爪。 最後に見えたのは、それだけだった。 それだけが、見えた。 人の命は、こんなにもあっけなく消えていく。 私の命は、こんなにもあっさりと消えていく。 くそ、なんかすげー……理不尽。 寒いな……。 (―――あなたも、こっちへいらっしゃいよ) 誰よ……。 お迎えなんていらないよ……。 ったく、寒い……。 (雪が積もってるからね) 雪、ってさ……。 やだよ、そんなの……寒いの嫌いだよ……。 (でも、だめなんだよ) 何が……。 (あなたたちはみんな、こっちにくることになっているの) どうして……。 (そういう風に、きまっているから) 誰が、決めたのよ……。 (それは―――) 声が、薄れていく。 代わりに光が、拡がって、 【時間:すでに終わっている】 柚木詩子 【状態:死亡】 - BACK