「……あいつロリコンの上にストーカーなの!!」 恥ずかしさから、気が付いたらあたしはそう叫んでいた。 でも叫んだ瞬間に胸がチクリと痛むのを感じた。 風邪を引いたときのように顔の体温が上がっていて、体中火照っている感じだ。 なんだろう、これは。 あの自称ハードボイルドに好きだなんて告白されてから胸の動悸が止まらない。 ――まさか、そんなわけないよね。 ――だってハードボイルドだよ?ロリコンだよ? ゆっくりと顔を上げると自称ハードボイルドは全身を抑えながら立ち上がって 今さっき現れた女の人たちに向かって身構えていた。 金髪の女の人は鞄からロープを取り出して、刀を持った子は柄を握り締めなおして、 それぞれが自称ハードボイルド(呼びにくいわね……)と向かい合っていた。 後ろでは興奮してる二人を必死になだめているどこか落ち着いた雰囲気の二人の女性もいた。 だが聞こうともせずにその距離はじりじりと縮まっていく。 自称ハードボイルド(名前聞いておけばよかった……)は助けを求めるようにあたしの方に顔を向けた。 その瞬間また顔がボッと熱くなるのがわかって必死に視線を逸らしている自分がいた。 ――なんなのよホント! 不意にお姉から聞いた話を思い出す。 同じクラスの男の子の前に立つといつも今のあたしのような感じになるみたいなことを聞かされた記憶。 その男の子はお姉の片思いの相手……。 そこであたしは考えを否定するように首をブルブルと振った。 ――そんなわけないないない、ないったらない! ――だってハードボイルドで、ロリコンで、その上天パだよ? 「神妙にお縄をちょうだいするネ!」 「あううーーーっ!」 あたしの心は再び現実に戻された。今にも飛び掛りそうな二人の姿を見て、 考える前に私は車椅子を自称ハードボry(これでも長い…)の前に走らせていた。 そして気付いたら両手を横に大きく広げていた。 膝の上に乗っていたピコピコ鳴いている犬みたいな生き物もあたしの真似をして前足を広げていた。 器用なものだと思わず苦笑する。 「Why?」 あたしの行為に金髪の女の人が言っていた。 全くだ、あたしだってなんでこんなことをしたのかわからない。 わからないけど、体が動いちゃったんだからしょうがないじゃない。 「……ストーカーってのは間違い、ごめんなさい」 もはやあたしの考えなんてどこへやら、身体も口も、全てが勝手に動いてしまっている。 けしてしたくないわけじゃないけど、むしろこうしたかったのかもしれないけど、それを認めてしまったら 今自称ry(もうこれでいいや)に抱いてるこの気持ちがなんなのかもを認めなくちゃいけない気がしてならなかった。 とりあえずは事のあらましを目の前の四人に簡単に説明した。 あたしと七海が変なオバさんに襲われたこと。 その時現れて助けてくれたのが自称ryなこと。 そして告白されたところにタイミング良く四人が来たこと。 そのシーンを思い出して、あぁもう何度も聞かされてうっとおしいかもしれないけど顔が火照る。 なんでキス迫られて目なんか瞑っちゃったんだろあたし。 チラリと目線を横にやったのが間違い、横に座る自称ryと目が合ってしまって慌てて目を逸らした。 向こうも気まずそうに頭をボリボリ掻いてた。 なんなのよ、好きならもっとそれっぽく見せなさいよ! ……って何期待してんのあたし、違う違う! 「フーーーーン……」 なにやら嬉しそうに顔をとろけさせると、金髪の女性、宮内レミイさんが言った。 「邪魔はしないから続きをしてイイヨ!」 「へっ!?」 何を言ってくれてんのこの人は!? 「そうですね、気になるようでしたら私達離れてますから」 とお見合いの席の仲人さんみたいなことを言う久寿川ささらさん。 いや、ちょっと待ってよ!って自称ryも困ってるんだか照れてるんだかわからない顔してないでなんか言いなさいよ! だがあたしの困惑をよそに四人はすくっと立ち上がると荷物を持って横たわる七海のほうへと歩いていった。 それでも二メートル位しか離れてはいなかったが…。 え、って言うかなにこの空気? 続きって何?キス?キスしろってこと? 四人は見て無い振りをしてるつもりなのだろうが、ちらちらとこっちを見ているのが丸わかりだった。 自称ryはゴホンと一つ咳払いをすると、またもや頭を掻きながらあたしの前に近づき手を取った。 「変な感じになっちまったんだが、さっき言ったことは嘘じゃねぇ」 ってその気になってるし! そして再びされた告白に私の心臓は爆発寸前に暴れていた。 自称ryの手が私の顎に伸びた。さっきとまったく同じ展開。 どどどどどどうしよう。 自称ryの顔がゆっくりと近づいてきた。 っていつの間にかあたし目瞑ってるし。 え、え、このままするの?するの?しちゃうの!? そして気付けばあたしは膝の上に乗っていた犬を自称ryの顔に押し付けていた。 震えながらそっと目を開けると、自称ryと犬の唇が見事にドッキング。 あ、なんかプルプル痙攣し始めた。 ゆっくりと犬を膝に戻してみるも、自称ryはピクリとも動かない。 そして固まった姿のまま映画のスローモーションでも見ているように後ろに倒れていった。 でもそんな姿を見ながらもドキドキは止まらなかった。 言葉でなんか表現したくないけれども、これはやっぱり恋なのか。 目の前にある変な顔を見ながらそうでないことを祈りながらも、それでも良いかとも少し思ってるあたしがいた。 高槻自称ry 【所持品:食料以外の支給品一式】 【状況:称号ロリコンストーカー、ポテトと熱い接吻】 小牧郁乃 【持ち物:500S&Wマグナム(残弾13発、うち予備弾の10発は床に放置)、写真集二冊、車椅子、膝にポテト、他基本セット一式】 【状況:ツンデレ】 立田七海 【持ち物:フラッシュメモリ、他基本セット一式】 【状況:意識不明】 久寿川ささら 【所持品:スイッチ(未だ詳細不明)、ほか支給品一式】 【状態:生暖かい目で高槻と郁乃を見守る】 沢渡真琴 【所持品:日本刀、スコップ、食料など家から持ってきたさまざまな品々、ほか支給品一式】 【状態:同上】 宮内レミィ 【所持品:忍者セット(木遁の術用隠れ布以外)、ほか支給品一式】 【状態:同上】 ほしのゆめみ 【所持品:支給品一式】 【状態:同上】 共通 【時間:1日目21:45時頃】 【場所:F-8 無学寺】 【備考:おたまは床に放置されたまま】 - BACK