「マナよ、ついに目覚めたか」 「!だ、誰っ?!」 森を疾走する観月マナの耳が、どこから発せられたか分からない呼びかけを捉える。 立ち止まり、周囲を見回すものの・・・周りに人は見当たらない。 「私の名前は霧島聖。またの名を、BL研究家キリシマ博士だ」 その時だった。気配なく横の茂みから白衣の女性が現れたのは。 思わず手にしたワルサーを構えるマナ。 だが、聖は飄々としていて。 「何、わたしに何の用なの」 マナの問いかけ、聖はいたって普通に答える。 「君に一つ、使命を与えたいと思う」 「何ですって・・・」 「怖い顔をしないでくれ。君は言わば・・・そう私達にとって希望の光なんだ」 まぁ、座りたまえと地べたに腰をつく聖。 警戒しながらも、マナは聖の出方をうかがう。 「話は長くなるぞ、疲れたら遠慮なく座ってくれ。 ・・・さて、まず君に知ってもらいたいことがある。 この孤島に閉じ込められた我等だが、その目的とはいかようにも存在している」 「殺し合いをしろってことでしょ?」 「それ以外にもある、ということだ。まぁ、表面的にはそれが一番強い。 その目的の中の一つ、非情な計画を打ち滅ぼすために私は働きかけることになった」 「計画?何よ、一体・・・」 聖の表情が引き締まる。 厳しい彼女の様子に、マナも怯んだ。 「葉鍵GL計画。世にも恐ろしい人権を侵害する作戦を決行するためのプロジェクトだ」 GL、計画・・・マナにとって、その言葉の指し示す意味は計り知れない。 「そもそも事の次第に、葉鍵の百合具合があったのだ。 倉田×川澄、美坂×水瀬など・・・流行ったかと言われたら微妙かもしれないが、 そこには確かに絶対の支持者がいた」 「随分とKANONまみれですね」 「支持者にとっては、この萌え要素を主流に持っていきたいと望む輩がいた。 それは・・・葉鍵キャラの中にも存在し、奴等は一つの組織を作り上げた。 その組織が立てたのが、ガールズラブ計画、通称GL計画。 終末作戦『レズビアンナイト』を勃発させるための布石なんだ」 ざわ・・・ざわ。風が二人の間を通り抜ける。 マナのツインテールが揺れる、聖の長い髪も舞う。 風が止み、それと同時に起きていた沈黙を破るべく・・・聖は、マナに一冊の書物を差し出した。 「観月マナよ、私はその計画を打破すべく派遣・・・もとい、このバトルロワイアルに参加した。 GL計画に対抗すべく設立された組織からな。 そして、このBL図鑑を清らかな乙女に託すのが私の目的だ。受け取ってくれ」 サイズにしたらB5くらいの薄い冊子。手に取ると、それはキラキラと輝きながらマナの手に馴染んだ。 「何よ、これ・・・」 「選ばれし腐女子でないと扱えない私達の希望、BL図鑑だ。 ばれないよう持ち込むのに苦労したぞ。 これにボーイズパワーを注入することにより、GL計画の集めるガールズパワーを相殺するのが目的だ」 パラパラとめくるが、ほとんど中は白紙だった。 ・・・いや、よく見ると、最初の一ページにだけ、一列文字が・・・。 『高槻(MOON.)×国崎往人(AIR) --- クラスB』 「こ、これは・・・」 「この図鑑は君を選んだということだ。それが、君の回収したBLパワーということになる。 ・・・ふむ、早々とクラスBの力を入手したとはさすがだな」 「え、クラスって・・・?」 「BLパワーにも力が存在し、それはクラスによって三段階に分けられているんだ。 行為の内容が濃いというよりは、そのカップリングの希少性の方が問われている。 君の入手したクラスBというのは、葉同士・鍵同士のキャラで起こるクロスオーバーカップリングのことを指している。 対してクラスCは同作品同士のもの、クラスAは葉キャラと鍵キャラで起こる最強のクロスオーバーカップリングとなる」 まさか、本当に? マナの中で、混乱が起こる。 聖は・・・いや、キリシマ博士はそんな彼女の迷いを打ち崩すべく、叫んだ。 「GL側も同じ形でガールズパワーを集めている、私達は奴等よりも多くのパワーを得なければいけないのだ! 観月マナよ、力を貸してくれたまえ。葉鍵世界を百合から守る力を・・・!!」 キリシマ博士の差し出す手、マナは「フ・・・」と笑ってそれを固く握り締めた。 「だが断る」 観月マナ 【時間:午後9時】 【場所:E−7】 【所持品:BL図鑑・ワルサー P38・支給品一式】 【状態:だが断った】 霧島聖 【時間:午後9時】 【場所:E−7】 【持ち物:デイパック、ベアークロー(ランダムアイテム)】 【状態:だが断られた】 - BACK