娘達が危険な目にあっているかもしれない。 水瀬秋子は帰り道を急いだ。その途中、別な足音に気がついた。 秋子は足音をもう一度確認する。 少し警戒しているのか小走りになったり立ち止まったりしているが、足音は消えていない。 その事から接近してくる者は複数だと判る。 「マーダーでは無さそうだけど、だんだん近づいてくるわね。」 娘達が寝ている以上、家の近くで拳銃などの音の出る武器は使いたくない。 幸い、包丁があるし、名雪に刺さっていたスペヅナスナイフもある。 秋子は物音を立てぬ様、塀に沿ってそっと近づいて行った。 近づくと話し声が聞こえた。どうやら男女の2人組のようだ。 「ちっ、ここも鍵がかかってやがる。」 「うーへい。無理するな。着替えなくてもうーは大丈夫だから。」 春原陽平はルーシー・マリア・ミソラと、まだ着替えを探していた。 「バカ。俺はいいけどるーこは女の子なんだから良くないよ。」 「何で良くないのだ? 汗も引いたし、うーは平気だぞ。」 「そりゃ、女の子はきれいで清潔なほうがいいに決まってるからさ。」 言って陽平は少し恥かしくなった。こんな格好いいセリフは俺に会わねぇ。と。 ふと見ると、るーこは空を見上げていた。少し雲が出ているが星が所々に見える。 「どうした?るーこ」 陽平もるーこと同じ空を見上げる。 「星から迎えが・・・・・いや、なんでもない。」 空を眺めながら、るーこはそう返事する。 陽平は、そんなるーこがきれいだと思った。 でもその途端、ぐぅとお腹の音がする。 るーこは陽平の顔を見ると、るーこのお腹も小さな音を立てた。 「へへへ。」 「うふふ。」 二人はくすくすと笑い声を上げた。 その時、ざっという音と共に秋子が飛び出た。 「動かないで。」 秋子はるーこの背後から喉にナイフを突き立てる。 陽平はひぃっと驚いたが、まっすぐ秋子の目を見据える。 「おっ、お前は誰だ。るーこを離せ!」 どもりながらも陽平は秋子に問う。 心臓はバクバク言っているが、思ったより自分が冷静な事に陽平は驚いていた。 これもるーこを守るという大義名分がそうさせたのかも知れない。 陽平は震える手でスタンガンを取り出す。 「おっ、脅しじゃないぞ。痛い目に会いたくなかったらるーこを離せ!」 「大丈夫だ。うーはこんな事でやられたりしない。」 るーこは気丈に陽平に話す。 秋子は彼らも名雪と同じ子供だと判ったが、確認するまでは気を許すつもりは無かった。 「・・・武器を捨てなさい。私の言う事に答えたら危害は加えないわ。」 「し、信じられるかよ。オバサン!」 「貴方達は、誰かを殺そうとしているの?」 「へっ、誰が答えるかよっ。そっちこそ何人も殺してるんだろう!」 陽平は怯えを気取られぬよう声高で話し、少しずつ秋子に近づく。 秋子は陽平の意図に気がついていた。隙を見てるーこを奪い逃げるつもりだ。 秋子は二人がマーダーではないと判ったが、怖い目に会ってきた事も理解できた。 こんな島で、しかも夜だ。見ず知らずの人を信用できないのは仕方が無い。 「よく聞いて。私は・・・私の家族を守ろうとしているだけよ。」 言って、秋子はるーこを解放する。 るーこは陽平の元に走ると秋子の出方を伺う。 「この島で起きている事は異常だわ。でも、それに乗って人殺しをする人がいる以上、 私は家族を守るために戦わなくてはならないのよ。」 陽平はるーこと一緒に逃げ腰になりながら秋子の話を聞く。 「だから、あなた達が逃げているのなら、私が一緒に守ってあげるわ。」 「ほっ、ホントか!?」 陽平は素直に喜んだが、るーこは警戒を解かなかった。 「・・・・あなたの言葉は信用できるの?」 開放されたるーこは陽平の傍でマイクロUZIを取り出して秋子に向ける。 それを見た秋子は殺気を込めた目でるーこを睨む。 「・・・・・話をしている時に人に武器を向けるのはやめなさい。」 陽平はごくりと唾を飲み込む。 この人の目は本気だ。かなわないと思った。 秋子はナイフを捨てて丸腰だと判るように両手を出してるーこに向かう。 そしてにこりと微笑む。 「わかったわ。私が信用できなかったらいつでも撃っていい。でも子供たちには手を出さないで。これが条件。」 「・・・判った。とりあえず今は信用する。」 るーこがUZIの銃口を下ろした。 秋子はほっとする。マーダーなら容赦しないができれば子供達は殺したくない。 「私は水瀬秋子よ。向こうの家に娘達がいるわ。」 「俺は春原陽平。」 「うーはるーこ・きれいなそらだ。」 「よろしくね、二人とも。じゃあ、家に案内するから、ついてきて。」 秋子はナイフを拾い上げると先に進みだした。 るーこと陽平は警戒しながらも秋子の後ろをついていった。 【時間:1日目午後10時30分過ぎ】 【場所:F−02】 水瀬秋子 【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、木彫りのヒトデ、包丁、スペズナスナイフ、殺虫剤、 支給品一式×2】 【状態・状況:健康。主催者を倒す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて守る。 ゲームに乗った者を苦痛を味あわせた上で殺す】 春原陽平 【所持品:スタンガン・支給品一式】 【状態:少し疲労。秋子についていく。次に仲間の探索】 ルーシー・マリア・ミソラ 【時間:1日目午後10時30分過ぎ】 【場所:F−02】 【所持品:IMI マイクロUZI 残弾数(30/30)・予備カートリッジ(30発入×5)・支給品一式】 【状態:少し疲労。秋子についていく。次に仲間の探索】 - BACK