生きる為の決意




「……
081 柊勝平
092 伏見ゆかり
097 松原葵
110 森川由綺

 ――以上です」
放送が終わった。
「そんな………」
放送が終わった後、佐藤雅史は固まっていた。

――――081 柊勝平
先程椋に見せて貰った写真の中の少年。
綺麗な女顔をした、優しそうな少年。
椋の恋人。その少年が、死んだ。唐突にその事実を突き付けられたのだ。

「勝平…さ……ん…」
横を見ると、椋は目に涙を溜めながら震えていた。
その顔からは血の気が引いている。
「佐藤……さん、すいま…せん」
「……え?」

唐突に体に衝撃が走る。
「ぅ…うわぁぁぁぁぁんっ!」
椋は泣いていた。
雅史の胸を借りながら泣いていた。
「あぁぁぁぁぁぁん!うわあぁぁぁああああん!」
「椋さん………」
分からない。どんな声をかけたらいいのか分からない。
今まさに恋人を失ったばかりの少女に対してどんな言葉をかければ良いと言うのだ。
「ぅ…ぅえ…あっ…ひっく……」
止まらない少女の嗚咽。雅史はただそれを黙ってみている事しか出来なかった。





―――放送から2時間。
「ひっく…ひっく…」
椋はまだ泣いていた。涙を流しすぎたのかその目は赤くなっている。
その時、椋の頭の上に何か温かい感触があった。

「………?」
少しは落ち着いてきたのか、涙を止めて上を見上げる椋。
見ると、雅史の手が自分の頭の上に乗せられた。
「椋さん………、ちょっと良いかな?」
「は…い、なんで…しょう?」
「君のお姉さんや、同じクラスの岡崎君は、まだ生きてるんだよね?」
「はい、そう…です」
「だったら、辛いだろうけど……」
そこまで言って、躊躇した様子で言葉を止める。
椋は泣き腫らした目で、佐藤雅史を見つめている。
「辛いだろうけど、もう少ししたら氷川村へ出発しよう。君の大切な人達を探しに行こう」
「………でも、勝平さんが、しんじゃ、って、わたしもう………」
そう言ってまた椋は泣き始めた。
「ひっく…ひっく…うぁぁ」

「椋さん!」
雅史は普段の彼ならまずありえないくらい、大声を出していた。
突然大声を出され、ビクっとする椋。
「……まだ君には大切な人達がいる。だから、辛いだろうけど頑張ろうよ。」
「…………」
「勝平さんって人もきっと、君に頑張って欲しいって思ってるはずだよ」
「勝平さんが……?」
「うん…、僕は勝平さんって人の事は全然知らないけど、君は彼の事が好きだったんだろ?」

「はい……、大好き…でした」
椋は辛そうに、でもはっきりとそう口にしていた。

「なら君の大好きな勝平さんなら、君の幸せを願わないわけがないよ…
逆の立場だったら、君だってそうだろ?」
「………」
「だから、頑張ろう?まだ僕達は生きてるんだからさ、死んでしまった人の分も頑張ろうよ」

(勝平さん………)
目を閉じて大好きだった人の顔を思い浮かべる。想像の中の彼は笑っていた。
「…………分かりました。」
それは、決意の言葉。声は小さかったけれど、強い決意が籠められた言葉。

「うん!」
笑顔で返事した後、佐藤は一つ深呼吸をした。
「き、君がお姉さん達に会えるまで、僕が絶対に君を守るからさ」
彼は顔を赤くさせながらも、そう口にしていた。

一瞬キョトンとした表情になる椋。
「……ありがとう、ございます」

本当なら笑顔で返すべき場面だったけれど、私はまだ笑えなかった。
勝平さんが死んだ事でできた心の傷はまだ癒えていない。癒えるはずが無い。
一生かけても癒えるかどうか分からない。
でも佐藤さんのおかげで少し、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。




【時間:20:30】
【場所:F-09】

佐藤雅史
【持ち物:金属バット、支給品一式】
【状態:若干疲労、目的は椋を守る事と彼女を杏、朋也に会わせる事】

藤林椋
【持ち物:参加者の写真つきデータファイル(何が書かれているかは次の書き手さんまかせ)、支給品一式】
【状態:決意】
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