残酷な現実




立ちつくしていた。
高い場所に位置するスピーカーから流れてくる残酷な知らせ、相良美佐枝は呆然と動けずにいた。

(・・・本当に、殺し合いを強要させられてたんだね)

そこには知人の名前も含まれていた、目の前が暗くなっていく。
それと同時に、護身として身につけていたウージーの重さも増した。
嫌になる、何故こんな目に合っているのかと。

小牧愛佳、来栖川芹香を残して食料を調達にきた美佐枝は、本来の目的をひとまず置いておき村の散策に時間をかけた。
状況としては子守のようなものだ、あの子等を守ってやらねばいけないのである。
そのためにまず必要なのは、情報。
・・・本当に、この村は安全なのか。ゲームに乗った輩がわんさかいたのでは話にならない。
疲労は勿論自分にも溜まっている、だがとにかく休ませている彼女等の体力を何とかせねば逃げることすら困難になってしまうのだ。
大丈夫、目立つ要素のない建物だからまず人目にはつかないだろう。

自分はあえて危険な道を行く。だが、これが美佐枝のやり方。
動ける者が動けばいい、それは「できるから」という理由があるから。
自分はできる、やることができる。だから先導する。

(現役は引退したつもりなんだけどね・・・)

ちょっとした呟き。でも、今はそんなことを考えている暇はない。
民家の密集した地帯をさ迷い歩き続け数時間経つが、本当に百人以上の人間が押し込まれたと思えない程、ここは静かであった。
・・・地図で確認したところ、村と名のつく場所は三つしかない。
その内一つがこれだとすると・・・他では余程賑わっている可能性もあるだろう。
そんなことを考えていた時だった。・・・放送が、行われたのは。

たった数時間。それだけで、こんなにも命を落とした人がいるという事実。
思わず顔も歪んでしまう。あまりにも・・・残酷な、現実であった。

(本当に、私らはこれを乗り切れるというの・・・?)

答えの出ない問い。
美佐枝は負の感情を取り除くべく、今度は民家の中の食料探しに精を出すことにした・・・。






が。

「おいおい、まさかこんなにも不発とは・・・」

民家は多い、確かに多い。
だが、そのほとんどが・・・施錠済み。
窓はある、割って入ることは可能だろう。
だが、それには大きなガラスの破壊音という副産物もついてくる。
今、それをやるのは危険だ。避けたい。
そんなことをしていたので、時間はまたまた過ぎてしまい。
何とか食料は確保できたが、缶詰四個に支給品と同じパン二つと戦果は時間と比例しない。

自分の受け持つ仕事は済んだ。だから、さっさと戻れば良かった。
・・・だが、美佐枝は、最後に寄り道をすることにした。


最も危険だと踏んでいた場所、役場付近。
確認しておきたかったのだ、最後の最後でここに留まっていても本当に平気かどうかを。
見た感じでは特に異常は感じられない。
・・・だが、イヤな臭いが鼻をつく。

(何かが焦げたような・・・)

瞬間、予想をしていなかった所から人の叫び声が響いた。

「た、助けて、お願い!」
「わっ、何だ一体」

無防備に駆け寄ってくるのは一人の少女・・・年頃は愛佳や芹香と同じくらいであろうか。
敵か味方かも分からない美佐枝に向かっていきなり駆けてくる・・・人を選んでいる暇はないということだろう。

「友達が、友達が私を逃がすためにあいつを、あいつを」
「分かったから落ち着け・・・」

その時、彼女達から少し離れた場所から、ドゴッ、ドゴンッ!という派手な音が鳴り響いた。
続いて銃弾の連射音、少女の体がふらつき美佐枝は慌てて肩を抱く。

「セ、セリ、オ・・・?」
「こりゃまずいね。一端ここから離れないと、私らも巻き添えを食うよ」
「いやよ!セリオの安否を確かめなくちゃ!!」
「馬鹿、あんたを逃がすためにその子は足止め役を買ってでたんだろ。
 今あんたに何かあったらその子も報われないだろ・・・」

泣きそうな表情、でも歯を食いしばって堪えている少女。
美佐枝は一つ溜息をつき、彼女の手を取った。

「少し、ここらで時間を潰してから行けばいい。
 ・・・とにかく、事情を話してくれ」




相楽美佐枝
【時間:1日目午後9時30分】
【場所:C−3】
【持ち物:ウージー(残弾25)、予備マガジン×4】
【状態:食料確保完了、愛佳と芹香の元へ向かう途中】


柚木詩子
【時間:1日目午後9時30分】
【場所:C−3】
【持ち物:ニューナンブM60(5発装填)&予備弾丸2セット(10発)・支給品一式】
【状態:少年のもとから逃げてきた】
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