人、それぞれ




「そうですか、親類の方も参加させられてしまったんですか・・・。
 つらいですよね、早く見つけてあげたいですよねっ!!」

平瀬村に向かう道、二人は話しながら進んでいた。
どちらかというと最初は気まずい雰囲気であった、緊張感が満ちていることは橘敬介にとってありがたかったことである。
だが、これに耐えられなかったのは・・・雛山理緒の方であった。

『うち貧乏で、私もアルバイトで手伝ってるんですけど大変なんですよ〜。
 弟たちはいつもお腹すかしてるし、もうてんやわんやで』

身の上話を持ちかけられ、それに話を合わせるように自分のことを話したら・・・これである。

「それに、実の娘さんとの数年ぶりの再会がこんな形なんて・・・悲しすぎますっ。
 わ、私の力なんて大したことないですけど、やっぱりお手伝いさせて欲しいですっ!!」
「はは、気持ちだけ受け取っておくよ・・・」

正直、理緒のテンションに敬介はついていけていない。
この状況で、彼女は何故こんなにも朗らかでいられるのか。
敬介には理解できなかった、だから。問いかけた。

「君には目的はないのかい?友人を探そう、とか。同じ学校の子がいるんだろう?」

・・・ポカン。その言葉を受け、目の前の少女は硬直した。
目的。自分の目的とは。
浩之に会いたい、あかりに会いたい。
勿論、知り合いに合えたら充分それで嬉しい。
けれど。それ以上の思いが、理緒にはあった。

「私は、一人の女の子の犠牲の上で生きているんです。」


それは、出会った時の怯えたような様子も、先ほどの明るく和やかな気配すら感じさせない響き。
凛と前を見据える少女の表情には、甘さの欠片も存在していなく。
歩きながら話しているのにも関わらず、敬介は周りの景色よりも彼女の輪郭から目が離せないでいた。

「だから、彼女のためにも生き続けたい。頑張りたい」

頑張ること、それが私の取り柄だから。

----------理緒に何があったか、問い詰めようとは思わなかった。
だが、彼女にも抱えているものがある。
・・・敬介の中で、理緒の見方が変わった瞬間であった。





「あ、もう着くんじゃないですか?あそこですよ、平瀬村っ!」

途中何故か何もない所で転びまくる理緒のおかげで遅くはなったが、何とかここまで辿り着くことができた。
歩き続けたこと、精神的なこと。それらで二人の疲労もピークを迎える。

「とりあえず、そこら辺の民家で休もうか」

正直、予定とは全く違うが。

(今日はもう、彼女の元には戻れないかな)

天野美汐と名乗った少女、彼女もだがそこに残してきた荷物も気がかりだ。
そんなことは露知らず、理緒ははい!と元気に答える。
・・・その声が響くと同時に、ガサガサっと茂みが揺れる音が響いた。


「え?!」

歩道を歩いていた自分達とは違う進路、驚いて振り向いた二人の前にいきなり人影が飛び出してくる。

「ちっ、こんな時にタイミング合わせんでもええやんかっ・・・!」

関西風のイントネーション。目の前の人物のそれに、敬介は聞き覚えがあった。

「晴子、晴子じゃないか!」
「え・・・敬介?」

神尾晴子。探していた人物の一人。
彼女も疲労が溜まっているような雰囲気が強かった、だがそれ以上に無事でいてくれたことの方が敬介にとって喜ばしいことであり。
探していた人物がこうも早く見つかるなんて・・・喜びが胸に広がっていく。
・・・だが、駆け寄ろうとした敬介に向けられたのは、彼女の手にするVP70であった。

「・・・晴子?」
「ほおー、うちが観鈴のために身を粉にして働いてた時に、あんたは女子高生とイチャイチャかいな。
 ほんま、気楽で羨ましいわ」
「そんなんじゃない、僕は君と観鈴を助けるために・・・」
「黙らんかい!!」

バン!晴子は容赦なくトリガーを引いた。
敬介を直接狙った訳ではなく威嚇であろう、弾は彼の足元に埋まる。

「・・・・・・晴、子・・・」
「うちは観鈴のため、それだけのために人にむかって撃ってきたんや。
 今更、そのポリシー変える訳にはいかへん。
 ・・・敬介、選ばせたる。うちに協力するか、みぐるみ置いてどこかへ消えるか。
 選択肢は二個だけやで?・・・それ以外は」


死、あるのみ。
今度は確実に敬介に当たるよう、VP70の照準が合わせられる。
敬介の額を冷や汗が流れる、理緒はその後ろでオタオタするしかなかった。

(ど、どうしようどうしよう・・・もしかして、私がついて来ちゃったせい?!)




神尾晴子
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【所持品:H&K VP70(残弾、残り15)、支給品一式】
【状態:敬介を脅す】

雛山理緒
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【持ち物:鋏、アヒル隊長(13時間半後に爆発)、支給品一式】
【状態:困惑(アヒル隊長の爆弾については知らない)】

橘敬介
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【持ち物:トンカチ、繭の支給品一式(中身は開けていない、少し重い)】
【状況:困惑(自分の支給品一式(花火セットはこの中)は美汐のところへ放置)】


B−4の場合、晴子の補足事項を以下にしてください。

神尾晴子
【時間:1日目午後8時30分】
【場所:G−3】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り17)】
【状態:敬介を脅す】
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