「ゆかり………」 貴明たちと別れた後、数件目の民家の中で食料(主に缶詰やレトルト類)を調達中、宗一は定時放送を聞いた。 次々と報告されていった死者の名前。その中には自分のクラスメイトであり友人の伏見ゆかりの名前があった。 「…………」 その名を聞いた瞬間、宗一はただ呆然とその場でつっ立っていることしかできなかった。 醍醐と篁という自身が最も警戒していた敵たちが死んでいたことにも驚いたが、身近な者の死という衝撃の事実には勝らなかった。 宗一の脳内で学校の帰りに皐月と3人でハンバーガーショップに寄りハンバーガーを食べたことや、アイスを食べにいったあのころのゆかりとの思い出がフラッシュバックしては消えた。 (――いい奴から先に死んじまうってことか………) あのゆかりのことだ。ゲームに乗ったとは思えない。 おそらく運悪く参加者(マーダー)と遭遇してしまったのだろう。 (俺がスタート直後から行動していれば――いや。気持ちはわかるが感情的になるな俺。感情を暴走させてしまうと次は俺が死ぬ……!) 暴走しかけた自分の心を抑えつける。 しかし、それでも「なにが世界NO.1エージェントだ。なにがNASTYBOYだ」などという自責の念がしばらくの間宗一の中に満ち溢れた。 (ゆかりは守れなかった…………だが、皐月たちはまだ生きている。 ならば、必ず守ってみせる。それがゆかりを助けられなかった俺ができるゆかりに対する償いだ………!) 新たな決意を胸に宗一は家を出た。 (食料はだいぶ揃ったし、まずは診療所に戻るとするか) それに早く戻らないと佳乃が今度は何を言いだすかわかったもんじゃない、と思いながら宗一は診療所を目指し走りだした。 その時だった。宗一が目の前の民家の物陰から殺気を感じたのは。 「!!」 すぐさま宗一も近くの物陰に飛び込んで身を隠した。 次の瞬間には、ぱらららら…という音とともに数秒前まで宗一がいた場所に無数の弾丸が飛んできた。 (マシンガンか!) すぐさま制服のズボンの腰にねじ込んでおいたファイブセブンを抜き取り、相手に構える。 「やめろ、俺は人を殺すつもりはない!」 まずは威嚇しつつ相手に話し掛けてみる。 話し合いが通じる相手ならば無駄に争いたくはないからだ。 「……………」 相手――太田香奈子はただ無言で宗一を見ていた。 しかし、次の瞬間にはまたしても彼女のサブマシンガンが火を吹いた。 「くっ!」 再び身を隠す。 ほぼ同時に数発の弾丸が宗一の頭をかすめた。 (――やるしかないか?) 【場所:I−06、07境界付近】 【時間:午後6時15分】 那須宗一 【所持品:FN Five-SeveN(残弾数20/20)包丁、ロープ(少し太め)、ツールセット、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式、食料(数人分の量。缶詰・レトルト中心)】 【状態:健康。目標・皐月たちとの合流。主催者を倒す】 太田香奈子 【所持品:H&K SMG U(11/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5、フライパン、懐中電灯、ロウソク(×4)、イボつき軍手、他支給品一式】 【状態:健康。瑞穂の仇を討つ。瑠璃子を見つけて殺す。現在マーダー化中】 - BACK