血を分けしもの




「これで閉幕としよう、超先生」
書物を模していた宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)が徐々に形を剣へと変えていく。
祐一はその剣をゆっくりと手に取った。


            「相沢流剣術【天の裁き】」


「ぐおーっ!」
目にも留まらぬ鋭い斬撃が超先生を駆け抜ける!
後に17の残像を残して、超先生の体は崩れ落ちた。

「この技は貴様の存在そのものを斬る。勝負あったな」
「超先生っ!」
滝沢諒助は倒れた超先生に駆け寄った。
「超先生、しっかりしてください!」
「無駄だ。超先生はすでに存在自体がない」
「いや、無駄だったのは君の技の方だよ」

 なんと超先生は、何事もなかったかのように立ち上がった!
「馬鹿なっ! 何故この技を受けて無事でいられる!」
「存在そのものを斬ると言ったな。
簡単なことだ。私の存在は既に3年前の事故で失われている。
存在などを斬られても痛くも痒くもない」

 存在そのものがない、ならばここにいる超先生は何だというのか。
真唯一者である祐一をもってしても、それを窺い知ることは出来なかった。
「だが私をここまで追い詰めたことは賞賛に値する。
冥途の土産にいいことを教えてやろう。
13の至宝のうち12個はすでに我が手中にある!」
「なんだと!」
「最後の一つはこの殺し合いの末に姿を見せるであろう。
そのときこそ私の悲願、真のRRが完成するときなのだ。
それまで存分に殺し合いを続けてくれ給え。
また会おう、相沢祐一よ」
「超先生、それでは冥途の土産になっていません」

 滝沢の下らないツッコミを無視し、超先生は封印の呪文の詠唱を開始する。
「ワルヤテシンイフウカンナエマオワルヤテシンイフウカンナエマオ」
(またそれですか……というか、自分で使えるならなんで大先生呼んだんだよ……)
「―――はろーあげいん―――」

 いつの間にか、祐一は沖木島の浜辺に飛ばされていた。時間も何故か夜になっている。
「明日……決着をつける」
決意を新たにする祐一の前に、一人の少女が駆け寄ってくるのが見えた。
「祐一、やっと見つけたよ〜」
「名雪か……」
「祐一はやっぱりかっこいいな、惚れ直しちゃうよ。ぽっ」


── 一方その頃 ──

「超先生が相沢祐一にやられたとの報告が入っています」

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          i' i'~_ノ`'ヾ゙゙~ ι         /`'//   |         
          |/ ./,/,.-、`_、   -ー一   ノ .| ./  o 0|  兄上が死んだだとーっ!?
          || '^,.-‐-、-' ヽ、     / ,.!i`'      |       
          ヽi  ,4 ,,|   _,.,i 、__,,/-‐'''~ .|~`、     \___________
          ヽ   |`'゙-一~/~ )       , |   T.、
        ,-, -=|   ))  /  /`ー---_-,.''~/   | `-、
.       / /  `ヽ、 /、 /  |  - 一'   ./   .|    ` - 、
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     / ノ        /  | ` 、,--   /   |



 久瀬の兄である竹林明秀は、生まれてすぐに分家筋の竹林家に養子に出された。
その原因は彼の持つ異能力にあった。例えばこんなエピソードがある。
彼が産声を上げた瞬間、周囲にいたものは身動きが取れなくなったというのだ。
久瀬家は古来より異種族・異能力者を忌み嫌っており、その根絶に勤めてきた。
明秀はその能力を恐れられ、久瀬の父により久瀬家を追放されたのである。
彼は成長するに伴って、その力を自在に操ることが出来るようになっていった。
そしてその力は、彼自身によってこう名付けられた。


          RR(リアル・リアリティ)


 その出生ゆえに二人の間の確執は大きかったが、互いにその能力だけは認め合っていた。
超先生の称号をもつ兄がそう簡単に死ぬわけがない、この報告はフェイクだと、
久瀬は確信していた。思えばこの国最大の異能力者ともいえる超先生が主催者側にいることは、
今回の計画の目的から考えれば皮肉としか言いようがなかった。
たとえ我が子であろうと、これほどの異能力者と成り果てた超先生を始末することを
躊躇するような父ではない。何かがおかしい。
(兄上は一体何を企んでいるのだ)

 悩む久瀬の前に一通の手紙が差し出される。
「これは?」
「私が死んだときはこれを久瀬に渡せと、超先生からの命を受けていました」
手紙にはこう書かれていた。


『日本一の弟だと思っています』




 相沢祐一
 【時間:午後10時ごろ】
 【場所:A−02】
 【持ち物:世界そのもの。また彼自身も一つの世界である。宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)】
 【状態:真唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年。背中に六枚の銀色の羽。何か良く解らないけど凄い鎧装着)】

 水瀬名雪
 【時間:午後10時ごろ】
 【場所:A−02】
 【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、赤いルージュ型拳銃(弾1発)、青酸カリ入り青いマニキュア】
 【状態:祐一に惚れ直した、所持品の効果に気付いていない】

 久瀬
 【状態:日本一の弟】

 超先生
 【状態:不明】

 十波由真 死亡
 (死体も支給品も粉々)
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