ずっと、幸せなばしょ…へ




 ムティカパを虐殺して気を晴らした神奈は背中の翼で一息に島の上空まで舞い上がった。

(これから、どうするの?)
 神奈の意識の中で同居している観鈴が訊ねた。
「決まっておろう。余を千年もの間空に閉じ込めた愚か者どもに神罰を下すのだ。おのれ、高野山なのだ」
 神奈は東の空を睨みながら力強く羽ばたいた。
(わっ、ちょっと待って)
「なんだ?」
(行くなら、往人さんとお母さんも一緒がいいな……連れてってあげられないかな……)
「何ゆえ余がそのような面倒をせねばならぬのだ?」
(だって、往人さん私の友達。お母さんは私のお母さん)
「余の知ったことではないわ!」
(がお……)

 しかし、既に怒りの収まっていた神奈は忘れかけていた一族の使命を思い出した。
「ふむ……余も翼人の末裔として幸せな記憶を星に還さねばならん……」
(悲しい記憶だけだと星は生き物を創ったことを後悔して死んじゃうんだよね)
 観鈴は神奈と共有している記憶から引っ張り出した知識で語った。
「そうだ。余が、そして二代目の翼人が経験した悲しい別れの記憶を癒す母との思い出が必要なのだ……」
(いわゆるセカイ系。にはは、観鈴ちん賢い)
「余計な茶々を入れるでない! ……ともかくお前の母を助けねばならぬこと相分かった」
 そう言って晴子の気配に向けて滑空する。

(往人さんは?)
「不要だ」
(が、がお……)




 神奈 
 【時間:午後4時半ごろ】
 【場所:E-03の上空】
 【持ち物:ライフル銃】
 【状況:晴子の所に向かって降下中】
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