彰、再び…




(美咲さん…美咲さんっ!)

七瀬彰は放送を聞いた直後、家を飛び出して村を走り続けていた。

放送に美咲の名がなかったことには安心したが、今こうしている間にも美咲の身に危険が迫っているかもしれないのだ。

(折原、黙って勝手に家を飛び出してすまない。
………でも。それでも僕は美咲さんを探さないといけないんだ)

――しかし、今の彼には肝心の武器がなかった。
仮に美咲に出会えても、今の自分で彼女を守りきれるかどうか――それが唯一の問題だった。

(何か武器になりそうなものが見つかればいいけど……ん?)

その時、彰はふと足を止めた。
彼の視界にまだ建設途中の民家が映ったからだ。

(こんな建物まであるのか?
―――まてよ。なにか使えそうなものがあるかもしれない)
そう思った彰は早速その民家の中に足を踏み入れた。





「………こんなものか?」
民家の中を一通り探索した彰は使えそうだと判断してバッグの中に入れてきた品々を確認した。

鋸とトンカチ、カッターナイフ。そして電動釘打ち機と数十本の五寸釘。

(まさか、こんなに武器に使える物が見つかるなんて……
もしかして、主催者はゲームをスムーズに進めるために密かにこのような物を島のあちこちに用意しているのか?)

彰のその予想は確かに当たっていた。
現に、先程自分と浩平がいた家にも包丁など武器になりそうな品々があったのだ。当の彰はその時はそのことに気付いていなかったが………

(とにかく。これで武器はそろったな。
――折原。これでまた暫くの間は敵同士になるかもしれない。できれば、おまえやおまえの知り合いには会いたくないな……)
ゲーム開始当初の彰の目的は美咲たち以外の参加者全員の殺害だ。
しかし、今の彰の目的はそれとは少し違った。

――美咲に牙を向ける者のみの完全排除。
それが浩平との出会いでめぐり着いた彰の結論だった。

(美咲さんを殺そうとする奴らは僕がみんな抹殺する……!)

彰はポケットにカッターナイフを、それ以外の道具はいつでも取り出せる状態にしてバッグにしまうと、家を後にした。

……そして。彰が家を出た瞬間、その男は現れた。




「少年。気合いが入っているな。これから人を殺しに行くのか?」
「!」

ふいに男の声。
彰はすぐさまバッグから電動釘打ち機を取り出すと、声がした方へ構えた。

「誰だ!?」

彰が振り向いた先には――不気味な笑みを浮かべる岸田洋一の姿があった。

夕方と夜の境界と化している空の下、彰は殺人鬼と遭遇した。




 【時間:午後6時45分】
 【場所:C−04】

 七瀬彰
 【所持品:鋸、トンカチ、カッターナイフ、電動釘打ち機(残弾不明)五寸釘(数十本)、支給品一式】
 【状態:右腕負傷、ややマーダー(美咲の敵のみ排除)】

 岸田洋一
 【所持品:カッターナイフ】
 【状態:マーダー(やる気満々)】

 【備考】
・電動釘打ち機の装填数と釘の本数は後続の書き手さんに
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