「祐一〜」 抱きついてくる名雪を祐一はそっと引き剥がした。 「今はそんなことをしている場合ではない」 「その姿の祐一を見るのは久しぶりだね」 もう随分と昔のことだ。幼くして華音市一の魔法使いと讃えられた月宮あゆは、 7年前の戦いで木から転落、重傷を負い記憶を失った。 その場に居合わせた祐一は、そのショックにより唯一者として覚醒、 圧倒的な力で敵軍を壊滅させた。 祐一はそのときの出来事を深く語ろうとしないため、名雪はその重大さをわかっていない。 それだけではない。引っ越した後にも、唯一者としての想像を絶する戦いがあった。 ことの真相を知っているのは祐一本人と水瀬秋子のみである。 名雪は祐一について何も知らないと言っていい。 「でも私は、祐一には普通の学生に戻って欲しいな」 「それは出来ない。俺はすでに罪人だ」 「祐一は何も悪いことしてないよ」 「それでも罪人なんだよ……」 祐一はそれだけ言うとその場を去ろうとした。 「待ってよ祐一。私も連れて行って」 「これは俺の戦いだ。名雪を巻き込むわけにはいかない」 「待って!」 ―――ぐ〜――― その瞬間、名雪の腹の虫が鳴いた。 「あはは……バッグ投げちゃったから今日何も食べてないや。お腹空いちゃったよ」 「これでも食べておけ」 祐一は名雪の好物であるいちごサンデーを作り出し、彼女に手渡した。 世の中には魔法で和菓子を作るしか能のない馬鹿もいるが、祐一に出来ないことなど何もない。 「お前の持っている携帯電話には時限爆弾が入っている。 ルージュは拳銃、マニキュアは青酸カリ入りだ。使い方を誤るなよ」 「待てよ!」 注意を促し改めて去ろうとした祐一に、改めて声がかけられた。 「今度は春哉か……何の用だ」 振り向くと、戦闘機から一人の男が降りてくるところだった。 「偉そうなこと言っときながら二度も封印されて飛ばされてたのは誰だよ」 「覗き見とは趣味が悪いな」 「そう言うなよ。いい物持ってきてやったんだから」 そういうと、彼は一枚のお札を祐一に渡した。 そこには『破露揚握琴』と書かれている。 「封印対策の護符だ。これがあれば『はろーあげいん』は効かない」 「余計なことを……さっさと帰れ」 祐一は札をしまい、名雪と春哉に背を向けて歩き出した。 「おい、せっかく来たんだから俺にも手伝わせろよ」 「お前の出る幕ではない」 「……わかったよ……所詮SSランクの俺じゃ役立たずってわけか。頑張れよ、祐一」 春哉はそう言ってステルス機に乗り込み、颯爽と去っていった。 歩いていく祐一を見送りながら、名雪は涙を流していた。 「祐一……どうして私はいつも置いていかれるの…… 私、祐一がいないともう笑えないよ……」 「それは名雪が未熟だからですよ……」 「お母さん!」 いつからそこにいたのか、名雪の後ろに母である秋子が立っていた。 「お母さん教えて! 祐一の罪って一体何なの!? どうして私には何も教えてくれないの!?」 詰め寄る名雪に秋子はゆっくりと答える。 「祐一さんはこの世界そのもの。この世界の人々の命を削って生きているのです。 それは唯一者として生まれた彼に課せられた業。 これ以上は名雪には教えられません。いえ、名雪には知る資格などない」 秋子はそう言うと、名雪の足元に支給品のレイピアを投げた。 「お母さん……?」 名雪は事態が飲み込めていない。 「名雪を甘やかして育ててきたことは、私の犯した最大の過ちでした。 わたしと戦いなさい、名雪。どんな手を使ってもかまいません。 武器を使いたければ使いなさい。毒を使いたければ使いなさい。はめ技を使いたければ使いなさい。 わたしを倒すことが出来ないのであれば、あなたは今ここで死ぬことになるでしょう」 「お母さん……何を言ってるの?」 相沢祐一 【時間:午後11時ごろ】 【場所:B−02】 【持ち物:世界そのもの。また彼自身も一つの世界である。宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)、護符・破露揚握琴】 【状態:真唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年。背中に六枚の銀色の羽。何か良く解らないけど凄い鎧装着)】 水瀬名雪 【時間:午後11時ごろ】 【場所:A−02】 【持ち物:レイピア、GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、 赤いルージュ型拳銃(弾1発)、青酸カリ入り青いマニキュア、いちごサンデー】 【状態:祐一がいないともう笑えないよ】 水瀬秋子 【時間:午後11時ごろ】 【場所:A−02】 【持ち物:支給品一式】 【状態:水瀬家当主】 秋浜春哉 【場所:残魔大先生のSSの中】 【状態:原作? 何それ】 【備考:祐一が生きている限りときどき脈絡もなく誰かが死にます】 - BACK