約束




貴明と雄二達の問答は長い間続いていた。
「お前は何を言ってるんだ!?このゲームで一度別れたら、また再会するのがどれだけ難しいか、分かってんのか!?」
雄二はまた苛立っていた。

少し前に精神を強く維持する事を決心したばかりだが、
今はそれどころではない。
今回ばかりは落ち着いてられない、今貴明の申し出を認めてしまったら、
もう二度と彼とは会えない予感がしていた。
だから絶対に行かせない。
行かせるわけにはいかない。

「……すまん雄二。俺はどうしても行かなくちゃならないんだ」
「貴くん、どうしてっ!?折角仲間になれたのに…!」
沙織も悲痛な表情で叫んでいる。

「さっきも言ったとおり、放送で呼ばれた中に知り合いがいたんだ」
「だからなんで、それが俺達と離れる理由になるんだよっ!?」
「貴明さぁ〜ん……」

少しして、雄二はある考えに至った。
「お前もしかして…、俺達の事が信用出来ないのか?」
「…………」
その一言に一瞬場が、静まり返る。


「そんな事思ってるわけないだろ…俺はみんなを信用してるし、一緒にいたほうが俺が生き延びれる確率は上がると思う」
「だったら一緒に行動すればいいじゃねえか!!」
貴明の胸ぐらを掴み、怒鳴りつける雄二。

だが、次の一言で彼は何も言えなくなった。


「俺は、このみやタマ姉達を守りに行く。」
「!!」
「もう大事な人が死んで悲しむのはたくさんだ。なんて言われても俺は行くからな」
はっきりと雄二の目を見て、強い決意を籠めてそう言っていた。
雄二は貴明を掴む手を離し、視線を下に落としていた。

「何だよ水臭えぞ…、俺達も一緒に……」
「駄目だ!」
貴明は今回の問答の中で、初めて叫んでいた。

「危険過ぎる。お前達を巻き込むわけにはいかないよ…」
そう言い、彼は歩き出していた。
おそらくもう何を言っても無駄だろう。
彼の決心は固かった。
雄二達はもう、彼を見送るしかなかった。


「おいっ、貴明!死んだら承知しねーからな!」
「貴明さ〜ん…どうかお元気で…」
「貴くん、また会おうね……」

貴明は一度だけ振り返り、
「ああ、また会おうな。次はこのみやタマ姉も一緒にな。約束するぜ」
微笑みながらそう言うと再び歩き出し、そのまま姿を消した。

雄二達は貴明の姿が見えなくなってからも、しばらくの間その場に立ち尽くしていた。





―――完全に無防備だな……。
全く、このゲームには馬鹿しか参加していないのか?
どいつもこいつも群れる事しか能が無いではないか。

こいつらも反主催者を掲げ、群れているクチか?
数さえ揃えばゲームから脱出出来るとでも思っているだろうか。
考えが浅すぎる連中だ。
弱者がいくら群れようと弱者は弱者なんだよ。
それを今から教えてやる。


「貴くん…、無事にことみさんやタマねえさんって人と会えると良いね…」
「ああ…そうだな…とにかく俺達は俺達で今出来る事をしよう」
「そうですね…、私達も貴明さんに負けないように頑張りましょう!」
雄二が皆を促し、歩き出したその時。
彼らの近くに何か缶のようなものが飛んできた。
周囲はもう暗くなり始めており、何が飛んできているかよく見えない。

「え?」
雄二達が飛んできた物体の正体を確かめようとしたその瞬間、
辺りは強烈な閃光に包まれ、巨大な音が響き渡った。

それは殺戮者―――巳間良祐の放ったスタングレネードによるものだった。




河野貴明
 【場所:I−6】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

向坂雄二
 【場所:I−7】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
 【状態:次の書き手任せ】

新城沙織
 【場所:I−7】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
 【状態:次の書き手任せ】

マルチ
 【場所:I−7】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品:モップ、ほか支給品一式】
 【状態:次の書き手任せ】

月島瑠璃子
 【場所:I−7】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数7/7)、ほか支給品一式】
 【状態:次の書き手任せ】

巳間良祐
 【場所:I−7】
 【時間:午後7時30分】
 【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・支給品一式・草壁優季の支給品】
 【所持品2:スタングレネード(1/3)・ドラグノフ(残弾10/10)・H&K SMG U(6/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5】
 【状態:近くの民家の影からスタングレネ−ドを投嚇】
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