瑠璃子が沙織を慰めている姿を見ながら雄二は今の自身を呪った。 (――女にやつあたるなんて最低だな俺って………) 一応フェミニストを自負している普段の自分では考えられないことだ。 普段の自分ならば真っ先に沙織に駆け寄って、いつものノリで沙織を慰めて、ついでに女性から見た自身の男としてのレベルを上げることくらいはしていたはずだ。 (――少しずつみんな心や頭のどこかがおかしくなっていっちまうのかな?) この島で一番重要なのは生き残ると同時に精神を強く維持することなのかもしれないと雄二は思った。 そう。人は弱いものだ。体も心も――― 「――雄二。それと、みんな……ちょっといいかな?」 「貴明?」 今度は貴明が口を開いた。 「どうしたんですか貴明さん?」 先程とは貴明の様子が少し変であることに気がついたマルチが貴明に聞いた。 「―――俺。みんなと一緒に診療所には行けない………このみたちを探さないと…………」 その言葉を聞いた瞬間、雄二が貴明に詰め寄った。 「な…なんでだよ貴明!?」 まさかおまえまで変になっちまったのか、と雄二が言おうとした瞬間、貴明が話を続けた。 「――草壁優季の……俺の知り合いの名前もあったんだ…………今の放送で………… 俺も今やっと気がついたんだけど……」 ――草壁優季。その名が放送された瞬間、貴明の脳裏にある記憶の断片が蘇ってきた。 それはまだ貴明が幼かった頃の記憶。 忘れてしまっていた。大事な記憶。 ある少年と少女の…… 幼き日に誓った約束の記憶―――― 【場所:I−7】 【時間:午後6時15分】 河野貴明 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】 【状態:健康】 向坂雄二 【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】 【状態:健康。困惑】 新城沙織 【所持品:フライパン、ほか支給品一式】 【状態:健康。やや精神衰弱】 マルチ 【所持品:モップ、ほか支給品一式】 【状態:健康。困惑】 月島瑠璃子 【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数7/7)、ほか支給品一式】 【状態:健康。診療所へ行く。隙をついてマーダー化するつもり】 - BACK