「私ら何やっとるんやろ。あっちに行ったりこっちに行ったり」 「逆に考えるんダ。マーダーをうまく避けてると考えるんダ」 保科智子とエディは、ばったり出会って以来ひとまず協力することにしたのだが、 途中でトラの塩漬け肉を見つけた他には目ぼしい出来事がなかった。 「ちょっと時間が早いガ、とりあえず夕食にするカ」 「そうやな。食べれるうちに食べといたほうがええやろうし」 二人が適当な場所に座り食事をとろうとしたとき、 一人の少女が向かってくるのが見えた。 「んー! 風子激しく困りました。代わりのナイフが見つかりません」 彼女はナイフの柄の部分と木で出来た何かを持っており、 まわりは全く見ていないようだ。 「これではヒトデが完成しません。ぷちさいあくですっ!」 よくわからないことを口走りつつ、彼女はそのままエディにぶつかった。 「わっ」 「前はちゃんと見たほうがいいゾ」 「なんか変な人がいますっ!」 「いきなり失礼なヤツだナ」 「肌が黒いです!」 「人種差別はよくないで」 「さいあくです。風子そんなことしてませんっ」 いまいち話がかみ合わないが、とりあえず3人は自己紹介を済ませた。 「風子はおねぇちゃんのためにヒトデを彫っています」 「それヒトデなんか?」 「そうです。完成したらもの凄くかわいいですっ!」 智子とエディは返答に困った。 「私らはこれから食事にするんやけど」 「なんですかその肉は! 風子のバッグにはそんなもの入っていません。ずるいです」 「これは向こうのほうで積まれてたんダ。トラの肉らしいゾ」 「んー! 風子も食べたいです!」 そんなこんなで3人の食事が始まった。 「意外とうまいんやな」 「この塩加減が絶妙ダ」 「風子、トラなんて初めて食べました。あ、パンもありますっ!」 風子はエディの古河パンに目を留めた。 「それはやめといたほうがいいと思うゾ」 「これは渚さんのところのパンです。前に作ってもらったヒトデパンは素晴らしい出来でした!」 「……これ、実は美味いのカ?」 「そうは見えんけどな」 3人は恐る恐るパンを口にしてみた。 「……不味いナ」 「……粉っぽすぎるわ」 「んー! 小麦粉ですっ!」 多少のハプニングも経つつ、3人は食事を終えたのだが…… 「あんた、なんか目光っとらんか?」 「何言ってるんダ?」 ・ ・ ・ 「うおーー! オレッチはムティカパダ! ムティカパになるんダ!」 「私はムティカパやー! ムティカパなんや!」 「んー! 風子そこはかとなくムティカパですっ! ムティカパヒトデハリケーンですっ!」 彼らには知る由もなかった。 その肉にはムティカパの血を得て進化した恐るべき病魔が潜んでいることを。 3匹の獣が今、島に放たれた。 伊吹風子 【時間:午後5時50分ごろ】 【場所:D−04】 【持ち物:スペツナズナイフの柄、彫りかけのヒトデ、支給品一式(水なし、食料少し消費)】 【状態:ムティカパ症候群L1】 エディ 【時間:午後5時50分ごろ】 【場所:D−04】 【所持品:支給品一式(水、食料少し消費)、古河パン×27、ムティカパの塩漬け×2】 【状態:ムティカパ症候群L1】 保科智子 【時間:午後5時50分ごろ】 【場所:D−04】 【所持品:支給品一式(水、食料少し消費)、専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾×3、ムティカパの塩漬け×2】 【状態:ムティカパ症候群L1】 - BACK