パーティーの幕開け




これは今から1時間以上前の話である。
美佐枝達が食料を探しに行った後、来栖川芹香は小屋の中に何か使える物は無いか探していた。
武器等があれば今後このゲームで生き抜くのに有利になる、と考えての行動だ。

「………」
そして、寝室の机の上に黒い板状の物体――――ノートパソコンを発見していた。
調べてみると、少し型は古いが普通に動きそうだ。
動作確認してみようと立ち上げてみる事にした。

やはりちゃんと動く。パソコンは問題なく立ち上がっていた。
デスクトップに『参加者の方へ』と書かれたフォルダが置かれてある。
これは恐らくこのゲーム用に用意されたパソコンだな、と理解しすぐにマウスを持ちそのフォルダを開いた。
そして中に入っていたchannel.exeをクリックした。

――画面に映ったそれは「ロワちゃんねる」の文字。
そして立っているスレッドは三件。

『管理人より』
『死亡者報告スレッド』
『自分の安否を報告するスレッド』

まずは『自分の安否を報告するスレッド』から見ようとマウスを操作しようとしたその時、別の部屋から窓の割れる音が聞こえた。

「………!」
敵だ。間違いない。美佐枝達なら窓を割って侵入するような事をするはずがない。

芹香は火炎放射器を構え、音のした部屋へと向かって歩き出した。
小屋は大きく無い、音のした部屋の見当は容易についていた。
音のしたと思われる部屋のドアは閉まっている。


敵が出てくるのならここから出てくるはずである。芹香は緊張した面持ちで、火炎放射器をドアに向かって構えていた。
背中を冷や汗が伝う。
重い重い緊張感。精神が疲弊していく。
しかし、襲撃者がきているのは間違いないのだ。今集中力を切らすわけにはいかない。


「よう、勇ましいお嬢さん、ご機嫌いかがかな?」
「!?」
突然後ろから声をかけられ、慌てて火炎放射器をそちらに向けようとする芹香。
しかし、次の瞬間には大きな衝撃が走り、火炎放射器は手の中から弾き飛ばされていた。

「そんな危ない物は持ち歩いたら駄目だぞ、ククク……」
長身の男―――岸田洋介の振り回した鉈によって、火炎放射器は弾き飛ばされていたのだ。
続けて腹に衝撃。
「うっ……」
うめき声を上げながら、背後の壁の所まで吹き飛ばされる。
状況がよく飲み込めない。恐怖よりも混乱の方が勝っていた。
何故敵が後ろから現れたのだ?一体自分は何をされたのだ?


――虚を突くために窓ガラスに石を投げつけて窓ガラスを叩き割った。
そちらに女の注意が向いてる隙に、自分は悠々と玄関から侵入した。
そして今、芹香を蹴り飛ばした岸田は、舌なめずりをしながら、口元の端を吊り上げつつ、彼女の所へと近付いていっていた。
すぐに殺す事も出来たが、このような美しい女を前にしてそれは余りにも無粋ではないか。
「さぁ、パーティをはじめようか」
岸田は鉈を投げ捨て、立ち上がろうとしていた芹香の腹へもう一度蹴りをいれ、そのまま彼女にのしかかり、
マウントポジションのような体勢を取った。

「………!」
表情にはあまり出さないでいたが、今度こそ芹香に最大級の恐怖の感情が訪れていた。
「お嬢さん……、抵抗しない方が良いぞ。あんまり時間が無いんだ。抵抗すると……」


芹香は目を見開いた。
岸田はポケットからカッターナイフを取り出して見せたのだ。
「屍姦しないといけなくなるからなぁ」
そう言い、空いてる方の手で力任せに芹香の制服の上半分を引きちぎる。
かろうじてまだ下着に守られてはいるが、芹香の胸が露わになっていた。

「やはり肉付きが良い…、素晴らしいぞ!」
そう言い、最高の愉悦を感じながら芹香の下着を剥ぎ取ろうとした瞬間、後ろから物音がした。

「何!?」
振り向くとそこには、火炎放射器を構えた少女、小牧愛佳が立っていた。

「う…、動かないでください!動くと撃ちますよ!」
だが、台詞とは裏腹に彼女の膝は恐怖に揺れていた。
それでも芹香を守る為に、愛佳は勇気を振り絞っていた。

「ほう…、この女ごと、焼くつもりか?」
岸田は芹香の両腕を掴み、自身の盾にするような形で立ち上がっていた。
「そ、そんな…。卑怯です!芹香さんを放してください!」
一瞬で計算を巡らす。
この火炎放射器を構えている女は怯えている。今は虚勢を張っているだけだ。
岸田はすぐにそれを見抜いていた。
人質を上手く使えば殺すのは容易いだろう。

だが、この女が戻ってきたという事はすぐにもう一人の女も戻ってくるかもしれない。
あの女は銃を持っていたし、気も強そうだった。
ここは長居すべきではない。

「よし、交渉開始といこうじゃないか。俺を見逃してくれればこのお嬢さんは解放してやるよ」
岸田はそれだけ言い、芹香を盾にしながら玄関へと向かって歩き出していた。
愛佳はただそれを見守るしか無かった。男は芹香を盾にしている、男の言い分を信じる他、無かった。


岸田は玄関まで辿り着き、そのドアを開けていた。
「約束です…、芹香さんを解放してください!」
「ククク…、分かってるさ…、そら!」
そういって岸田は芹香の背中にナイフを突き刺し、すぐにナイフを引き抜き逃げ出していた。
「や…、やぁぁぁぁ!!!芹香さん!!」

何の収穫も無く引き下がるなど耐えられるか。せめて置き土産くらい残していかないとな。
彼は至福の表情を浮かべたまま、走り去っていた。


そして現在彼は、電動釘打ち機をその手に持っている少年、七瀬彰と対峙している。
(―――さて、どうやってあの武器を奪うか…)
彼は思考を張り巡らせていた。




岸田洋一
【時間:午後6時45分】
【場所:C−04】
【所持品:カッターナイフ(血は拭き取ってある)】
【状態:マーダー(やる気満々)】

七瀬彰
【時間:午後6時45分】
【場所:C−04】
【所持品:鋸、トンカチ、カッターナイフ、電動釘打ち機12/12、五寸釘(24本)、支給品一式】
【状態:右腕負傷、ややマーダー(美咲の敵のみ排除)】

来栖川芹香
【時間:午後5時50分】
【場所:B−03】
【持ち物:愛佳・美佐枝のデイパック】
【状態:背中を刺されている、傷の程度は後続の書き手さん任せ】

小牧愛佳
【時間:午後5時50分】
【場所:B−03】
【持ち物:バックパック式火炎放射器、包丁】
【状態:錯乱気味、芹香に駆け寄っている】

 【備考】
・血まみれの鉈、ノートパソコンは芹香達がいた小屋に放置
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