた。
「その美咲さんって・・・、今そこを歩いてる子じゃないのか?」
「え!?」

彰は大慌てで後ろを振り向いた。だが、そこには誰もいなかった。
「なんだよ、一体どこにいるって――――」
喋り終わる前に、彰の体に衝撃が走った。

彰は腹部を強打され、地面に倒れた。
「あぐッ! 」
続いて手を蹴られ、釘打ち機を蹴り飛ばされた。
岸田が素早くそれを拾いに走っていった。

――――――騙された!
やはり、彰の直感は正しかった。
彰にとって幸いだったのは、岸田が強く蹴りすぎたせいで釘打ち機が家の庭の方まで飛ばされた事。
そのおかげで、何とか彰は起き上がるだけの時間は稼ぐ事が出来た。
「あああっっ!!」
彰は全身の力を振り絞りデイバックを岸田に投げつけた。
「ぐおッ!」
バックは釘打ち機を拾おうとしゃがみ込んでいた岸田に見事に命中した。岸田はバランスを崩している。

彰はその隙に逃げ出した。
「う・・・」
腹が酷く痛んだが、休んでいる余裕は無い。

「クソガキが、待てぇ!!」
釘打ち機を回収した岸田が怒りを露にしつつ後ろから追ってきていた。
岸田は彰目掛けて釘打ち機を連射した。
だが扱いに慣れいない上に走ったままでは狙った場所に飛んでいくはずが無く、釘は空を切るだけだった。
「くそ・・・・、まあいい、武器は手に入ったからな」
ほどなくして岸田は彰を追う事を諦め、彰の鞄を回収しに戻っていた。

彰の鞄には釘打ち機用の大量の五寸釘や、鋸、食料などが入っていた。
それを見た岸田は、邪な笑みを浮かた。
「ククク・・・・・これだけあれば十分だ。明日が楽しみだ!」




岸田洋一
【時間:午後8時30分】
【場所:C−04】
【所持品:鋸、トンカチ、カッターナイフ×2、電動釘打ち機8/12、五寸釘(24本)、支給品一式】
【状態:マーダー(やる気満々)】

七瀬彰
【時間:午後8時30分】
【場所:C−05】
【所持品:無し】
【状態:右腕負傷、腹部に痛み。ややマーダー(美咲の敵のみ排除)】
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